女は怖い。 色んな意味で。
お昼。
僕は屋上で彼女、玉木真美に呼び出されていた。
「で、手伝うって何を?」
「そうだね、むしゃむしゃ」
「そうですよ。お兄ちゃんに何させるつもりですか!」
他の二人もセットで来ていた。
「なんであなたたちもいるのよ………」
「むしゃむしゃ!むしゃ!」
「お兄ちゃんのいるとこならどこでもいます!」
うん。とにかく三枝さんは食べるのやめようか?
「まあ、いいわ。とにかく内容は簡単よ。あなた私にアプローチしなさい」
「アプローチ?」
「ええ、簡単に言うとアピールとも言うわね」
えー
「めんどいって顔ね?」
「だって、アプローチなんてしたことないし………」
実質恋愛未経験みたいなものだしな。
「そこをなんとかするのがあなたよ」
「玉木さんは佐藤くんを舐めすぎだよ!」
おお、珍しく三枝さんが僕を庇って………
「彼はヘタレだし童貞だよ?できるわけないじゃん」
うん………知ってたよ。彼女はこう言う人だって。
「そうですよ!童貞のお兄ちゃんにはできません!」
あのあまり童貞連呼はやめてくれるかな?
「無理でもやってくれるわよね?」
彼女はニヤリと笑いかけてくる。
「………善処します」
「よろしい」
これが精一杯だった。
そうして彼女にアプローチという名のナンパが始まった。
「へーいそこの彼女、暇?デート行かない?」
「論外、死ね」
「お姉さん一人?遊びに行かない?」
「キモい」
僕の知識は尽く破れていた。
「なんですべてナンパなのよ………」
彼女は頭に手を置いて呆れていた。
「えー僕の知識、総動員したんだけどな………」
「私はアピールしろって言ったのであってナンパしろとは言ってないわよ」
と、言われてもアピールとナンパの違いがわからない。
やっぱり童貞にはきついのか?
「お兄ちゃんお疲れ様です」
一ノ瀬さんが近づいてきてタオルを渡してくれる。
「………ありがとう」
そう言って頭を撫でる。
こうしてみると余計妹だな。やっぱり。
いつ言おうか…………
「お兄ちゃん?何か隠し事ですか?」
「え?」
「隠し事は駄目ですよ?兄妹なんですから」
兄妹重くない?
世間の兄妹はそんなものなのか?
「全部、知ってたいです」
え?
「私はお兄ちゃんの全てで、私はお兄ちゃんが全てですからね」
純粋な目だった。
冗談でも、誇張でもない。
本気で言っている。
「…………」
一瞬、言葉が出なかった。
「なら私も全てだよね?」
「え、なんで?」
三枝さんとはなんの関係もないのでは?
「食事仲間に隠し事はないよね?」
「食事の意味が重くない?」
「食だからね」
君の中ではね?
「とにかくどうにかそのナンパはやめて」
と言われてもな。
「もっと積極的で男らしさを見せるのよ」
男らしく積極的………
考えるんだ葵。
知識を再度総動員するんだ。
そして導き出されたのは………
ダン!
壁ドンだった。
「俺のものになれよ?」
「ふん!」
僕は急所を蹴られる。
「ぐは!?」
この女なんてことを………
僕は悶絶する。
「ちょっとお兄ちゃんに何するんですか!?」
「ごめんなさい。あまりにもムカついたから」
「今のは佐藤くんが悪いね。うん」
女は怖い。
色んな意味で。
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