血は、語る
カオス。
そう言った方がいい。
吐夢。
九尾狐。
他に、聞いた事がない。
「随分、昔に大陸で、聞いた事がある。他にいるとは、思わないな」
とぼけた声で、晴が言う。
「本当の事を言えよ」
僕は、イラついた。
この状況。
イラつかずにいられるか?
体の中で、血液が沸騰する。
「どこまで、僕に本当の事を話せるの?」
晴は、まだまだ、僕に黙っている事があるはず。
「隠している事はないの?」
吐夢の事。
吐夢が、他には存在しない九尾狐だとすると、
僕と同じ。
つまり、僕の弟って事になる。
不自然な出会い。
そもそも九尾狐の封じられていた殺生石に、わざわざ、立ち寄った晴が、
知らない訳がない。
何だよ。
あんな花束を添えたりして。
昔、何かあった・・・て事だよな。
どこまで、晴葉、関わっているんだ。
「まぁ・・・その」
晴は、鼻の下を擦った。
「怒るのも、状況を考えろ」
それはそうだ。
勝浦と合流。
桜咲里は、彼の車に乗り込み、僕らは、囮となって、爆走していた。
吐夢が、同乗すると、
追手が、興奮していくのが、わかった。
「そろそろ本気出そうか」
「止めて。相手は、人だよ」
「どうして、容赦ないじゃん」
吐夢が笑う。
笑う口の中で、八重歯が光る。
「僕らに、加減しないのに、僕らは、加減するの?あいつら、悪い奴だよ」
「こら、ちびすけ」
晴が嗜める。
悠長な事を言ってて、いいのか。
燃料切れだぞ。
「俺達は、なるべく、関わらない。それに越した事はない」
「そんな事したら、この国、無くなるよ」
「そんな事ない。このまま、やられる訳がない」
「そんな事言っている前に、僕らが、やられるよ」
車が止まった。
簡単に追いつかれる。
「晴。格好つけている場合?」
「あんまり・・・こんな事したくないんだけどな」
止まった車から、晴は足を投げ出した。
携帯型の小型ミサイルが、撃ち込まれようとしている。
「本当・・・に」
関わりたくない。
そんな事、
本当に思っている?
空間に歪みが生まれた。
切り裂かれるように、上から下に。
ファスナーで、開けられた様に、
口を開いた空間。
その先は、砂の世界だった。
「・・・だから」
空間は、小型ミサイルを飲み込むと、
口を閉じてしまった。
「?」
理解できただろうか。
追手は、次から、次へと、小型のミサイルを打ち込む。
その都度、
ファスナーは、開き飲み込む。
「この位にしとけ・・・」
降り立った晴の姿を見た、兵士達の動きが止まった。
目の前にいる者の、姿に言葉を失った。
「あぁ・・・そうだった」
僕は、思い出した。
晴に、取り憑いていた者の正体を。
邪神。
片方にだけ、角を持つ、
鬼の姿。
それが晴の、
本当の姿だった。




