追う者、追われる者
「全く!」
晴が毒気ついた。
そう言いたいのは、僕も同じ。
「目立たないように!って言ったよな」
言った!言った!
僕らは、なるべく目立たないように、生きてきた筈。
突然、現れた九尾狐のちびっこのお陰で、追われる羽目になる。
「別に行動しよう!」
晴は、そう言った。
が、結局、吐夢を、見捨てる事もできず、同行する事になる。
「だって・・・さ」
人の姿に、戻れないらしく、九尾の狐は、口を開く。
「殺されそうな人を、見捨てろって言うの?」
「・・そう言う訳ではないけど」
晴っは、言った。
「なるべく、人の出来事には、関わらないように生きてきた訳」
その気になれば、あんな侵略者達なんて、晴にとっては、造作もない事なんだろう。
だけど、何も、手を出さないのは、どれが、正解か、わからない事だから。
人にとって、良い結果が、他の存在する者達にとって、良い事とは、限らない。
人が消えた街で、生き物達が、行き来と生活しているのが、その答えだ。
「気になっていたんだけど」
人間にかつて、飼われていた犬や猫達も、不思議な事に、逃げ出し、変わらず、生活していた。
「影響を受けていたのは、人間だけ?」
「そんな事あるのかな」
「生物兵器と聞いたから・・・全ての生物が、感染すると思っていたけど」
妙な色の空を野生化したインコ達の群れが横切る。
「これで、良かったんだよ」
大人びた口調で、吐夢が言う。
「人が、存在しない事で、地上は、浄化される」
「とも限らない」
晴が、厳しい口調で遮る。
「それに変わる者が、必ず、現れる」
長い間、見てきたんだろう。
「バランスをとって、互いに手をとって、行くのが、ベストなんだ」
何を言いたいのか、晴は、ミラー越しに、吐夢を見た。
「聞かなかったのか?」
「誰に?」
ちょっと、待って。
肝心な事を聞いていない。
兵士達からの追跡をかわすのに、精一杯で、大事な事を聞いていなかった。
「晴?知っていたのか?」
「ん?」
口ぱくだけで、言葉が出なかった。
「この子・・・誰?まさか?」
「あぁ・・・」
吐夢が、笑った。
笑顔が耳まで、避けた。
「他にいないだろう?」
「えぇ?」
「にいに。」
「は?」
晴が、はっきり言った。
「弟・・・だろ」
「え?」
僕の思考が停止した。
「弟?って事は」
「そうだ・・・」
母は、まだ、死んではいなかった。




