一の葉、空翔
不思議な光景。
眼下に広がる。
懐かしい。
人工的な灯りは、見えず、
太古に戻ったような地平線。
地下に光るは、
近深く潜った人々の命の灯。
海や河も同じ。
瞬き、消えていく。
こんなの、望んだか。
長い間。
「殺してやる」
汚い言葉を吐いた。
石に閉じ込められた。
名のある僧正とだけ、聞いた。
「復讐してやる」
黒い感情で、一杯になった。
自分の思う様に生きて、
突然、捕まえられた。
「何も、悪い事はしていない」
「帰りたい!」
何度、叫んでも、自由になる事は、できなかった。
「あの人が来るまで」
黒い感情が消えていった。
始めて、穏やかな日を迎えた。
生まれたのは、
小さな男の子だった。
颯太と付けた。
「あの人に、似てくれればいい」
そう思った。
思いは、通じなかった。
颯太は、自分に似ていた。
「なんて事を・・・」
自分を責めた。
あの人は、自分が、何者か知らない。
朝だった。
寒い朝だった。
澄み切った空気が、肌を刺した。
無意識で、放った炎は、颯太が、原因だった。
「危ない!」
救った姿を、あの人が見ていた。
仕事に行った筈なのに。
「どうして?」
責めるような夫の目。
恐怖の目だった。
逃げた。
思わず。
知られたくなかった。
夫にも。
颯太にも。
あれから、何年経った?
まだ、この地に舞い戻っていた。
「颯太・・・」
まだ、忘れられないでいた。
お腹の中で、始めて動いた日の事を覚えていた。
自分の思いは、変わらない。
変わったのは、颯太を取り巻く環境だった。
恐ろしい魔の手が、この地に迫っていた。
「私、1人に力じゃ、どうにもならないから」
背中では、真凜が、気を失っていた。
それは、そうだ。
あまりにも、この世界は、辛すぎる。




