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こんな神様の造りし世界  作者: カズ
女神と臆病なマーメイド
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9/12

臆病なマーメイド

あの戦いから数カ月の月日が経った。あれから浄土と化したスカラルは正式に即位したメルヴィ女王陛下の指導の元、復興が大分進んだ。けどがまだまだ多くの傷跡が残っている。それでもそれまで苦しんでいた食糧問題はカレラの支配領域に置かれた事で改善され徐々に人々に笑顔が戻ってきている。


相変わらず魔物はこのカレラの支配地を目指し日々襲いかかってくるが幸いあの日から超巨大級の魔物の姿は確認されていない。それに俺たちはあれから強くなった。カレラからマーロン達は魔法を学び、ある術式を完成させた。カレラの魔法は精霊魔法といって普通のヒトでは使うことは出来ないが特殊な魔法陣を経由させれば一部を発動させる事が出来るらしい。例えば樹人形(ウッドゴーレム)を作る事は出来ないが支配権を譲渡すれば操る事はできる…みたいな、そんな感じらしい。正直詳しい事はわからない。すごいよ、マーロンは。


ともかくそれを利用して俺たちはゴーレム兵団を作った。俺とカレラで人が乗れるような戦車型のゴーレムを作りマーロンや魔法を使える人に譲渡する。ゴーレムにはシードバレットを放てる砲台を装備し、中に魔導士が乗り込み操作する。さらに小型の自立型のゴーレムを左右に3機づつ、計6機を射出して戦う。はっきり言って小~中型の魔物なら話にならない。


あとメイクフォレストで出来たあの二本の大樹。俺が「蛆の実」「安楽死の実」って呼んでた大樹は名前があんまりだって事で「生命の大樹」「退魔の大樹」と呼ばれるようになった。生命の大樹ってのはまぁ名前の通りとして、退魔の方なんだけどあれから新たな利用法が見つかったからそう呼ばれるようになった。あの樹の実は苦しむ魂を解放させる力がある。と言うことは苦悩の果てに汚れた魂のなれの果て、魔物を浄化する力があるんだ。実の果汁を浴びせれば魔物は浄化されマナとなる。これ以上ない対魔物の武器だ。今は袋に集めて投げつけるって感じだけどクローゼルの頭のいい連中が剣や弓なんかに利用できないか研究中らしい。


ともかくクローゼルもスカラルも少しづつ前向きに進んでる。俺も今日までアースバインドで仮設テントを作ったり、瓦礫の撤去なんかを手伝ってきたけど民家や交通網がようやく復興し始め、俺が手伝える事が無くなって来た。


グロウ「おーい!ロイ!女王様がお呼びだぞー!」


ロイ「またか…まぁちょうどいいか!行こうグロウ!」



……


………


メルヴィ「お久しぶりで御座いますロイ様」


ロイ「いや…一昨日会ったばかりじゃ無いですか…」


メルヴィ「私にはその1日が悠久とも想える程永く感じるのです!」


ロイ「はいはい…で今日のご用は何です?」


メルヴィ「今日こそはお返事を頂きたく思います!!」


ロイ「………いやぁ~今日もいい天気ですね!」


メルヴィ「はぐらかさないで下さい!今日こそはちゃんと答えを言って頂きます!…この数カ月。何度も何度も私の求婚に返事もせずのらりくらりと…いい加減にして!私のどこが駄目なのですか?!」


ロイ「いやぁ…あの…やはり…俺はクローゼル人だから…やっぱりスカラル国王はスカラル人じゃないと…ほら…国民がね?納得しないじゃないですか?」


メルヴィ「ですからそれは問題ありません!あなた様はスカラルを救った英雄!納得しないスカラル人はいません!それに反乱軍だった経緯も抹消され犯罪歴もありません!クローゼル国王にも許可をとっているのです!何故なのですか?私の容姿??はっきりしなさい!!」


グロウ(…面白くなってきたぞこりゃあ)


