再開と邂逅
「キュエエエオオオォォォォォ!」
再び魔物は叫び激しくその巨大な体をよじる。どうやら形態を変化させているみたいだ。そうやってる間にクリスタル・ビーストはあっけなく子機魔物の最後の一匹を吸収し戻ってきた。
ニーヴェルン『よし!これで邪魔者は無くなったね。ヘイリィちゃん!』
ヘイリィ「は…はははいぃぃぃ!」
戦いが始まって完全に思考停止し硬直していたヘイリィが混乱交じりに返事する。
ニーヴェルン『こいつは私が倒すからお姉さんを探して!生きてそう??』
ヘイリィ「は…たぶん…あっちの方向に感じる。きっと…生きてる!」
ニーヴェルン『いいね!急いで行ったげて!ここはあたしにまかせろぃ!』
ヘイリィ「は…はい!」
ポミュ「ポミュは~??」
ニーヴェルン『あなたはここいてもしょうがないしヘイリィちゃんと一緒に!ってかあんた結構力あげたのに何か役に立ちなさいな!』
ポミュ「う…ぐぅの音も出ない…わかったぁ!」
なんて気の抜ける返事…ほんとにわかってんのかな?まぁいいや。ヘイリィちゃんも勇者として力を与えたし。ゆーてそこらの雑魚相手だったらその気になれば何とかなるでしょ!
それにしてもこの魔物。ぱっと見超雑魚。さっきの攻撃見ても取るに足らないように思うけど…。なんか変な感じ…。以前ロイ君達と戦った…。スカラルを飲み込んだあの魔物と似てる。奴にもこいつにもわずかに魔力の混ぜ物の臭いがする。倒す前に少し調べたほうがよさそうだ。
魔物は体をくねらせ、その形状はどんどん変化していた。
元は例えがたいが…無数にある触手と大きく裂けた口だけのいびつな形をしていた。それが今はまるで魚のようなシルエットに鋭い角が一本。まるで地球で見たイッカクと呼ばれるクジラのようだ。
魔物「グググ…キサマ…ヤハリ…ワレラガハハ二…アダナス…ソンザイ…」
ニーヴェルン『おーやおや、魔物の分際で喋りなすった。我らが母?アヘンって奴かね?女神を名乗ってるらしいがどこの馬の骨だい?』
魔物「オオ…アヘンサマ…チカラヲ…ジャアクナル…ドクフヲタオス…チカラヲワレニ…シノキュウサイヲ…」
ニーヴェルン『話になんないね。カタコト過ぎて聞き取りくいんじゃボケが!
よーくわかった!会話は無理!さっさと無力化してじっくり調べてあげるから覚悟しなさい!』
魔物は角をこちらに向けて突進してくる。
ニーヴェルン『クリスタル・ビースト!小規模解放』
クリスタル・ビーストはその体内に吸収したエネルギーを小規模の爆発に変え、魔物の周囲を高速で旋回する。小規模とは言えその威力はすさまじく魔物の体積をみるみる削り、痛みに耐え兼ねるのか悲鳴をあげる。
…魔物が悲鳴をあげるか…。本当になんなんだこいつ。
成す術無く、体の半分近くが瓦解した魔物はそれでもなお向かってくる。もしこれが通常の魔物ならわかる。通常の魔物なら命に反応して襲い掛かる、単純で機械的な反応しかない。
ますますわからないね。思考ができ、言葉を話す魔物が今の力量差を見せつけられてなお向かってくる…って、それなら思考の価値が無い。もっと原始的な生き物でさえ生存本能に駆られ逃げるという選択肢をとるはずだ。こいつらの存在は明らかに人為的。聞いたことも無い。死の女神アヘン…何者だ?
魔物「アアアアアアァァァァァァァァァ!」
ニーヴェルン『兎も角!お前にはそろそろおとなしくなってもらおうか!
クリスタル・ビースト全開放!クリスタル・プリズン!!』
クリスタル・ビーストは勢いよく魔物に突撃し、魔物に激突した。その瞬間、魔物の体は黒水晶に覆われその動きは完全に静止した。
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私はきっと夢をみてるんだ。
混乱した頭はたった今、現在進行形で起こっている出来事を整理できていない。色々な事がありすぎて自分が見たものが信じられないよ…。私たちを襲った魔物。出会った神様。勇者の力(?)。そして魔物を圧倒する奇跡の力…。頭がグルグルする…。
ポミュ「混乱するのも無理ないよ~ママすご過ぎ~」
ヘイリィ「もう駄目です…。頭が…ついていけなくて…」
ポミュ「だよねだよね~!もうここまでくると頭空っぽにしたほうが早いよ~?」
ヘイリィ「ええ…そうします…」
そんなやり取りをしていると占いで見た光景が近づく、ほの暗い海底に沈む大きな沈没船が見える。ここで占いの光景が途切れる…。きっとここにお姉ちゃんが隠れているはずだ!
ヘイリィ「ここ!ここです!きっとここにお姉ちゃんが…お姉ちゃ~ん!お姉ちゃ~~~ん!!」
ウェンリィ(バ…バカ!こっち!早くこっちに来なさい!)
