この子、どこの子
もう、そこまで、来ると、想像がつくと思う。
突然、飛び出して来た尻尾を持つ子供に、
兵士達は、パニックになった。
勿論、僕達も、どちらを助けたら、いいのか、わからなくなった。
吐夢葉、残忍な生き物になっていた。
銃を向ける兵士達達から、軽々と身を交わし、
その爪先で、怪我を負わせていった。
何が、起きたのか、理解できただろうか。
桜咲里でさえ、晴の運転する車にしがみつき、
身軽に宙を蹴る、吐夢から目を離せないでいた。
「だめだ!」
しっかりしろ。
僕は、自分を奮い立たせた。
何が起きたか、理解できなかった。
あの幼い子供が。
九尾狐。
僕と同じ?
今まで、どんなに探しても、見つからなかった九尾狐が、
このタイミングで?
「吐夢」
晴の目が言っていた。
「止めろ!止めろ!」
僕は、車から、飛び出した。
吐夢葉、暴走していた。
いくら、侵略した兵士であっても、
見境なく、人を襲うなんて、
瞬く間に、検問所は、混乱し、
救援を呼ぶ事態に。
「面倒だな」
「颯太!気をつけろ!」
それなら、晴がやればいい。
そう思ったが、晴は、桜咲里の身を守ろうとしているのだろう。
車は、周りを振り切るにに、懸命だ。
正体を必死で、隠し、
追っ手を引き離す。
吐夢は、追っ手の兵士達を、次から次へと銀爪の餌食にしていった。
「だめだ!」
銃口だけではない、銃弾が、降り注ぐ事態に。
「吐夢!」
目を覚ませ!
「うわぁ!」
言葉にならない叫び声を発し、
鼻や口から、溢れ出た血液が、辺りに飛び散る。
首の後ろがチリチリ言う。
幾つかの銃弾が、僕らをすり抜ける。
少しも、ダメージを受けない自分の身体に笑った。
桜咲里が、銀の銃弾を集めた理由がわかった。
やっぱり、僕は。
辺りに、傷付いた兵士達の体の山が、できた頃、
ようやく、吐夢は、僕の腕で、大人しくなった。
「どうして・・・?」
ひと暴れして、ようやく、吐夢葉、落ち着いた。
「どうして・・・・」
「う・・ん」
ギュッと、僕の背中に抱きつく吐夢
「お兄ちゃんも?」
僕の指先には、長い銀爪が、現れていた。
興奮して、隠しきれない九尾狐の証が現れていた。
「うん」
黙って、うなづく僕に、逃げていた晴達が、戻ってきた。
「派手にやったな」
「仕返しされるね」
「仕返しの仕返しか・・・」
晴が笑った。
「晴が言いたかったのは・・・」
吐夢の正体に、晴は、気付いていた。
「まさか・・・僕の弟???」
そう言いかけた時、吐夢が遠くを指差した。
「来るよ!」
指さす方から、たくさんの人の群れが押し寄せてきた。
血生臭い人の群れ。
逃げきれなかった人達の、生きながら腐っていく恐怖に駆られた
恐ろしい人の群れが、こちらに、向かっていた。




