対面
時間が止まった。
目の前にいるのは。
音羽。
・・・・の姿をした誰か。
彼女を借りて、中にいた誰かを。
僕は、知っていた。
いや・・・。
感じていた。
音羽
まだ、消えていなかった。
そんな安堵感より、
突然、音羽の魂魄を借りて、現れた誰かより、
晴の表情に驚いた。
そして、
吐夢の反応。
それぞれが、
思わぬ反応をしたが、
何よりも、
僕らを驚かせたのが、
そっと、両腕から降ろした1人の女性だった。
「誰?」
僕らは、一瞬、顔を合わせた。
「鍵だ」
音羽の声だった。
「鍵?」
じっと、見つめる瞳の奥に居るのが、
誰なのか、わかった。
ずっと、待っていた。
「あなたは・・・」
僕は、思わず、音羽の右手を掴んだ。
「誰なのか、わかっている」
「離せ」
「ずっと・・・逢いたかった・・・」
同じ言葉を返してくれたら。
そう思った。
私も。
そう言って欲しかった。
期待した。
だけど、
その思いは、はぐらかされた。
「この子が、鍵だ。すぐ、連絡しろ」
晴が反応した。
「もしかして?」
「薬を作るんだろう?」
ガラスの様に、冷たい目。
その奥に、何を見るんだろう。
晴は、音羽の奥に何を見るのだろう。
「あの勝浦の?」
「娘であり・・・設計図だ」
「設計図って?どこにあるの?USBとか、チップとか?どこに?」
何かを持っているという気配はない。
「思いもつかない方法だ・・」
音羽は、真凜の履き物を剥ぎ取る。
真っ白な足裏が、現れる。
「え?」
誰もが、息を呑んだ。
足裏には、何かの記号がついていた。
「何?この続きは?」
足裏にある刺青みたいなのが、何かの設計図の一部と気づいたのは、晴だった。
「これだけじゃぁ・・・」
「これ以上は、ここでは、ダメだな」
そう言いながら、音羽の姿をした彼女は、長い髪をかきあげ、真凜の真っ白な頸を見せた。
「本人は・・・気づかないな・・・これは」
真凜の背面に、一面に何かの図が記されていた。
「勝浦さんが言っていたのは・・・」
娘を連れてきてほしい。
何かを運ぶのではなく・・・逢いたいのではなく。
娘・・・と言うのは
「生きた設計図」
「危険な賭けだよな」
真凜を晴に預けると、音羽の姿をした彼女は、立ち去ろうとしていた。
「待って!」
晴は、引き止める。
「俺は・・・ともかくとして、颯太に言う事があるだろう」
「え?」
思わぬ晴の言葉に振り返った。
「音羽の姿を借りてまで、ここに来た理由があるんだろう」
「晴・・・」
親子の対面なんて、望んでいない。
僕は、あの日、何があったか、知りたかっただけだ。




