君はその権利がある。
「三枝さん、何言ってるの?正気?」
「仕方ないじゃん!そうなったんだから」
小声で言い訳をしてくる。
「あらあら、あなたはお盛んなのねー」
不本意な勘違いだ。
「いえ、僕たちは……」
「でも、それはいけないわー」
あれ、人の話聞いてない?
というか、顔は笑っているのに目が笑っていない。
「いや、だから…」
「あなたに瑠璃ちゃんは任せられないわー」
えー
この人話聞いてくれないんだけど…
「瑠璃ちゃん」
「は、はい!」
一ノ瀬さんは怯えていた。
「よくないわよねー?」
「え、で、でも」
「うん?なにかしらー?」
彼女の笑みは強くなる。
だが、その分目からもさらに笑みが消える。
「は、はい!」
一ノ瀬さんは怯えがビークに達してガタガタ震えていた。
「あなたも何とかしましょうねー?」
え、ここから僕にも矛先向くの!?
「だから、僕たちはお付き合いはしてなくてですね…」
「あらあら、認知しないというわけねー?」
なんか物騒な言い方になってるし。
「あのですね…」
「いいわー」
「へ?」
やっとわかってもらえたか?
「そこまで言うならちゃんと瑠璃ちゃんを幸せにしてみなさいー」
なんでそうなる……
「いいわねー。瑠璃ちゃん?」
「うん!お兄ちゃんなら大丈夫だもん!」
えー。そんな勝手な…
そうして僕たちの照明の日々は始まった。
それは廊下で。
「お兄ちゃん!」
彼女は僕の体に抱き着く。
あの日から彼女は僕に気軽に触れる。
「ちょっと!」
三枝さんが引き離す。
「邪魔しないでください!」
彼女は必死に僕に甘える。
それが何かとても本当の妹のようでとても愛おしくも思える。
「嫌ですー!」
三枝さんは気に入らないようだが…
「そもそも、あなたは私のお兄ちゃんのなんなんですか?」
「そ、それは……食事仲間」
結局それなんだね?
「それなら私がお兄ちゃんと妹のイチャイチャを邪魔する必要はないですよね!」
そう言って僕に再度くっ付いてくる。
「はあ」
いったいどうすればいいのだろうか……
すでに学校では僕は二股の最低野郎だ。
「あれがロリコンキング…」
「あれが、鬼畜の佐藤ね」
何て言う噂の速さ。
だが、それも納得だあの日から彼女はずっと僕についてきている。
しかも、過剰なスキンシップで。
「ねえ、一ノ瀬さん」
「はい!なんですか?」
「なんでそこまで僕のことが好きなの?」
「え、理由なんていりますか?」
その純粋な目は少し怖かった。
「そうか……」
好きってそういうものなのだろう……
「あらあら、仲良くしてますねー?」
「はあ」
僕はこの人に少し怒っていた。
「ねえ、葉月さん」
「はい?」
「君は一体何の権利があってこんなことしてるの?」
「権利?」
「君は瑠璃ちゃんのお姉さんだ。だから妹が悪い男に掴まらないようにって言うのは分かる。でも……」
僕は息を整え告げる。
「好きな人をとった女性のやることじゃない」
「!?……」
彼女は分かっていた。
ただ誰も言えなかった。
いや、みんな優しすぎた。
彼女に甘かった。
「もし不安なら君が三木君と別れて瑠璃ちゃんと付き合わせればいい」
「そ、それはー……」
「無理だよね?」
彼女は言葉を失う。
そこに詰める。
「君は僕の知っている人に似ている」
そう三森さんだ。
「君は好きな人をとった。その償いからこういうことをしている。つまり罪滅ぼしだ」
「そ、そんなことは……」
間延びしなくなり余裕がないのがうかがえる。
「違わないよ。結局、自己満足だ。そんな君に瑠璃ちゃんに何も言う権利はないよ」
「そんな暴論は知りません!」
彼女は叫ぶ。
僕はそれにどこまでも冷たく告げる。
「まだ気づかないの?それが罪を重ねているだけだって」
彼女の顔はその言葉で蒼白になる。
「お兄ちゃん……」
「瑠璃ちゃん君は自由でいいんだ」
僕はそう言って彼女の頭をなでる。
「君はその権利がある」
「……はい」
その返事には少し嗚咽が混じっていた。
「ほんと、佐藤君は佐藤君だね?」
なんだそれは?
三枝さんが呆れていた。
「で、君はどうするの?まだ余計なことを言うつもり?」
「……いいえ」
彼女は去っていく。
その背中には十字架が見えた。
きっと彼女は自覚した。
私が彼女を傷つけていたと。
「ふふ、お兄ちゃん」
僕の手を愛おしそうに撫でる彼女。
それが意味するのは……
恋なのだろうか?
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