自分の命が尽きる時、初めて意味を知る。
砂漠の中。
晴葉、僕の叡智を超えている。
理解し難い存在。
そんな奴が、どうして、この日本にいるのか、わからなかった。
忌み嫌われる存在だったと。
以前、言っていた。
旧家の蔵の奥に、棲みつき、
その主に取り憑いた。
とんだ事に、巻き込まれた。
そう思っているだろうな。
こんな閉鎖された世界で、
自分の事だけ、
見つめて生きていられた。
そんな晴の目が気になった。
母さんを見る目。
嫌らしい目でもなく、
遠く慕うような目。
そもそも、晴の行動には、違和感があった。
なぜ、この国にいたのか。
なぜ、母さんは、大陸から、この国にいたのか。
「あの・・・」
砂漠の中で、僕らは、真凜が回復するのを待っていた。
そして、桜咲里が、どうしているのか、探していた。
そして、そして・・・。
勝浦が、勝負をかけている、今は、仙台に移った政権の動きを、
じっと、見ていた。
真凜に全てを託した、
真凜の恋人の行方を。
勝浦の音信を。
そんな中で、晴葉、言葉を探していた。
「あの・・・」
声を掛ければいいじゃないか。
母さんの事を大事に思っている。
痛いほど、わかっていた。
「ここにいれば・・・時間を気にしなくていい。ずっと、ここにいないか?」
皆を前にしての晴の言葉に、僕と音羽は、顔を見合わせた。
「颯太・・」
音羽が、小さな声で、僕にささやいた。
「理解して」
「いや・・・どういう事?」
「う・・ん。私だから、わかるんだけど」
音羽は、自分の体を、母さんに貸していた。
だから、わかる事があると言う。
「九尾の狐が、九回生まれ変わるのは、知っている?」
「もちろん・・」
僕も、そうだ。
ただ、半分、人間の血が入っているので、若干、時間の流れが違う。
「一の葉。つまり、あなたのお母さんは、もう、ないの」
「・・・ない?」
「最後の時間を使って、あなたを産んだの」
「ん?」
「九尾の狐は、生涯、1人華、2人しか残せない。それが、あなただったの。私には、わかる」
母さんは、僕を産んで、消えるだけだった。じっと、消えるのを待っていた・・・なのに。
こんな事が起きた。
最後の力を振り絞って、ここに現れたと、音羽葉、告げた。
眩しい存在だったと、後で、晴は、言っていた。
憧れるだけだったと。
最初、僕に会った時、
一の葉の子供だと、すぐ、わかったと。
そして、その子である、僕に嫉妬したと。
「殺してやればよかったよ」
晴の言葉が、突き刺さった。
母さんが、露と消えた時に初めて、晴の涙を見た。
「颯太。一の葉は、もう、時間がないの。大切な時間を作る為、晴がこの場を用意したの」
砂漠に、陽が落ちていく。
この後、僕らは、局面を迎える。




