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こんな神様の造りし世界  作者: カズ
女神とウサミミの勇者
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7/12

それぞれの戦い

ロイ「うおぉぉおお!!」


あれから2日、俺はスカラル中を走り回り魔物を狩り続けている。


ロイ「何処だ…皇女が言っていた大型は?!」


カレラ(少し落ち着け!ずっと頭に血が上りっぱなしだぞ貴様!あまり寝てないようだし、少し頭を冷やせ!)


ロイ「いや!休んでられない!この数日で助けられたのはたったの十数人だ!俺がもっと早く動ければ…もっと助けられる!」


再び剣から蛆の実を召喚する。


カレラ(その実をあまりに食べ過ぎだ!それは確かに一時的に体力を回復できるが体への負担までは取り除けん!いくら勇者とは言え体が壊れるぞ!)


ロイ「…壊れるまでやる!」


カレラ(やれやれ…)


もうすぐ王都にたどり着く。ここで休んでられない!素早く蛆の実を食べ、魔物が消え去った後に残るアースバインドの根にクリエイトゴーレムをかける。出来たゴーレムに残った魔物の排除と俺が見つけきれなかった生存者を探してもらう。この作業をこの2日間ずっと繰り返してきた。


それからこの数日で新たに編み出した魔法がある。ゴーレムとメイクフォレストの合わせ技だ。ゴーレムとメイクフォレストの大樹は俺の眷属で聖晶剣モラプリムスを通して繋がっている。"サモン"と言う魔法で眷属を直接呼び出したり元の場所に戻したり出来るのだが、それを利用してゴーレムの体の一部に大樹の枝を召喚し、その枝に実を実らせる命令を下す。そうすればゴーレムが自動(オート)で生存者を発見した際、弱った生存者に蛆の実を渡すことが出来るし、先刻の寄生する魔物に出くわした際、あの安楽死の実で楽にしてやれる…。それに合わせてゴーレムの形を少し弄った。一回り大きくしヒトの形を崩して頭部から枝を生やし、その身を囲うようにガードをつけた。枝を守りつつ戦えるよう効率的な形にしたつもりだ。


カレラ(全く、馬鹿は時々凄まじい事を考える…こんな使い方をするのは貴様くらいだろうよ…)


ロイ「よし!ここはこのゴーレムに任せる!カレラ!俺たちは王都に行くぞ!」


カレラ(うむ!あの辺りからこの前の蛇くらいの気配を感じる…。十中八九敵の親玉がいるようだ。)


ロイ「今度は一瞬で消し去ってやる…!」


俺は覚悟を決め王都に侵入した。


スカラル国王都マル・ペルー。ここは高い塀に囲まれた街で、要塞の用な堅牢な門があるが見るも無惨に破壊されている。門を通り抜け街中に入ると石造りの立派な街並みが城に向かって続いている。しかしそこに人気は無く、異様な静寂さを醸し出していた。


破壊された門を通過し、街中へと侵入したが…


おかしい…他の場所に比べ全く被害が出ていない…。


ロイ「どういう事だ?皇女の話と全く違う!カレラ!魔物の気配はどうだ?」


カレラ(おかしい…そこかしこから感じるが所在が全く掴めん!まさか…)


突如街のドアや窓が次々開き中から触手が勢いよく飛び出し襲いかかってきた!一瞬のスキを突かれ、俺の体を締め上げる。まずい!凄まじい力だ!逃げ出せない!


カレラ(迂闊だった!この街全体が魔物だ!街に擬態しておった!)


ロイ「ぐっ!…どこまでも卑劣な!」


俺は手首をひねり、左手の剣を回して触手の一本を何とか切断した。バランスを崩した触手を振りほどき体制を立て直す。


ロイ「ハァハァ…いいだろう…魔法で丸ごと消し去ってやる!」


俺は街の中心。王城に向けて剣を構える!


カレラ(まて!まだ何かおかしい!)


ロイ「消え去れ!ガイアブラスト!!」



しかし魔法は発動する事無く、剣の輝きは収まった。


ロイ「…発動…しない?」


カレラ(もしや!ロイ!簡単な魔法…ゴーレムを召喚してみろ!)


ロイ「あ…あぁ…来い!サモンゴーレム!」


俺は配置しているゴーレムを召喚しようとするがまたも不発。何も起こらない。


ロイ「どういう事だ??」


カレラ(やはり…魔法が発動直前にかき消えておる!魔法無効化、これがこの魔物の本来の性質だろう!厄介な…。)


ロイ「何?なら魔法は効かないって事か?ならこんな巨大なやつとどう戦う?!」


カレラ(発動前に無効化するだけで効かん訳では無かろう!恐らく限定的に魔法を無効化する領域を作れるのだろうな…今我らはヤツの腹の中と言ったところか。実際貴様はこの街のすぐ近くでゴーレムを作る事が出来た!ならばこの街の外から放てばコイツを滅ぼせるだろう!)


