それは、絶望なのか。希望なのか。
時間がなかった。
誰も、言葉を発しなかった。
「どうして、真凜を助けようと?」
僕が、口火を切った。
母さんの事が知りたかった。
妖女として、歴史に名を残しながら、どうして、
ここに現れたのか、知りたかった。
「捨てたわけではない」
まず、最初、そう言ってくれた。
「出て行ってほしいと頼まれた」
哀しそうだった。
「誰に?」
母さんは、追われていた。
いつ、捕まるか、わからなかった。
僕の父さんは、きっと、僕を守る為だったんだろう。
遠ざける為、母さんを追い出した。
僕が、殺したんじゃなかった。
「いや・・それはね・・」
母さんは、言いにくそうだった。
「私を守る為、追っ手を、払ったのは、幼いあなただったのよ」
一つ、一つ、言葉を選びながら、母さんは、添えた。
「父さんは、恐れたのね。私は、その後、結局、捕まり殺生石に閉じ込められたの」
「どうして・・・ここに残ったの」
僕は、甘えていた。
母さんに、僕を守りたいから、戻ってきたと言わせたかったんだ。
甘い。
この辺が、吐夢と違う。
人と九尾狐の子だから。
「吐夢は、私の子じゃないわ」
見透かした様に、母さんは言った。
「数少ない仲間に託された子なの。愛さえない子。あんな残酷な事をする子じゃないのに」
「・・・そうだったんだ」
安心したような複雑な気持ちだった。
「颯太。そろそろ・・・」
音羽が、気にしていた。
「どうしたの?」
母さんは、すごく、疲労して見えた。
「あまり、力が戻っていない」
それが、音羽に憑依した理由だった。
「颯太が、気になって、ずっと、この国にいたのね」
「え・・・」
誰かに、気にされるって、こんなに、心が温かくなる事なんだ。
九尾狐と言われて、葛藤があった。
僕の親。
特に母さんに血して、複雑な気持ちだった。
どうして、僕を産んだのか。
誰しもが、苦境に立った時、そう、思う事がある。
僕も、いつも、そう思っていた。
ここにいる。僕。
どうして、ここにいるのか。
いつも、自分に問いかけていた。
「颯太。私は一緒にいたから、わかる。颯太は、1人じゃなかった」
じっと、音羽が、僕を見つめていた。
言葉にならなくても、
音羽の気持ちが伝わってくる。
「時間がないぞ」
そう言って、現れたのは、晴だった。
「真凜は・・・?」
自分の居場所に、置いてきたのだろう。
「命は、助かったが・・・」
晴は、首を振った。
「酷い傷だ・・・女の子なのに」
吐夢は、残酷。
「方法は、ないのか」
勝浦にどう、伝えるのか。
皆、言葉に詰まっていた。




