第2章 第8話 死なないでよお願いだから
223/02/12 23:30
ギルドフォレストセイバー
セプテ家の部屋
ミナ視点
レイキさんが血を吐いて倒れた。
「嫌だ、死なないで」
数刻前、彼の右腕を切り落としたわたくしの発言とは思えない。
だけど死んで欲しくなかったのです。
わたくしが撒いた種により、すれ違いを起こした。
「息が、止まってる!」
わたくしは、慌ててフェニックスの能力。『超回復』をレイキさんに使う。
それなのに変化が見られない。
「どうして、どうして回復しないんですが!」
もう手遅れなのか。レイキさんは息を吹き返してくれません。
それどころか、回復が殆ど効いていない様子。
「スー。……っ!」
わたくしは人工呼吸で、空気をレイキさんに届ける。必死にキスよりも長く口づけをし、普段の呼吸よりも多めに息を吐く。
「……ぅ」
少しだけ反応があったので、涙が溢れてくる。
「ああ、ああああ!」
言語を失う程歓喜したわたくし。
レイキさんが息を吹き返してくれた。
ですが、目を覚ましてくれません。
「身体に蓄積したダメージのせいでしょうか?」
わたくしの力なら死後15分以内であれば。蘇生することが出来ます。
それなのにどうして起きないの?
「本当に寿命なのですか?嫌ですよ、わたくしを置いて行くなんて。……許しませんわ」
許しませんと言ったが。
むしろ私は、許される側でしたね。
「ごめんねミナのせいで」
レイキさんにしか見せない態度。
起きない彼に甘えるのはどうかと思いますが。
この現実が辛過ぎたので。
甘えたかったのです。
「でも、このままじゃ死んじゃうね」
ずっと独りで声を出してます。
彼の返事が返ってくる事を期待して。
「レイ君」
頬と頬を繋げてスリスリと擦る。
いつもの様に甘える声で。
それでも目を開けてもらえず。
「どうすればいいのよ!」
根本的な問題を解決しなければ。
いずれまた、先程の様に血を吐いて倒れるでしょう。
身体の異常を取り除かなければ。
「どこが悪いのか分からないよ」
彼の身体に水滴を落とす。
今は、それしか出来ないのです。
神様が居るのでしたら。わたくしの寿命を全て捧げますので、レイキさんを治して欲しいです。
「本邸に行けば、何か有りますかね」
『セプテ家の本邸』そこはフェニックス王国の北に有ります。海を越えたその先に、かつてお父様がミプリヴァリナーの研究を行なっていた場所。
そこに行けばレイキさんを長く生きさせる方法が分かるかもしれません。
「考える暇は有りませんね」
わたくしは、翼を生やして。レイキさんをしっかりと抱え込み、ギルドの屋上へと向かう。
屋上に着き。いざ飛び立とうとしましたが。
「誰にもバレずに外へ行くには……いや無理ですわね」
ふと冷静になり思い出す。
この町は城壁に囲まれている。
魔物の侵入を防ぐためです。
そこには見張りのソルジャーが居ます。
「口止めしないといけませんわ」
わたくしは見張りの方が居る所まで飛んだ。
見覚えの有る銀髪の槍使い、シルヴァさんが居た。
「よぉミナ、どうしたんだよ!親友の腕が無いじゃないか!」
「事情は後ほど説明します。ただこの事は黙っていて下さい」
深々と頭を下げ、頼み込む。
「何があったか知らないが、時間がねぇんだろ。分かったぜ、俺様は何も見ていない。これでいいんだろう」
意外にあっさりと了承されたので、少し驚きましたが。
「助かります。後ほどしっかりと説明します」
「分かったから早く行け」
「はい!」
わたくしは、セプテ家の本邸へと向った。
「夜は寒いですね、寒いのは苦手ですが。レイ君の為ならわたくしは飛べる」
夜空に煌めく星を眺めながら。本邸へと急ぐ。
昔こうやってデートした事を思い出す。
「また起きたら連れていきますね」
涙が出そうだが我慢する。
両手がレイキさんをおぶって塞がってるから。
「ちゃんと運ぶからね」
それから約3時間かけてレイキさんを背負い、わたくしはセプテ家の本邸に飛んできた。