ロイ「よし!元の場所に一旦戻る!」


俺は振り向き引き返そうとした時、魔物はその動きに反応したかのように先ほどの触手を伸ばし襲い来る!さっきは不覚をとったが気をつけていればさほどの速さでは無い。次々襲い来る触手を素早く切り捨てる。すると触手の攻撃が無駄だと解ったのか魔物は次の一手に出てきた。


民家の一軒が俺に向かって突進してくる!石畳の道路を破壊しながら凄まじい勢いで!流石にまともに食らえばひとたまりも無さそうだ。全力で交わし、門の方へ向かうが街全体の建物がまるで生き物みたいに立ちはだかり次々向かってくる!こいつ何としても俺を外へ出さない気だ!


不規則に動き回る建物をかわす事は可能だ。だが門へ向かう事が出来ない!ジリジリと体力が削られてゆく…。このままだとまずい。そう思った瞬間…俺の足の膝が折れ、突如力無く倒れこむ。


ロイ「な…足に力が入らない!…」


カレラ(馬鹿な!よけろロイ!!)


ひときわ大きな建物が俺に向かって突進してきた。


バキッ!…


何処かの骨が折れる音が頭の中に響き渡る。全身を襲う激しい痛み…衝突の衝撃で吹き飛ばされ、地面に横たわる。激しく吐血し、口内に血の味が広がる…。右腕と肋骨のいくつかがやられたようだ。朦朧とする意識の中、カレラが何かを叫んでいるのが聞こえる。…よくわからない…。今度こそ俺は死ぬのか…。この数日間の事が走馬灯のように蘇る。思えば数奇な人生だった…。俺は勇者になって…何も成し遂げる事が…出来なかった…。魔物に殺されてしまった人々…。勇敢に戦い殺されてしまった人々…。為す術無く殺されてしまった人々…。無念だっただろう。苦しかっただろう。怖かっただろう。俺は彼らの無念をはらしたかった。必ず敵をとろうと誓った。なのに…。


ロイ「お…俺はまだ…死ねない…!」


左手で握りしめる剣を杖代わりに何とか立ち上がろうとするが、やはり膝が言うことを聞かない。無情にも魔物の攻撃は止まない。とどめとばかりに建物が二方向から挟み撃ちの形で迫って来ていた。


ロイ「ちくしょおおお!!」


ガキン!


何かが挟まるような鈍い音が聞こえ、ゆっくりと目を開ける。死んでない?俺を囲うように半透明の壁が建物の進行を阻んでいる。これは一体…?


グロウ「ロイ!無事…じゃないな…でも生きてて良かった!」


マーロン「良かった!間に合った…うぅ…」


馴染みの声が聞こえる…なんでここに…?これは夢か…?


『ロイ君。よくここまで頑張ってくれたね。後は任せて!』


聞き覚えのある声が聞こえる。グロウがかかえてくれた肩越しにあの人の後ろ姿が見える…。やっとお目覚めですか?遅ぇよ…ははっ…


ニーヴェルン『てめぇ!よくも私の勇者をいじめたな!覚悟はできてんだろぅな?えぇ?!?!』




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



遡る事5日前………


グロウ「王よ、お話しがあります。」


グロウはロイを無理やり王城の客間に押し込めた後、王の下に戻り話し始める。


グロウ「白状しますが…俺はスカラルの密偵…スカラル王妃の命でここにいます。」


マーロン「兄さん…何言って…」


クローゼル王「お主…それは誠か?」


グロウ「黙っていてすまないマーロン。王よ…俺は…」


クローゼル王「ええぃ!何をしておる!衛兵!この者を直ちにひっとらえよ!」


グロウ「待ってくれ!話を聞いてくれ!俺はあくまで王妃様に忠誠を誓ったんだ!国王の豚にじゃない!俺は今までロイに協力し、内乱の原因になったスカラル王の策略を暴く為、証拠集めをしてたんだ!とにかく聞いてくれ!」


クローゼル王「…よかろう…話すがよい。」


グロウ「ありがとうございます。実は…」


グロウは静かに話し始めた。


グロウ「まず、俺の一族は代々スカラルに仕える騎士の家系だ。曾祖父の代に密偵の命を受け、代々長子が任を引き継ぎ役目を担ってきた。」


マーロン「え?…え?兄さん何の事…??」


グロウ「これは家族の中でも先代の母と後任の俺しか知らない事だ…。王よ、例え俺が極刑を受ける事となっても妹のマーロンや親父は全く関係無いんだ。勝手な頼みかもしれないが妹だけは何とか不問にしてほしい。」


