鍵を抱く愛娘
真凜自身が、気付く事なく、秘密を握っている。
勝浦が知ったのは、事が起きて、間も無くだった。
それは、たまたま偶然。
これから起きる事を知ったばかりだった。
この小さな国は、誰もが、侵略の機会を狙っていて、
ほんの少し、均衡が崩れただけで、
簡単に侵略者の手に落ちてしまった。
南海に沈んだ大戦の遺骸があり、
それを利用している輩がいるのを、
勝浦の仲間が掴んでいた。
海底に眠る恐ろしい生物兵器。
それが、海に囲まれた国に、広がった時、
取り返しのつかない事態になる。
感染に関して、国外で何度か、酷い目にあった勝浦は、
2人の娘を関係機関に、就職させていた。
真凜は、2人目の娘で、親から見たら、どうしようもない
落ちこぼれだった。
姉の花凛と比べ、末端の事務員にしか、なり得ない。
人の役には、たてなくても、幸せなら、それでいい。
そう思っていた時に、事は起きた。
「鍵はあるんです」
連絡をくれたのは、花凛の婚約者だった。
何ヶ月も前に、姉の花凛は、消息を絶っていた。
「この件を解く方法はある」
真凜のいる研究機関に勤める彼は、真凜にそれを託したと言う。
「必ず、真凜を連れ戻してください」
それを最後に、連絡を絶った。
真凜が。
この感染を止める鍵になる。
侵略者に、呑まれた街で、
どうやって、真凜を連れ出すのか。
もしかしたら。
あいつなら、可能なのか。
桜咲里が、追いかける男。
九尾狐なんて、信じていなかった。
大陸に伝わる妖怪。
日本にも、そんな口伝が、残っている。
かの安倍晴明の母がそうであったように。
彼が、そうなのか。
そして、
今、目の前に広がる光景は、
九尾狐は、本当に、存在すると言う事だった。
火炎放射機を向けられながら、
小さな九尾狐は、宙を舞っていた。




