そうして始まる。三度目の面倒が。
「はい、お兄ちゃん」
「あーん」
彼女が差し出したものを食べる。
「ねえ、なんか最近距離近づいてない?」
「兄妹みたいなものだから」
「そういう問題?」
三枝さんは訝しんでいた。
確かにあたりだ。
僕と一ノ瀬さんは付き合っている。
だがややこしくなるため三枝さんには伝えていない。
「そうですよ。兄妹みたいなものですから」
僕の膝の上に乗りながら答える。
「まあ、確かに兄妹にしか見えないけど…」
僕は一ノ瀬さんと付き合ってるはず。
だけど、彼女の接し方は兄妹のそれのまんまだ。
なぜなのか。
「あなたこそ、お兄ちゃんと距離が近くないですか」
「え、そうかな?」
そういえば、僕と一ノ瀬さんが近づくと彼女もそれに比例して近づいてくる。
普通恋人以外が近づいたら警戒なり不快になったりするんだろうけど…
なんか嫌じゃないんだよなー
でも、だからって彼女に近づかれて嬉しいわけでもドキドキするわけでもない。
本当に不思議な生き物だ。
「まあ、まあ。彼女は一種の大食い……」
「大食い何なのかな?」
彼女は目を細めて聞いてくる。
おっと、地雷だったな……
「いや、大食い…しない小動物だよ?」
「……なんか無理ない?」
うん……確かに……
彼女と話しているときは妙に平常心なんだよな…
「お兄ちゃん、私はどうですか?」
だが、一ノ瀬さんは心が揺れる。
乱される。
これが恋なのだろう……
「えっと、守りたくなる動物かな?」
「守りたくなる動物ですか……こういうのですか?」
彼女は僕の胸に抱き着いてくる。
その顔は純真で無垢で汚れを知らない。
……そう見える。
「あ、ああ」
「ちょっと、近すぎ!」
一ノ瀬さんを引き離しに三枝さんがかかる。
「いーやーでーすー!」
「うっ!?無駄な抵抗しない!」
そうして日常は続くものだ……なんて思わない。
そう、変化は急に訪れるものだ。
バタン!
屋上のドアが急に開く。
「待って玉木さん!」
そこからは一組の女の子たちが入ってくる。
(なんか既視感があるな…)
「なんで?」
「そ、それは……」
「彼が男だから?そして私が女だから?」
「……ごめん」
答えはただ一言だけ。
だが、答えにはそれだけで問題なかった。
「そう……もういいよ……どっか行って!」
「玉木さん……」
彼女はもどかしそうにしながら静かに屋上から出ていく。
屋上は風の音が響いていた。
静かだな……
「ちょっと、どうするの。まただよ?」
小声で三枝さんが聞いてくる。
そんなの僕に言われても……
このパターンは三度目だが、いまだに正解は分からないな。
「お兄ちゃん逃げましょう」
「え?」
「私たちの手には負えません。逃げるが勝ちです」
なるほど……その手があったか。
僕たちはこそこそ出ていこうとする。
「まって」
しかし、呼び止められる。
「な、なにか?」
「こっちに来て」
「え?僕?」
「そう」
恐る恐る僕は彼女に近づく。
すると急にネクタイを引っ張られて引きよけられる。。
「!?」
「「ああーーーー!!」」
これは……唇に柔らかな感触……キスだ……
僕は違う意味で驚いてしりもちをつく。
(キスってこんな何も感じないものなのか?)
おかしくないか?
いや……少し前からか?
そんな僕を見下ろして彼女は言う。
「手伝って」
「え?」
僕の三度目の現場目撃は初体験だった。色々と。
そうして始まる。三度目の面倒が。
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