すると沈没船の中から手招きする一人の半魚族の姿が見えた…お姉ちゃん!よかった無事だったんだ!急いでお姉ちゃんのもとに向かう。
ウェンリィ「ヘイリィ!バカ!あんな大声上げて!魔物に見つかったらどうするの!そもそもあんたなんで戻ってきたの!」
ヘイリィ「う…お姉ちゃん…よかった無事で…うあぁぁぁん」
ウェンリィ「だからシィ!シィィ!…もう!あんたって子は…」
呆れた表情で私の頭をなでるお姉ちゃん。無事だったんだ。心の底から安心するととめどなく涙が溢れる。さっきまではこれが夢であってほしいと思ったが今はそうは思わない。
ウェンリィ「そうだ!あんたケガ!ケガは!?」
ヘイリィ「グス…大丈夫だよ…治してもらったの」
ウェンリィ「よかった…あんたのケガだけ心配だったんだ…本当に良かった…でもあんたバカだね…せっかく助かったのに戻ってくるなんて…」
ヘイリィ「うぅ…ごめんなさいお姉ちゃん。ごめんなさい」
ウェンリィ「よしよし…わかったわかった…さて、生還は諦めてたけど、バカな妹のせいで是が非でも生きて帰らなきゃね!」
ヘイリィ「うん!…グス…」
ウェンリィ「うん!さて…あいつに見つからないようにどうやって帰るか…」
ポミュ「ダイジョブ~ママがあいつ倒してくれるから安心して帰れるよ~」
ウェンリィ「ん?」
ポミュ「ここまで他の魔物の気配も無かったから~ヘイリィちゃんも無事に来れたんだよ~」
ウェンリィ「んん??へ…ヘイリィ…あんた…この喋る変な魚…知り合い??」
ポミュ「変とは失礼~www」
ヘイリィ「え…えっと」
ポミュ「そ~いえば自己紹介まだだったね~ボクはポミュだよ~」
ヘイリィ「ポミュ…さん…は…
魚なのになんで喋ってるんですか?」
ポミュ「今更かーーーーーーーーい!!!!!!」
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…
……
………
海底に転がる黒水晶に覆われた魔物。半分以下の体積になったとは言え、その大きさはまさに厄災とも呼べるほどの巨大さを誇る。そんな魔物も今や完全に静止している。まるで時が止まったかのような静寂。おそらく魔物自身、現在自分がどんな状況にあるのかも理解できないだろう。
魔物に死という概念は無い。そもそも魔物とは、怒りや絶望などと言ったネガティブなエネルギーに極度に侵された魂の集合体が、何らかの要素で受肉した存在だ。受肉の経緯は状況によって様々だが、今ニーヴェルンの目前に転がる魔物は明らかに自然に発生した存在とは考えにくい。
このまま消滅させればこの地に大量のマナが還元されるだろう。ネガティブエネルギーで汚れた魂たちを一刻も早く解放してあげたい気持ちもあるが、その前にどうしてもこの魔物について調べる必要がある。
ニーヴェルン『ごめんね。もう少し我慢してほしい。きっと悪いようにはしないから…』
そうつぶやくニーヴェルンは内心胸が締め付けられるような思いだった。もちろん魔物の存在は神にとって許されざる世界のバグ。全力をもって滅ぼすべき対象である。
だがその魂に罪はない。怒りも憎しみも恨みも悲しみの絶望も…全ての命はネガティブな感情もポジティブな感情も抱くことが許される。それが命を生きるという事だ。
この魔物が偶然によるものでは無く、意図的に誰かに産み出されたものであるとするならば本来浄化され、世界の輪廻に還るはずだった魂を無理やり縛り付け、冒涜し、利用しているという事になる。
ニーヴェルン『誰だか知らないけど…絶対に許さない…』
???『フフフ…こわいこわい…さすが居眠りを司る神は迫力が違うわ』
ニーヴェルン『誰だ!?』
静止する魔物を通して擦れた声が聞こえる。
???『さぁ…誰でしょうね?』
ニーヴェルン『私に喧嘩売るなんていい度胸じゃないのアヘンとやら』
アヘン『あら!私の名前をよ~く覚える事ができましたね~偉い偉い』
ニーヴェルン『そんなやっすい挑発に乗るわけないでしょ。そんな事よりあんた…自分が何してるかわかってる訳?』
アヘン『貴女こそ~、私がそんな浅い探りに答えるわけないでしょ?』
ニーヴェルン『テメェ…』
我慢の限界とばかりにニーヴェルンの周囲にいくつもの強力な渦潮が巻き起こる。
アヘン『ほ~んと短気な女ね。私はあんたにかまってる暇な~いの。私の可愛いオモチャ返して貰えればあんたなんかに用なんて無いわ』
そう言い終わると魔物の体が異空間へと吸い出される。
ニーヴェルン『させるか!』
急ぎ魔物の体を空間に固定させようとするがアヘンが開いた異次元門はニーヴェルンの干渉を無効化し魔物を取り込んだ。
ニーヴェルン『…チッ…』
アヘン『それではごきげんよう。また会いましょ?女神ニーヴェルン』
そう言うと声は途切れ、気配は消え去った。
ニーヴェルン『必ず見つけ出し…ぶっ殺す!!』




