1話
誤字脱字やおかしな所があるかもしれませんが優しい気持ちで見ていただけると嬉しいです!
「…お嬢様、そろそろお目覚めの時間ですよ」
上質だとわかる重いカーテンがゆっくりと開かれ、差し込んだ陽の光が眩く、顔を顰めてしまう。
「……っ。」
私は思わず閉じた目をもう一度開けた。
(……ん?)
寝心地のいい大きなベッド。少し汚れはあるが、元は綺麗な白色だった事が見てわかる天井。
見慣れてるはずなのに。
「……ここは……」
困惑から、声が少し震えた。
その瞬間。ズキン、と。
頭痛がしたのと同時に、堰を切ったように沢山の記憶が流れ込んできた。
────点滅してる信号や車の音。
────スマートフォンを片手に行き交う人達。
────ビルや街灯などで照らされた夜景。
(………前世?)
意外にもにもすぐに理解出来た。
──転生しているのだと。
「………ふぅ」
小さく息を吐き、辺りを見渡す。
「ルーチェお嬢様、如何なさいましたか?体調が優れませんか?」
侍女のアンナが心配そうにこちらを見ている。
私は反射的に微笑んだ。
「いいえ、大丈夫。屋敷の仕事に戻っていいわよ。」
「分かりました。こちらに着替えや顔を拭くものをご用意しましたので、何かございましたらお呼びください。」
「ええ。ありがとう。」
自然に出る声。柔らかい表情。長年に渡り身につけた、淑女の仮面。
──でも。
(思い出しちゃったんだよね……前世の記憶を…)
この世界には魔法があり、この国にはいないようだが人間だけでなく、他の種族も存在している。
「……魔法…ね。」
視線を自分の手に落とす。身体の奥からゾクリとした感覚が走る。
前世ではなかったがここでは存在する魔法に心を踊らせ使ってみたくなるが、今は我慢し朝の支度をしようと体を起こす。
前世とは違い、歯ブラシは動物の毛が使われていたり顔は洗面器で軽く洗い、ふわふわとは程遠い布で顔を拭く。
簡易的なワンピースに着替え、一人で朝食を摂るために食堂へ向かう。
この屋敷には使用人が最低限しかいない。だからこそ一人で出来ることは一人でしている。
なぜこうなっているのか────
(……貧乏)
正直、それが現実。
父は王宮で働く文官だったが領地へ向かう途中、事故に遭い意識不明の重体だった。最近では、回復してきて徐々に体が動かせるようになってきてるがまだほぼ寝たきりの生活を送っている。
母は昔、美人で社交界でも名の通った人であった。
しかし、現在は社交界から遠ざかり、この領地と家を守るのに精一杯。
領地や家の管理等を一人で行うには無理があり、手の届かない所が出始め、貧しくなってしまったのだ。
食堂へ着くと一人で席に座る。父は自室で、母は忙しさで早めに食堂で食べるか、執務室で仕事の合間に食べている。
侍女と料理人で準備してくれた朝食を食べる。
硬いパンに薄めの味付けの小さな野菜と野菜よりも小さなお肉の暖かいスープ、ドレッシングはかかってないかなり薄く削られたチーズの欠片の野菜のサラダ。
以前は何とも思っていなかったが、前世を思い出してから食べると質素に感じる。
領地を領民のために少しでも以前と変わらない状態にするため、家のことは我慢してお金を領地の方へ回しているためだ。
「…今の私ならできることがあるかも……!」
傍で待機している侍女には聞こえない小さな声でルーチェはひとつ決意した。