ロイ「いえ!メルヴィ様は可愛いですよ!けどねぇ…ほら…やっぱ年齢が…俺29で今年30歳のおっさんですよ?おっさん!」


メルヴィ「そんな事でしたか!私には歳など関係ありません。あの日私を助けて頂いたあの雄姿。今でもはっきり覚えております。あの日からあなた様の事をお慕いしない日は御座いません!もはや身も心もあなた様に捧げてしまっているも同然!それにスカラルには新たな国王が必要なのです!ご納得頂けましたか?」


ロイ「えーっと…えーっと…いや!ほら!俺女神との契約で旅に出ないと行けないから!今すぐ!」


メルヴィ「…今、何と?」


ロイ「あ!はい!俺も今日はその事を伝えようと来たんですよ!ニーヴェルン様との約束でね!旅に出るんです!今日!…いやぁ~残念だなぁ!はは…ははは!」


メルヴィ「…いつ…お戻りになられるんですか?」


ロイ「そうだなぁ…5年…いや10年かなぁ…あははは」


メルヴィ「衛兵!ロイ様を捕らえて祝言の用意を!」


ロイ「え?嘘だろ?…ちょ…助けて神様~!!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



一方その頃、遠く離れた地にて。


神官「神の名を語る不届き者め!今すぐ出ていけ!!」


ニーヴェルン『えーえー!出てってやりますよ!こんな湿気た教会に奉られるのが御免だっての!ハゲ!ハゲハゲ!』


バタン!


全くなにあれ?せっかく創造主たる私が間違った信仰を指摘してあげてんのに、あのハゲ頭!あんたが信仰してんのがまやかしだっての!


あれから私は各地を回り、少しづつマナを分散して回っている。前回の反省で一カ所に集中させると魔物を刺激してしまうからだ。でも新たな問題が発生した。微量の変化なもんで人々が奇跡を実感しずらく私を神だと信じて貰えない。最初は私の神オーラで何とかなるかなと思っていたけど甘かった…で仕方ないから情報収集も兼ねてさっきみたいに教会に話を聞いたりして、行けそうなら説教を説いたりしてるんだけどごらんの通り。あれから信徒はまるっきり増えてない。幸いロイ君達から信仰の力が送られ続けてるんで助かる…マジ感謝!でもこのままだと不味いよね~…どうしよ?


それは兎も角として、この世界の事が大分わかってきた。この星は大まかに五つの大陸があり、知的生物は6種族。


まずはロイ君達の種族。長耳族。この世界で一番繁殖能力が高いらしい。


次にロイ君がアメストリア人と呼んでた高鼻族。私に一番外見が近いかな?でも耳が少し尖ってて、肌の色が白い。アメストリアと呼ばれる一番小さな大陸にごく少数住んでて他大陸とも交流がある社交的な種族。


3番目はトカゲ…かな?ヘビ?みたいなウコロに覆われた爬虫族。気性が荒くて力も強い。


4番目は猛禽族。昼間寝て夜活動する梟みたいな人達。空は飛べないけど夜目が利く。それに首を傾げる仕草が結構可愛い。


5番目は半魚族。この子達が結構特殊で、肺呼吸なんだけど体の中に空気を溜める機関があって長時間泳ぐ事が出来る種族。体色も産まれた環境によって変わるみたいで色とりどりで一番綺麗!半魚っていっても指間に水掻きがあるくらいでまるっきり人魚って感じじゃないかな。


最後の種族が龍族。そう、ドラゴン!全種族中一番力が強く、大きく、そして長寿。この子達には全く相手にされなかった。そもそも多種族とは交流を持たないらしい。唯一武器を使わず素で魔物を撃退する規格外の種族だった。でも出生率が元から低く、さらに近年少子化の一途らしい。


ちなみにさっきのハゲ神官は猛禽族。あのハゲめ!


それにしても不思議。一つの世界に6種族も知的生物がいるなんて聞いたことない。たいてい進化の過程で淘汰されて1種族、多くても3種族ぐらいなもんなのに…。


そして4か月前、あの魔物の最後の言葉


「死の女神アヘン」


魔物は汚れた魂の集合体。思考無く、ただただ魂を求め彷徨う存在。そんな存在が言葉を発した。生前の魂に刻まれた知性の欠片が残っていた可能性もあるけど…でも私は嫌な予感がしてならない。


でもまぁ今はこの事を考えても仕方無い。答えが出せるだけの材料が揃ってないし、調査を続けよう。さて!次にやる事は決まってる!全ての生命の源、果てしない命のゆりかごを救っちゃいましょう!!


