2話
朝食を食べ終え食堂を出て自室に戻るが、途中の窓の汚れやカーテンの修復したであろう跡などが気になる。以前は仕方の無いことだと割り切っていたが、前世を思い出した今、自分にできることを試してみたい衝動が抑えられない。
「確かこの後の予定は勉強よね…うーん……今日はお休みして魔法を試してみましょう」
元々家庭教師はいたが、金銭的余裕が無くなり始めた時、この歳なら文字なども覚えているため自習で大丈夫だとルーチェ自身の主張もあったことから、家庭教師はおらず自習や周囲の人間に聞き勉強していた。
自室へ戻り侍女のアンナに今日の予定の変更を伝える。
「お呼びでしょうか?」
「ええ。今日この後は勉強の予定だったけれど、少し庭に出てくるわ。」
そう告げると、アンナは一瞬だけ怪訝そうな顔をしたがすぐに頷いた。
「かしこまりました。ですがお嬢様、お一人では───」
「すぐ戻るわ」
にこりと微笑みそう伝えるとそれ以上は何も言われない。
◇◇◇
屋敷の裏手。
庭は客人に見えるところは綺麗だが、見えないところは手入れが届いてない。かつては手入れが届いていたであろう裏庭は今では雑草が目立ち、石畳にはひびが入っている。
予算不足。人手不足。見て見ぬふりをしてきた現実がここにはそのまま残っていた。
「…ここなら、誰にも見られないよね。」
小さく呟き、ゆっくりと息を吸う。
(まずは、確認ね)
前世の記憶を思い出してからずっと胸の奥がざわついていた。
魔法を知識としてではなく、感覚として扱える自分。おそらく、前世の自分に魔法の使い方について説明しようとしても無理だろう。
この世界は皆、貴族や平民関係なく、6歳になると神殿で魔法測定を受ける。
あの時の魔力による光の大きさ、基本属性や特殊属性は文字を今でも鮮明に覚えている。
ルーチェが6歳時の測定
魔力:B
表示された文字:生活魔法・強化
複数の基本属性保持者は複合魔法保持者とされ、測定時は最も強力な複合魔法、特殊属性は生まれ持ったもののみが表示される仕組みなのだと神官様がお話されていた。
それから自分のステータスを確認すると、光と闇以外の属性を持っていることを知った。
魔法は属性が多い場合その分魔力も多くなければ使いこなすのが難しいらしく、4属性持ちであったが成長途中ということもありあまり魔力が高くなく、それほどの属性を使いこなすには魔力がなくては…と過度な期待や注目は無かった。
(でも…)
─────今、私はどこまでできるの?
そっと右手を持ち上げる。
意識を身体の内側へ……すると。
「……っ!」
身体の奥からぞわっと感覚が走った。
怖さではない。むしろ思わず笑ってしまいそうな─────確信。
「……ああ、そういう事」
魔法で大切なのはイメージ・知識・魔力。
前世の知識と今の感覚が、カチッとはまる。
私は地面を見つめ、ほんの少し魔力を動かし小さく唱える。
「繋がれ。」
ひび割れていた石畳の隙間に小さな砂が集まり、まるで最初からそうであったかのようにひびが塞がっていく。
「…派手ではない。けど」
確実に……出来てる。
次は、風ね。
庭に落ちている小枝や葉に意識を向け、集中する。落ち葉等がふわっと少し浮き、静かに端へ寄せられた。
(制御が、楽……?)
いや、正確には分かる。どうしたら崩れないか。どこで止めればいいのか。
それから私は火や水、風────
思いつくまま、いくつかの魔法を試した。
「……生活魔法、便利すぎじゃない?」
小さく笑ってしまう。
前世で言うところの、修理や浄水・空調が…出来る。
前世の知識があるだけでここまで扱いやすくなるなんて。
庭を見渡す。
汚れの目立つ剥がれた壁、整えられてない木々、膝ほどまで伸びた雑草。庭にも、やるべき事は沢山ある。
「……よし!」
私はくるりと踵を返した。
「まずは屋敷の掃除からね。」
魔法の設定についてー
基本属性は6種類(火・水・土・風・光・闇)
複合魔法は例えば水と風の属性だったら氷等……
生活魔法は風・水・火・土の4属性
魔力のレベル(S.A.B.C.D)
属性が多い場合調整が難しく、魔力が多くなくては小さな魔法しか使えない。
属性が少なく魔力が大きいとその分高レベルの魔法を使える。




