憑依
自分の目の前に存在する、この少女が何者なのか、真凜は、考えたくなかった。
自分以外の者達が消え、荒廃し切った世界に、1人だと知った時に、
自分以外の存在があった事だけが、救いだった。
信じたい。
例え、自分を害する存在だとしても。
外の様子を伺い、
「窓際に来てはいけない」
そう言う彼女は、少なくとも、自分を助けようとしている
そう感じていた。
「どうして?」
真凜の口からは、
堪えていた思いが、次から次へと、溢れ出ていた。
「どうして、私だけ?」
助かったの?
それとも、私だけ、逃げ遅れたの?
建物の電気の供給は、ストップしていった。
次第に闇に包まれる。
見下ろす眼下は、全くの闇。
誰だった?
不夜城と言ったのは。
大昔に戻った様に、
明かりはない。
かろうじて、所々の太陽光のライトだけが、虚しく光、
生き残った人を探すのか、
兵士が行き交い、
ドローンが、不気味な音を立てて、宙を舞っていた。
「あまり、話さないで」
その少女は、言った。
「あの・・・」
真凜は、気になった。
「名前だけ・・・教えてくれない?」
少女は、口篭った。
「あ・・・」
ふと、目を伏せ、
思い切ったように、口を開いた。
「一の葉」
「一の葉?」
「今は」
「今は、って?」
「時間がないの。とりあえず、この体を借りている」
「借りているって?」
「あなたにも、事情があるでしょうけど、私にも、事情があるの」
「あなたって?」
「借りを返さなくちゃ・・・なの」
何かに気付いたように、一の葉は、真凜の手を取ると、屈むように手を添える。
近くを、弄るようにライトを付けた、ドローンが通り過ぎる。
「あなたを助ける」
「他の人は?」
「他の人を助けるのは、あなた」
「私は、何もできない」
「それは、どうか、知らないけど」
一の葉は、笑った。
「それを決めるのは、あなただけど・・・私は、自分の役目を果たすだけ」
ドローンが、通り過ぎるのを、確認すると一の葉は、ホールを目指すように、手招きする。
「あなたに会わせたい人達がいる」
「それは、誰?」
「あなたの親に頼まれた人」
父親、勝浦が助けを寄越すと言った。その人達なのか。
「とにかく、ここから抜け出さないと」
「・・・でも。」
この街から、抜け出す事が、困難な事は、真凜でも知っている。
侵略者や感染者が、運びる街から、丸腰で、逃げ出すなんて、無理に決まっている。
「一体、どうやって?」
「・・・だから・・・この子を借りたの」
一の葉の右手が、頬の内側を引っ張った。
顔の表皮が、ずるっと、頭皮にむかって、捲れ上がった。
「!」
思わず、悲鳴を上げそうになった。
そこに現れたのは、もう1人の少女の顔だった。
「この子の力が、必要なの」
その子は、音羽と言った。




