血は争わないって言うけど、僕の場合。
何て事したんだ!
僕の中で、血が逆流した。
母さんが、小さな悲鳴を上げた。
珍しく、晴が固まった。
時間が止まった。
音羽すら、身動きしなかった。
僕は・・・。
体の中で、何かが、爆発した。
こんな事。
音羽が消えた時にも、感じなかった。
あの時は、
哀しすぎて。
空を掴んだけど。
僕は、怒りで、爆発した。
吐夢。
幼い子共は、
感情のままに行動し、
取り返しのつかない事をしでかす。
兄弟?
なのか?
僕の弟は、こんな残酷な事をするのか。
意識を失った真凜を背後から、刃の餌食にしていた。
いや・・・。
細かく言うと、
九尾狐と化した吐夢の右手が、長い爪が、
真凜の背中を切り裂いた。
「止めろ!」
音羽が、油断した瞬間だった。
音羽の長い髪も、
晴の動きも、
届かなかった。
鮮血が、散って、状況に気が付いた。
希望が散った。
真凜の身体が痙攣した。
「まずい!」
誰もは、そう思った。
瞬間。
僕は、吐夢に襲いかかった。
小さな子供ではなく。
九回生き返るという九尾の狐。
同じ種族の僕。
飛びかかった僕は、もはや、人ではない。
同じ姿をし、回転しなから、吐夢に襲いかかる。
容赦しなかった。
吐夢に遠慮はなく、
僕に喰らいつく。
肩が裂け、肉が弾ける。
「んまーい!」
獲得してきた非常食を頬張る、可愛い吐夢の姿はなく、
狂犬の様に、裂けた口から泡を吐き出す九尾の狐。
僕らは、声にならない叫び声をあげながら、
相手が、気を失うまで、闘い続ける。
だが、どうしても。
僕は、弱勢だった。
吐夢に、牙を立てられながら、
今ひとつ、
吐夢に致命を負わせる事ができない。
「やめなさい!」
声と共に、
2人とも、
真綿で、首を絞められる形になった。
母さんだった。
「やめなさい」
「何で・・」
不満そうな吐夢。
「何で・・・こんな、人間との出来損ないを止めるんだ!」
吐夢が、言った。
「こんな軟弱な奴。母さんの子供な訳ない!」
一瞬、気がそれた僕の腕を掴み、牙を立てる吐夢。
鮮血が飛び散り、母さんが、初めて吐夢を制した。
「人間との子供を助けるのか?」
恨めしい。
吐夢の声。
人間との子供?
それなら吐夢は?
「もう、同族で、争うな」
「あなたは、僕を育てただけで、母親じゃない!親の顔するな」
吐夢は。
母さんの子供ではなかった。
「大丈夫か?」
僕を気遣う母さん。
「なかなか、手に負えなくてな・・・」
少し、疲労がみえる。
「同族ながら、難しい」
「ふん・・」
吐夢葉、鼻を鳴らすと、怪我をした前足を舐めた。
「後悔するなよ」
そう言うと、僕らに間をぬって駆け出して行った。
「真凜は・・・」
鮮血が止まらない。
音羽が、髪を止めていたリボンで、傷口を縛った。
「晴が、連れて行った」
手当すれば、命に別状はないらしい。
「・・・だけど」
背中に大きな傷を負った為、
彫られた図面は、復旧できないと言う。
「折角、ここまで、来たのに」
勝浦が聞いたら、なんて言うだろう。