ニーヴェルン『そろそろ海行っちゃいますか!』




ボチャン!


私は勢いよく海に飛び込んだ。私は海が好き。命の芽吹く最初の場所、その世界の根本が産まれる場所。それにどんな世界であっても海は綺麗なんだよ!ずっと見てたい。そう思える程だ。


それに海の浄化は最重要課題。気候のほとんどが海の影響下にある。星全体のバランスを正常に戻す為にも早めに手を打ちたい。


さてさて私の世界の海はどうでしょう?御覧下さい。目の前に広がる楽園。シーパラダイスを…


シーパラダイス…では無いですねコレは。うん、想像はしてた。


水は濁り数センチ先も見えない。生き物の気配は無く、地上以上に悲惨な状態だった。やはり魔物が蔓延っているようだ。


ニーヴェルン『はぁ…じゃあチャチャっとやりますか!』


私は海底に降り立ち、手のひらをそっと大岩に触れる。すると岩と岩の隙間から大量の泡が吹き出しみるみる水を浄化していく。泡は広がり、かなり広範囲の海域を浄化できた。海ならヒトへの影響は少ないから手加減せずやれる。


ニーヴェルン『まぁこんなもんかな?次は精霊を呼び出さないと、おーい!出ておいでー!』


その声に反応し、海底から立ち込める泡が集まり小さな魚のような精霊が現れた。


水の精霊「ママ!ママなんだね?!」


ニーヴェルン『あー…君もそんな感じ?あのね、私はそんな歳じゃ…』


水の精霊「ママ!こっちに来て!助けて!」


ニーヴェルン『え?無視?何コイツ??』


水の精霊は私を何処かに向かわせようとしてるみたいだ。私は精霊が進む方向について行く。それにしてもこの精霊。今まで見た精霊の中でダントツに言葉使いがなってない。これは教育が必要なようだ。


そんな事を考えていると精霊は浅瀬の岩場に辿り着く。


水の精霊「ママ!ここ!ここ!この子を助けてあげて!」


精霊が指し示した場所で反魚族の女の子が傷だらけになって岩場に引っかかっていた。今にも命が消えかかっている!


ニーヴェルン『大変!』


私は彼女を癒やしの光で包み込む。間一髪だった。あと少し到着が遅かったら死んでた。


ニーヴェルン『もう大丈夫!ナイス水の精霊!』


水の精霊「よかったぁ!ありがとうママ!」


ニーヴェルン『コラ!私はあなたのママではありません!ニーヴェルン様と呼びなさい!』


水の精霊「え?でもママがこの世界を創ったんでしょう?」


ニーヴェルン『?ええ、そうよ?』


水の精霊「それじゃあ僕を創ったのもママなんでしょう?」


ニーヴェルン『まぁそうゆう事になるわね』


水の精霊「やっぱりママはママなんだ!」


ニーヴェルン『いやいやいやいや、そうなんだけどそうじゃ無くてね?…』


反魚族の女の子「う…ん…」


ニーヴェルン『気付いたみたいだね!水の精霊!この話はまた後でね!』


水の精霊「ボクは水の精霊って名前じゃないよ?ポミュって言うんだよ?」


ニーヴェルン『わかったわかった!調子狂うなこの子…それより大丈夫?痛い所無い?』


反魚族の女の子「ここは…いったい…??」


ニーヴェルン『うーん何処って言われてもわかんないんだけど…でも無事で良かった。えーっと…あなたは…ヘイリィちゃん?かな?何があったの?思い出せる?』


ヘイリィ「どうして私の名前を…お姉様…綺麗…神様みたい…」




ズキューン!!


その一言が私の体を稲妻のように駆け巡る


やばい!その一言!やばい!駄目だ!惚れた!大好き!結婚しよ?


はぁ…はぁ…ここ一番取り乱したよ…でもこれを表情に出すような子供でも無いんですよ私は!神様らしく余裕の表情で微笑んであげよう。こんな風に咄嗟に判断できる私!大人になったなぁ私!


