忘れていた絆
自分の中に、何か居る。
そんな感じだったと後で、言う。
九尾の狐
そのイメージは、妖女であり、大国を滅ぼしたとの口伝も残っている。
その真実は、
ただの愛に溢れた人だったと聞いた。
それを聞いた時、僕の双眸からは、熱い物がこぼれ落ちた。
どこかで、僕の存在は、間違いだったと思っていた。
母を殺したとも思っていたから。
だけど、
母は、しっかり僕を守っていてくれた。
それに気付いたのは、ずっと後だった。
何よりも、
僕が、驚いたのは、
あの妖狐だったと言う事。
一の葉
と母は、呼ばれていた。
音羽に、憑依した母が、目にしたのは、真凜だった。
何故、母は、真凜が、鍵になると知っていたのか、
その時の僕には、わからなかった。
でも、
少しでも、
僕や僕の父の生きている、この国を気に掛けている事が、
嬉しかった。
そんな思いだけでも、繋がっている。
小さかった僕に、知らせる事ができたら、
あの山寺での、苦しかった日々で、
僕が、卑屈にならずに、済んだだろうに。
音羽が、一の葉に、見せられた世界は、恐ろしいものだった。
「もう・・・元には、戻らない」
そう思ったと言う。
何とか、東日本は、息を潜めながら、存在していたが、東京も間も無く、
壊滅するだろう。
地底から、湧き上がる青い炎は、
人の魂の炎。
多くの人が、地下で、燃え尽きていった。
「誰も、助からないの?」
真凜の背中を冷たい物が、流れ落ちる。
「どこにも、いないの」
見下ろすと、目に映るのは、侵略者。
感染した者を見つけると、遠慮なく焼き払う。
どこにも、逃げ場なない。
熱探知機を使い、人を探す。
「見つかってしまう」
真凜は、身震いする。
逃げきれない。
助けを寄越すと、言った父親からの連絡もあれからない。
「あなたを、必ず、届けるから」
不思議だ。
真凜は、目の前の少女の顔を見た。
1人の顔を見ているつもりだが、幾つもの顔が、浮かぶ。
この少女が、父親が言っていた人だろうか。
まさか。
少女が?
「パパに頼まれた人?」
「私ではない」
少女は、笑った。
冷たい微笑みだった。
「お前だけではない。どうしても、預かりたい物があると言った」
一の葉は、真凜の手持ちのバックを見た。
「持っているのは、それだけか?」
バックの中には、重要なものはなかった。
期待したUSBもない。
「私の何かを、取りに来たの?」
「誰かから、何かを預からなかったか?」
その時だった。
「誰かいるか!」
階段を駆け上がり、ロビーに顔を出す物が居た。
「まずい」
一の葉の、顔が変わった。




