1人の娘が鍵になった経緯
東京。
思わぬ光景だった。
戒厳令が敷かれ、兵士達が行き交う中、
桜咲里の援護を受けて、なんとか、真凜の勤めているビルまで、たどり着いた。
が、
もぬけの殻だった。
「そうだよな・・・」
人がいる訳がない。
巡回する監視の目を潜り抜け、
やっと、たどり着いたのに。
誰もいない。
入り口を監視する兵士をやっと、倒したと言うのに、
ガックリと気落ちした。
「ここは・・・」
銃を構えたまま、桜咲里が、ホールを見上げた。
エントランス正面の受付があった跡地。
吹き抜けのホールには、絵画が飾られ、在りし日の様子を思い浮かばせる。
「何の研究機関?保健省と聞いていたけど」
「保健省?」
娘だけが生き残っている。
そんな情報をあてにして、やっと、たどり着いたのに、誰もいない。
勝浦は、ガックリと床に腰を下ろしていた。
「建前はね・・・」
ポケットを弄り、タバコを取り出す。
「建前?」
「娘は、何も知らないただの下っ端だった」
「何も知らない?って。何かあった?」
「私も、よくは、知らなかった」
勝浦が、急に上を向いた。
「まさか?」
驚いたように、鼻を拭う。
「感染?した?」
頭を振る勝浦。
「やっと・・・だよな」
ベッタリとした鮮血が、指先に残る。
「ここで・・・一体、何があったの?」
「こんな事態が起きる事は予想されていた。そう聞いた」
「誰に聞いたの?お嬢さん?」
「娘は、何も知らない」
「誰に?」
「娘が、連れてきてね。結婚すると言っていた」
静かにタバコを燻らせる。
「誰を連れてきたの?」
「ここの研究員だよ。」
「その研究員に会えば、わかるのね。お嬢さんは、後で、探すようにして・・・」
「いや・・・いないよ。もう彼は、あの光の一つになった。真凜を地下に逃して・・・。1人しか入れないパニックルームに、娘だけに譲って」
「死んだ?」
「わからない・・・ただ、どうして、この生物兵器のワクチンを簡単に作れたかって事なんだ」
「待って?海に沈んでいた生物兵器って・・・どこの国の?」
「・・・答えなくて、いいかな。聞いた話だし」
桜咲里は、生唾を飲み込んだ。
戦時中にあった、生物兵器を作っていた部隊。
遥か、遠くに起きた事が、時を超えて自国を苦しめる事になるとは。
「だから・・・ワクチンを作れるの?」
勝浦は、深くため息をついた。
「お嬢さんが、鍵だとして、USBか、何かを持っているの?」
「鍵は・・・真凜。そのものだ」
「そのもの?」
「早く、真凜を見つけてくれないか?」
勝浦が、吐血した。




