手土産は、絶望なのか
桜咲里が、帰って来た。
何度も、打ち合わせした廃墟に。
残念な事に、1人だった。
「ごめん・・・」
やっと、意識を取り戻した真凜に小さく呟いた。
「ありがとう」
そう言った真凜の両目から、大粒の涙がこぼれた。
「役に立たなくて、ごめんなさい」
自分の体に、そんな秘密があったなんて、彼女自身知らなかった。
勝浦と真凜の彼氏との間に、どんな密約があったのか、
今となっては、知るよしもなかった。
今となっては。
桜咲里には、疑問があった。
勝浦との出逢いだった。
「意図的だったんでしょう?」
最後の会話。
「わかるか・・」
「そんな気がして」
九尾狐。
巡る動きが確かにあった。
どうして、香港だったのか。
九龍街だったのか。
ずっと、考えていた。
自分が、九尾狐に、恨みを抱いていたのを知って、
近づいてきた。
そう、考えていた。
九回生き返る。
不死とも言える存在。
それを使っての、実験。
「九尾狐を、倒したいならこれだな」
勝浦に勧められた銃弾。
「一発で、仕留められる」
「本当に?」
あの時は、本気で、颯太を殺したいと思っていた。
「九尾狐に詳しい?」
「勿論。歴史家でもあり研究員でもあったから」
「研究員?」
勝浦は、はっとした顔をして、
「まぁ・・・中国、韓国と九尾狐の伝説があってね。勿論、安倍晴明の葛の葉も、そうじゃないかって、話もあるくらいだしね」
「歴史家ね」
その時は、何の、疑問も、持たなかった。
勝浦は、何か、秘密を隠している。
ずっと、そう思っていた。
「この日が、来るのを恐れていた・・・」
吹き出す血液が、止まらない。
感染した。
勝浦が、そう言った。
「いつか、そうなると思っていた」
ワクチンを打ったのでは、なかったのか。
勝浦は、深いため息をついた。
「これを渡してほしい」
掌に乗っているのは、小さなネームプレート。
「謝ってほしい」
真凜にしてしまった事。
「それは、自分で言うべき」
「いや・・・許してくれないだろうな」
勝浦から渡された小さな塊。
「方法は、あるから、すべての鍵は、九尾狐」
そう、呟くと、大きく咳き込み、勝浦は、脱力した。
血の塊になる訳でなく、発光する訳でなく、
何らかの免疫があったのか、
他者とは、異なる最後だった。
「やっぱり・・・そうなのか」
桜咲里から、話を聞いた晴は、呟いた。
「答えは・・・そこなんだろう」
晴の言葉が、重苦しかった。