クローゼル王「それはお主の話によるがな」


グロウ「わかった…。俺達一族の任はクローゼルとスカラルが国交悪化しないための情報収集が主だった。万が一にも戦争など起こらぬように…しかし、飢饉が続きスカラル王家の権威が失墜した時、貴族出の現国王が王妃との縁談を無理やり進めた事で状況が一変した。就任した途端軍備強化を推し進め中央政府を牛耳ったんだ。元々王族であった王妃様の発言権を奪い独裁国家が出来上がった。俺の一族の事は王族のみが知る機密事項だったから、王の目が俺達に向くことは無かったがな。俺は直接通信魔法で王妃様からの勅命を受け、ロイと共に軍を抜け反乱軍を組織した。密かに王の陰謀を暴き、王権を奪い返す為の証拠集めの為に…。」


そこでクローゼル王はしかめた眉間のシワを弱めた。しかし目は険しいままだ。


クローゼル王「その話を信じるとして、何故今この状況で白状する?」


グロウ「それは…ここに来る直前…ロイと合流する前に王妃様から新たな命を受けたからだ。突如スカラル近隣で大型の魔物が出現し、瞬く間にスカラルを蹂躙…。事態を重くみた王妃は正当な王位後継者である一人娘の皇女様を逃がし、急ぎクローゼルに亡命させよと。それをもって俺達一族は密偵の任を解かれた…。」


そこまて話を聞いてクローゼル王は決心したかのように口を開く。


クローゼル王「うむ。先程の報告とも一致する。よかろう!お主を信じよう!お主の処遇は全てが終わった後に改めて考えるとする。して、その皇女は今どこに?」


グロウ「…王妃様の話だとすでに脱出し、2日程で合流場所に到着するはずだ。俺は迎えに行かなければならない。悪いが兵をいくらか貸してくれないか?」


クローゼル王「よかろう。ワシの元に必ずお連れしろ!将軍をここに呼べ!今すぐ軍を編成する!」


それからクローゼル軍将軍を初めとした臣下が一同に会し、緊急軍事会議が開かれる事となる。


客間で休んでいたはずのロイが姿を消したのとわかったのは、それから暫くしてからだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



一方その頃、精霊カレラは頭を悩ませていた。


カレラが魔法で作りあげた樹人形(ウッドゴーレム)。一体一体が強大な力を持ち、例え魔物が群で向かって来ても決して挫ける事無く、戦い続ける無欠の兵士。クローゼル国内で今だ魔物の被害が現状の程度に収まっているのはゴーレムを数百と同時に操るカレラのおかげと言っていい。だがそれでも徐々に魔物の進行を押さえられなくなっている…。


「ひぃぃぃ!バケモノ!あっちへ行け!」


ゴーレム(だから貴様があっちへ行け!邪魔だから!)


ゴーレムを通してカレラが語りかける相手は一般の住人だ。何とかカレラは非難を誘導しようとするが恐怖のあまり錯乱してしまい話が通じない。


クローゼル兵「くそ!魔物め!その人を離せ!でやぁぁ!」


ゴーレム(あいて!…だから!我は魔物では無いといってるだろうが!お前が戦う相手はあっちの方だ!…ってお前!そっちへ行くな!魔物が来てるだろうが!あーもう!貴様らいい加減に…)


そこでふと目をやると混乱に乗じて食べ物や金品を抱える者達の一団が見える。どうやらこの土地の者では無さそうだ。話に聞いていた「すからる」とか言う者共か。正直それに関してはどうでもいい。問題はその盗人とそれを目撃したこの土地の者が争い始めたことだ。


スカラル兵「俺たちがお前たちを守ってやってるんだろうが!そこをどけ!」


クローゼル兵「お前ら!その手に抱えてる物を見てよくそんな台詞が吐けるものだ!恥を知れ!」


冗談だろ?魔物が襲って来てるんだぞ?馬鹿なのかこいつらは?もういっその事全員まとめて縛り上げて抱えて運ぶ方が楽かもしれん。そんな事を考えるのも束の間、強大な魔物の気配を感じた。これはゴーレムでは無理だ。あの生意気な勇者を向かわせるしかない。


そこで言い争っていたヒト共が剣を抜き、斬り合いを始めたのだ!その瞬間


ブチっ


カレラの中の何かが切れた。


ゴーレム(貴様らぁ!もう我慢ならん!“シードバレット”!)


ゴーレムが手を地面に当てると、身の丈程ある巨大な植物が突如として生え、蕾の部分から弾丸のような物を発射し始めた。弾は人々の眉間に次々命中し、気絶させてゆく…誰も死んではいない。カレラは魔法の威力を抑えていた。


ゴーレム(そして!“グロウアップ”!!)


気絶した人々の額に張り付いた弾丸は植物の種。カレラが次なる魔法を唱えると種は急速に成長し、蔦が頭部に巻きついた。この植物は寄生植物“アヤツリソウ”。動物に巻きつき、自身が繁殖しやすい場所に運ばせるといる性質を持った変わった植物だ。アヤツリソウが巻きついた人々はフラフラと立ち上がりカレラの思うがままにひとところを目指し歩き始めた。


ゴーレム(魔物に対して少しは戦力になるかと思ったがこいつらは駄目だ!よし!決めた!せめて守りやすいようにニーヴェルン様の下に集める事にしよう!)

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