表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は、羊水に揺られて夢を見る。外は、激しい憎しみの世界なのに。  作者: 蘇 陶華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
88/91

僕の選択が正しかったと思いたい。

桜咲里が、廃墟に戻ってきた。


1人で。


真凜の顔を見ると、


「ごめん」


一言だけ言った。


「わかっている・・」


そう答える真凜の目は、深い悲しみを宿していた。


こんな事がなければ、


高級官僚の令嬢として、


生活する事ができたんだろう。


結婚するまでの、花嫁修行として、


研究室で、勤めて。


恋人は、優秀な研究員で、


悲しみで、青ざめる真凜の首筋に浮き上がった、


細やかな数字が、無性に悲しかった。


無意味になったのか。


肝心な所に、


吐夢に付けられた傷が、


痛々しく残っている。


何もかも失った真凜に、そっと、桜咲里が、渡した小さな包みがあった。


「これを・・・」


黙って、包みを開いた真凜の顔が、


くしゃくしゃになった。


涙と嗚咽が、


廃墟に、響いていった。


何を言ったら、いいのか。


母さんが、そっと、真凜の肩を抱いた。


そして・・・。


言った。


「方法はある」


「方法って?」


みんな、驚いて、華さんの顔を見た。


どうして、


今まで、黙っていたのかって。


「吐夢を止めて、この感染を止める方法」


「いや・・・待てよ」


晴が止めた。


ずっと、晴は、その答えに気づいていようだった。


「ダメだ」


首を振る。


「もう、限られているから、役に立ちたい」


「いやいや・・・無理だって。もう、戻って来れなくなる」


「ちょっと・・それって」


音羽が、口を挟んだ。


「九尾狐で、始まった事なら、終わりも」


「母さん?」


母さんが、何をしようとしているのか、わかった。


「私は、もう、十分だから、止めましょう。この感染も」


「いやいや・・・そういう事でなくて、方法は、まだ、他に」


「今世で、終わり。死んでしまうの。戻って来れないのよ」


音羽は、ムキになる。


「やっと・・・。颯太に逢えたのに」


吐夢の肉親が、そうだった様に、母さんは、自分の身を犠牲にしようとしている。


「吐夢華、私しか、いない。吐夢に無理強いはできない」


「・・・だからって」


僕は、唾を飲み込んだ。


「僕が行く」


まだ、僕だったら、戻って来れる。


生き抜くチャンスは、まだまだ、ある。


ここで、母さんを犠牲にしたくない。


「颯太は・・・。純粋な九尾狐でないから、どうなるか、わからないぞ」


案の定、晴が止めた。


「できるのは、吐夢華、一の葉だけだ・・・」


みんなが、黙った。


「大丈夫。解決方法は、あるから」


空気を読んで、真凜が、声を上げた。


僕や、母さんの事を思って。


「・・・僕に賭けて・・・」


「そう・・・ね。颯太。一の葉は、弱っているから、颯太にかけるしかない。半分は、九尾狐なんだから・・・」


僕を見つめる音羽の瞳が、悲痛だった。そう言いながら、自分を納得させているのが、わかる。


「大丈夫・・・」


「自分を賭けるのか?上手くいかないかもしれないんだぞ」


何度も、確認する晴。


こんな展開、知っている筈でしょ。


この先、どうなるのか。


もしかしたら、もっと、僕は、化け物になるかもしれない。


それでも、母さんを失うよりは、マシ。


やっと、逢えたんだから。


母さんの目から、逃れるように、僕は、廃墟の窓から、飛び降りていった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