ニーヴェルン『ふふっありがとうヘイリィちゃん。私はニーヴェルン。傷ついた者に癒やしを与える者。』


ポミュ「ママ…口元がにやけてて気持ち悪い…」


ニーヴェルン『気持ちわる…黙れコノヤロウ!私はにやけてなんていません!』


ポミュ「うっそだー!にやけてたもん!」


ニーヴェルン『あんたねぇ!いい加減に…』


ヘイリィ「そうだ!お姉ちゃん!」


ニーヴェルン『え?私?』


ヘイリィ「いえ、私のお姉ちゃんです。お姉ちゃんはいませんか?」


ニーヴェルン『あなたのお姉さん?ポミュ、近くにいる?』


ポミュ「うーん…ボクわからない…」


ニーヴェルン『ヘイリィちゃん、一体何があったの?話せる?』


ヘイリィ「お姉ちゃん…お姉ちゃん…うわぁああん」


その後、突然泣き出したヘイリィちゃんをなだめるのは結構大変だった。よっぽど怖い目に遭ったらしい。それにしてもこの子、みた感じ成人はしてる。おっぱいも私より大きい。でも子供みたいに凄い泣く。なんだろう、凄いシンパシーを感じる。


それは兎も角、彼女の話はこうだ。ヘイリィ姉妹はこの近くの反魚族の集落に住む漁師の一族らしい。両親は数年前に漁に出たきり魔物に襲われ帰らぬ人となった。でも集落において漁師は食い扶持の生命線。危険な漁ができるヒトは限られている。そこで姉妹は両親の跡を継いだ。姉のウェンリイは村一番の漁師となり、集落を支えていた。でも妹のヘイリィは昔から泳ぐのがあまり得意じゃ無くて、当然漁もさっぱり。おまけに要領も悪く何をしても上手くいかないってそんな感じで、優秀な姉と比較され出来の悪い妹と笑い者にされていたらしい。それでも姉のウェンリイはたった一人の家族のヘイリィを可愛がり、姉妹仲はとても良かった。


それでもヘイリィは内心悔しかった。いつかは姉のように上手く漁が出来るようになって、両親の名に恥じない漁師になりたかった。自分の事を笑うヒト達を見返したかった。そこである日ウェンリイに黙って一人銛を持ち漁に出掛けた。そこは魔物が出始めて誰も行かなくなった漁場。でも大物が穫れやすい場所だった。案の定そこには見たことも無いような大物がいたそうだ。獲物を追い掛けていると深追いしてしまい。沖まで来すぎてしまった。諦めて戻ろうとした時、目の前に一匹の魔物が現れた。


必死に逃げたが泳ぎが下手なヘイリィはすぐに捕まりボロボロにされてしまった。死んでしまう。そう思った時、姉のウェンリイが身替わりになり、魔物を引きつける囮となって何処かに消えてしまったそうだ。そこで意識が途切れここまで流されてしまった、そんな経緯だったようだ。


ヘイリィ「うぅ…お姉ちゃん…私のせいだ…私のせいで…」


ニーヴェルン『そんなふうに自分を責めないの!あなたは悪く無い!それにきっとお姉さんも無事だよ!』


ヘイリィ「でも…お姉ちゃんは魔物に…」


ニーヴェルン『お姉さんは村一番早く泳げるんでしょ?希望は決して棄てちゃダメ!』


ヘイリィ「うん…ありがとう…お姉様…」


ニーヴェルン『そうそう!さぁ涙を拭いて!お姉さんを探しに行こう!』


ヘイリィ「え?探しに…?でも…」


ニーヴェルン『大丈夫!私これでも超最高に強いから!魔物とか話にならないレベルで!』


ヘイリィ「でも…あたし…」


ニーヴェルン『大丈夫大丈夫!ヘイリィちゃんはお姉さんと別れた場所に案内してくれればいいから!何も心配いらないよ!』


ヘイリィ「いや…」


ニーヴェルン『え?あれ?どしたの?』


ヘイリィ「いやぁ~!あたし怖いんですぅ!うああぁぁん!」


ヘイリィは再び凄い勢いで泣き出した。


ニーヴェルン『おっとぉ…まいったなコリャ…』

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