僕は、やっぱりマザコンだと思う。
思い描いていた母。
「ママ」
と呼ぶ友人達を横目に見ていた。
「どうして?」
何度も、父に聞いた。
「どうして、僕には、いないの?」
小さな僕の手を握る父の手が震えていた。
「どうして?」
あまりにも、しつこいから山寺にやられたのかな。
伏目がちな母の顔は、やっぱり、僕と同じ顔だった。
「母さん?」
重みのある言葉だった。
「ずっと・・・」
逢いたかった。
そう言おうとした時。
「吐夢!」
晴が叫んだ。
そうだった。
吐夢。
同じ九尾狐。
兄弟かもしれない。
そう思っていた。
油断した。
弟であれば、
この母との再会を彼も、望んでいた筈。
だが、
違かった。
晴が、叫んだのは、
吐夢が思わぬ行動に出たからだった。
「どうするつもり?」
吐夢が、抱えていたのは、真凜の上半身だった。
「この機会に、ワクチンを造るつもり?」
「待って?吐夢。何を言っている?」
「何をって?僕が聞きたいんだよ」
「助けるんだよ。でなければ、この国が無くなってしまう」
「なくなればいい」
「吐夢?」
誰かが、動けば、吐夢の牙が、真凜の喉元を切り裂く。
吐夢は、僕らと同じ目的で、行動していた訳ではなかった。
「お前・・・」
晴が唸った。
「どうして・・・どうして・・・母さんは、この人達を助けようとしたの?」
「母さん?」
僕は、息を呑んだ。
それと同時に、やっぱりと思った。
「自分を追い詰めた人達を、助けるの?」
「吐夢」
僕は、苦しくなった。
弟なんだ。
僕以外に、子供が居たなんて。
「感染は、止める事はない。変わった方がいい。母さんだって、そう言っていた。こんな国、死ねばいいって」
「それは、違う。」
「違くない。あんなに、苦しんだのに。助けるの?」
「吐夢。よすんだ。お前は、何も知らない」
晴が、吐夢に詰め寄る。
意識を失った真凜の真っ白な喉元に、吐夢の牙が刺さろうとしていた。
「このまま、切り裂いてやる」
晴なら、きっと、吐夢を切り裂く事ができるだろう。
僕も、誰も。
母の前で、吐夢を傷つける事なんて、できなかった。
興奮し、
真凜の体を引き裂こうとする彼を、
僕らは、止めれなかった。
僕が、母との再会に浮かれた事が、
余計に逆上させた気がした。
「こんな国、なくなればいい」
迷わず、
吐夢は、非常にも、真凜を引き裂こうとしていた。
「え?」
僕らは、そう思った。
真凜が、消える。
と言うことは、望みがなくなる事。
間違いなく、吐夢の一撃が、真凜の命を奪った。
そう、思った。
その時、
吐夢の小さな体が、後ろに、飛んだ。
その時、入れ替わるように、現れたのは、音羽だった。
彼女の長い髪が、吐夢の体を縛り付けていた。
「音羽・・・」
消えていなかったんだ。