静寂の海を越えてようやく着いた孤島群。
その中にセプテ家の本邸がある。
「まだ設備は……生きてますね」
最後に来たのは7年くらい前だろうか。
誰もいないその空間に灯りを灯して言う。
「確か、何かの液に浸されたことがありましたね。それを使えばきっとレイキさんも良くなる可能性がありますわ」
人1人分入るカプセルに、レイキさんを入れ。
稼働の準備をする。
本当に静かな空間、人が居なければ魔物も存在しない。この異質な空間。
「待っていてくださいね。必ず、ミナが助けますから!」
準備が整い、魔力からなる動力を起動させる。
すると、緑色の液体がレイキさんを包むように流れていく。
「きっと大丈夫だよね?」
つい不安で口走るわたくし。
本来なら様子をきちんと見たい。でも、ギルドに戻らなければならない。
レイキさん不在の中、ギルドを守るのはわたくしの役目だから。
「レイキさんがいない間、しっかりとギルドを守りますね。」
カプセルのガラス越しに決意を告げる。
「愛してますわ」
出来る限りの想いを込めたその言葉。
カプセル越しにキスをし、翼を広げ飛び立った。
「すぐに迎えに来るからね」
223/02/13 6:30
ギルドフォレストセイバー
食堂
アイカ視点
「昨日は本当に色々あったな。」
裏山でアミュレットデバイスを起動させた魔物。度が過ぎる夫婦喧嘩。レイナがギルドを辞めたいと言ったこと。
「なんで次から次に」
帰ってきたばかりなのに、心が休まらない。
「全然寝れなかった」
レイナがギルドを辞めたいと言って。正直俺も辞めようかと思ったからだ。
レイナがこれからどうするか知らないが。俺は応援したいと思う。それに、レイナの側にいたいのだ。
「そんな資格すら無いけどな」
造られた人間……いやそれも不確定情報。
カプリシアスのバトルドール?だったっけな。正直分からない。
「頭が痛いよ」
1人で朝食を食べながらうなだれていると。
「どうしたのよそんな辛気臭い顔をして」
普段通りのレイナが俺の前に座った。
もう元気になったみたいで、俺は安心した。
「あ、おはようレイナ」
「うん、おはよう。所でどうしたの、辛そうな顔をして?」
パンをもぐもぐと食べながら言うレイナ。
「いや、ちょっとね」
君の事で悩んでる……なんて言えないよな。
「ちゃんと寝た?クマが出来てるわよ」
今日は鏡を見ていないから分からない。
「マジで?寝たんだけどな」
柄にもない誤魔化し方をする俺。
「ちゃんと寝ないと駄目だよ。お肌に悪いし」
そう言うレイナは、凄く幸せそうだった。
「なんか良いことあったの?」
俺が聞くと、頬を赤く染めて。
「お兄ちゃんにキスしちゃた」
「うぐっ!」
驚きで思わず朝食のパンを詰まらせる。
牛乳を一気に飲み干し、息を整える。
「ちょっと、驚きすぎでしょう」
「いやいや、驚くだろうが」
「あたしがお兄ちゃんの事好きなの知ってるでしょう」
「いや、キスする程度に好きなんて思わないだろ」
その言葉を聞き、顔を暗くするレイナ。
「やっぱり気持ち悪いよね」
昨夜の様な、暗いオーラを纏うレイナ。
「いや、そうじゃないよ。ごめん言葉足らずで」
「いや、いいんだよ。世間的に実の兄に恋する妹って……ダメだからね」
「本当にごめん、そんな事言わせたかった訳じゃないんだ」
「あたしこそごめん。勝手に暗くなっちゃて」
少し気不味い空気が流れる。
「まあ、レイナと最後に話せて良かったよ」
俺が言うと。目を丸くするレイナ。
「えっ、何?最後ってどうゆう事?」
不思議そうな顔をする彼女に俺は、
「えっ。昨日の夜に、ギルド辞めるって言ってたじゃん」
そう言うと笑顔で。
「あれはもうやめたよ。やめるのをやめたって奴だね」
「なんだよー、心配させやがってよ。」
内心喜んだ俺。
その顔が出ていたのかレイナが。
「あれれ!あたしがギルドやめないで嬉しそうだね」
とクスクス笑う。
その顔に安心した俺も笑顔で。
「本当だよ」




