もう、終わりにしないか。
感染した。
そう感じた。
勝浦は、鼻を拭った。
「大丈夫か?」
誰も、いないビルに、桜咲里の声が響いた。
「あぁ・・・うん」
感染する筈はなかった。
「こういう事は、しておいた方がいい」
香港の闇市で、知り合った。
天才すぎて、世間から見放された医者。
クズで崩れ。
「インフルエンザに似てるだろ?だけど、症状は、エボラだ」
恐ろしい事言うな。
勝浦は、顔を顰めた。
「あいつら、自分達で、開発しておいて、結局は、自分の首を絞めるというシナリオだ」
戦時中で、生物兵器を造っていたという。
「爺さんがな」
付け加える。
「・・・で、嫌になって、ここで、その日暮らしさ」
知らない何処かで、また、続けられる研究。
「ワクチンは、ある。だけど・・・治療薬がない」
「治療薬がない?じゃ・・・助からないじゃないか」
「誰でも、簡単に感染する。抵抗力が無ければ。風邪に特効薬がないのと同じ・・・少し、厄介な風邪なんだ」
「罹らないのが、一番。だけど・・・感染したら」
「・・したら?」
「甘いもの、食って休憩するしかない」
そう言っていたじゃないか。
冗談。
美味いもの食って?
食われているだろう。
土の中や・・・水辺へと、
人を誘い、死にゆく。
一体、何人、死んだんだ。
「ワクチン・・・打っていたはずじゃ・・・」
「未完成のな」
鼻血が止まらない。
体が、崩れ、溶けてしまうのか。
人に見られるのが、嫌で、土の中や、水辺へと行くのか・・・。
「夜移動するんだよな」
ポツンと桜咲里が言った。
「どうして、光ると思う?夜に移動するからかと、思っていた」
「移動が、夜って」
「太陽光か?」
「昼間、感染者に逢った事があるか?」
「感染が一段落したせいかと思っていたが」
「行動するパターンがある、症状と一緒に」
勝浦は、鼻を啜った。
「大丈夫か?」
「まだ、死なんよ。少しは、免疫がある。真凜を見つけて、仙台に届けないと」
そう思うが、どこにも、真凜の姿は、ない。
「もう、生きていないか・・・」
その時だった。
桜咲里の携帯が鳴った。
「生きている・・・」
呟くのを、勝浦は、すかさず、聞いた。
「生きていたか・・・」
ほっとするのと、同時に、鼻血を噴き上げた。




