命の灯の理由
自分を助けに来た者は、人ならぬ物だった。
追い詰められ、選択する方法がない。
この救助者にすがるしか、方法はなく、
真凜は、その背にしがみついた。
どうして、
この者がここに居るのか。
いつの間にか、人ではない者が住み着く様になったのか。
世界は、知らず知らずに変わっていく。
今まで、何となく、暮らしていた日々が懐かしく、
全て、夢の中で、起きた事の様だった。
九つの尻尾を持つ、美しい女狐の背に揺られ、
真凜は、この都会を眼下に見下ろす事になった。
放射状に光る蒼い燈。
それは、息をするかの様に、揺れている。
こんな事がなければ、それは、行き交う車や何らかの乗り物の明かりだと
思っただろう。
「だけど・・・」
思わず、唾を飲み込む。
その蒼白い光は、
東京湾や、河川に向かっても、続いていく。
「えぇ・・・」
同じ事を、一の葉も、思ったのだろう。
「あれは・・・」
答えは、言いたくない。
そんな残酷な事が、あるのか。
移動し、消えていく燈。
「感染・・・というか、寄生に近い」
「あの・・・蒼い光は?」
「感染した人よ」
風の中で、一の葉は、答えた。
「放射状に、伸びた光は、地下にいる人々」
「海や河川に向かうのは?」
「同じ感染した人」
「う・・・」
思わず、吐きそうになった。
ドローンが、感知し、追いかけてくる。
長い尻尾が、追い払う。
「感染した人が、向かうのは、呼吸のできない所」
「土や水の中って事?」
「そう・・・楽になる為。その呼吸は、最後に青白く灯る」
おそらく体内に溜まったガスが、発酵するのだろうが、まだ、若い真凜には、耐えられない内容だった。
「何で?そんな残酷な・・・」
「簡単に人を消す事ができるのでしょうね」
「誰が誰を消すの?あなた達が、私達を?」
「まさか・・・。今までだって、私達が、何かをするなんて事はなかった。いつも、あなた達が、自滅していただけ」
「じゃぁ、どうして、私を助けようとするの?」
「今回は、やむを得ないの。私の事情・・・」
一の葉は、しがみつく真凜を気遣いながら、夜の街を飛んでいく。




