表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/132

第33話 メモリア=グレイヴ、記憶を喰らう歪核(わいかく)

第33話 メモリア=グレイヴ、記憶を喰らう歪核わいかく


「……ここが、記憶を統べる歪核……」


ユイの呟きが、静寂に包まれた空間に響いた。


そこは、「記憶冠〈クラウナ・メモリア〉」の中でも最深部とされる領域――時間も光も概念すら曖昧な、透き通った琥珀のような空間。浮かぶ破片の一つひとつが、かつて誰かが忘れた記憶の残骸であり、そこに刻まれた言葉や映像が、淡く光を放っていた。


しかしその中心に、不気味な黒紫色の渦が存在していた。


「歪核――メモリア=グレイヴ……」


夢境整序機関・第五位とされる存在。その姿は人でもなく、獣でもなく、ただ黒い歪みでできた巨大な塊であった。だが、その中心にだけ、人間のような瞳がひとつ、静かにユイたちを見つめていた。


「来たか。記憶にすがる未生の者たちよ……」


不協和音のような声が響き渡る。低く、震えるようでいて、どこか悲しみに満ちていた。


---


「警戒して、ユイ!」如月龍一が前に出る。「こいつは……俺たちの記憶にまで干渉してくる!」


「記憶を喰らう存在、だって?」白鳥秀樹が宙に浮かぶ青き弓を構える。「だったら、俺たちの絆も奪えるとでも?」


「そんなの、させるわけない!」稲森晴佳の手から放たれた光が、歪核の周囲に結界を張る。


ユイはゆっくり前へと進んだ。黒紫の渦の奥に、かすかに何かが――幼い頃の自分の記憶が――蠢いている気がした。


(これは……私の……?)


ふと、頭の中に「誰かの声」が流れ込んできた。


――ユイ、もし記憶をすべて喪っても、それでも“自分”を信じて。


それは、母の声だった。


---


「メモリア=グレイヴ……あなたは記憶を喰らい、捻じ曲げてきた。でも、なぜそんなことを?」


ユイの問いに、黒き存在が一瞬だけ揺れた。


「……“忘却”は、祝福だ」


「え?」


「人が苦しむのは、思い出すからだ。痛みを、悔いを、喪失を。ならば――最初から、思い出させなければいい」


それは、どこか哀れな信念だった。まるで記憶に縛られた誰かが、自らの痛みを封じるために生み出した“歪んだ救済”。


「……あなたは、誰かの“後悔”なのね」


ユイの言葉に、メモリア=グレイヴの瞳がわずかに揺れた。


「私たちは、忘れたくない。たとえ痛みがあっても、記憶は私たちが“誰か”である証だから!」


「……ならば――証明してみせよ。記憶を護る力を」


---


渦が動いた。記憶の断片が砕け、嵐となってユイたちに襲いかかる。


「くっ……!」


「翔けろ、風煌翔陣・真形!」


ユイが放つ新たな風が、記憶の破片を包み込み、解きほぐすように優しく吹き抜ける。


同時に、星座戦士たちが一斉に力を解き放つ。


「アストラル・シンクロナイズ!」


五芒星のような陣が天空に描かれ、白鳥、如月、稲森、そして空から再び現れた立川建真と朝比奈功輔の力が集束する。


「風よ、記憶よ、共に未来へ!」


ユイの声が空に響いた瞬間、渦の中心に巨大な光が突き刺さる。


「――ああああああああっ!」


悲痛な叫びと共に、メモリア=グレイヴの瞳が崩れ、黒き渦が静かに収束していった。


---


静寂が戻った。


ユイたちの前に、一つの小さな光の結晶が浮かんでいた。それは、記憶の核心――「夢の記録石〈レコード・ユヌ〉」。


「これが……私たちの記憶のかけら……」


ユイはそれを胸に抱いた。歪核との戦いを越えて、今、ひとつの扉が開かれようとしていた。


「まだ終わりじゃない。私たちの旅も、答えも……」


だがその時――空に、新たな影が差す。


六枚の呪われし翼、黄金の瞳――


「やはり来たな、獄獣王バルザ=クライムス……!」


冷たい声が、再び世界に災厄を告げる。


つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