第2章 第7話 ミナが可哀想という妹
おまたせしました!
223/02/12 23:00
ギルドフォレストセイバー
ギルド長室
レイキ視点
レイナの秘密を打ち明けられた。
そのお返しに、俺もレイナに秘密を打ち明けた。
今日の出来事。何故そうなったのか。
ミナの呪いについて、俺が知っている事。
全部を話す事は出来なかった。
もう少しだけ時間が欲しい。
特に俺の寿命の事。カプリシアスの事は。
それに今日の事でミナに敵意を持って欲しくなく。
俺はレイナに、出来る限り俺が悪く聞こえるように。話を誇張して伝えた。
「ミナ姉ぇが可哀想だよ!」
俺の話を聞き、涙ながらに言うレイナ。
良かった。いつもの呼び方に戻ってる。
「だから俺は隠してるんだ」
「違うよ。隠されてる事を含めて可哀想って言ってんのよ」
「そうかもだけど」
「お兄ちゃんって。本当に自分だけが傷付けば、それで解決って思ってるのね」
もしかして誇張したのがバレたか?
「そうかもな」
動じずに、普通に返す。
「そのせいで、すれ違ったんだよ。ミナ姉ぇも辛いのに、あたし。あたし」
顔を押さえるレイナ。
「何も知らずに最低だ」
うつむくその頭を撫でてやる。
「俺が悪かったんだよ。ミナにも今レイナに伝えた話をしてくる。その後どうなるか分からないがな」
サラサラの金の髪を撫で。
不意に俺は思った事を口に出す。
「大きくなったな」
「もう子供じゃないんだよ」
「そうだな」
俺から抱きしめてあげる。
「ごめんな。こんな兄で」
「あたしこそ。こんな妹でごめん」
しばらく抱擁を続け。
「お兄ちゃん、ありがとう」
レイナが離れて、唇の端だけで小さく笑った。
「まだギルド、辞めないから。またよろしくね」
差し出された小さな手を俺は握り返す。
「ミナ姉ぇと、ちゃんと仲直りしてよ。クレアとアオイにも謝りなさい」
「分かったよ」
「じゃあね。今日はもう遅いから、寝る。おやすみ、お兄ちゃん」
そう言って、レイナは軽く頬にキスを落とし、足音を残して部屋を出て行った。
「またミナに隠し事増えたな」
ポツリと呟き。俺は思い出す。
「シアに報告書渡してなかった!」
俺は通信を入れ。
シアに机の上に置いておくからお願い。
そう伝え。俺は出来るだけ急いで部屋に戻った。
223/02/12 23:30
ギルドフォレストセイバー
セプテ家の部屋
レイキ視点
部屋に戻ると。ミナが椅子に突っ伏していた。
「ずいぶんと遅かったですね」
起き上がり普段通りの口調で言うミナ。
少しは落ち着いたのだろうか、良かった。
「ああ。少し手間取ってね。クレアとアオイは?」
「お二人ならお姉様が今日は部屋に泊めると」
「そうか」
ミナの前に座る。
「ミナに大事な話がある」
俺が言うと静かに瞳を向け。
「離婚するのでしたら。わたくしを殺してくださいね」
不敵に笑うミナ。
落ち着いてるかと思ったが。
もう心が壊れかかってるのだろう。
俺のせいでこうなったのだからどうにかしたい。
「そうじゃないよ。それに離婚はしたくない」
俺は冷静に続ける。
「ミナがどうして。1度失ったフェニックスの力を再び手に入れたかについてだよ」
力を失った時に言われたセリフ。
『これでレイ君を傷つけなくて済むね』
そう言っていたミナの笑顔を思い出し。少し涙が出てきた。
「どうして泣いていますの?」
「ああ。俺が悪いんだよ。全部俺がな」
嘘を付いていたんだ。
今更後悔と懺悔の気持ちが芽生える。
「レイキさんは悪くないですよ。すべては──」
「良いから聞いて」
俺が割り込むと、静かに頷くミナ。
素手で涙を拭い続ける。
「カプリシアスとセントラルタワーで戦った時の事憶えてる?」
セントラルタワー。
大陸中央、山々に囲まれた秘境の塔。
誰が、何のために作ったのかは分かっていない。
クレアとアオイが産まれる1年前の事。
カプリシアスと理由あって戦った場所だ。
「ちゃんと憶えていますが。それがどうかしましたか?」
「ミナはそこで、1度死んだんだよ」
俺の目の前で殺された。
「でもレイキさんが回復させてくれたので、死んでないのでは」
静かに俺は、首を横に振り。
「いいや死んだんだよ。俺を庇い攻撃を受けて死んだ」
その時の光景が頭に流れ、涙を流してしまう。
フェニックスの力を失ってる時にミナが殺された。
鮮血が俺に降り注ぎ俺は叫んだ。
その後によく覚えてないが。カプリシアスを無力化した。
そしたら俺に言うんだよ。
『まだ死ぬ訳にいかない。そうだ!あなたの寿命、これで延びるよ』
そう言って黒色の飴みたいな物を手渡された。
‘‘アビリティコア‘‘ 、ミプリヴァリナーや一般人にも少なからずある特殊能力を、具現化したものだと。
渡されたのはフェニックスのアビリティコア。
呪いは残ってるけど。これで長生き出来るって。
だから見逃してと。
受け取った後。速攻でミナに入れたよ。
手遅れかもしれないが。ミナが蘇るならそれが1番幸せだった。
「俺がカプリシアスにフェニックスの力をよこせって言ったんだ」
その後目覚めたミナに俺は、カプリシアスを倒したから力が戻ったと嘘を付いた。
そのおかげで助かったんだと。
呪いから解放されて喜んでいた笑顔を知っていたのに。
ミナに重い十字架を再び背負わせたんだ。
「嘘だよね」
瞳をぶるぶると震わせるミナ。
「嘘じゃないよ」
はっきりと俺が言うと。
「なんで、なんでなのよ!」
拳を強く握り身体全体が震え出すミナ。
「そうするしかミナを助ける方法が思いつかなかったんだよ」
「うるさい!」
ミナは、机をひっくり返し。
そのまま俺を押し倒した。
「ミナがこの力のせいで!どれだけ悩んでいたと思うのよ!」
拳を高くあげるミナ。
「分かったよ。気の済むまで殴ってくれ」
「あなたのそういう所」
拳が勢い良く迫り。俺は目を閉じる。
しかし。
俺の頭の左側に逸れる拳。
「大嫌いよ」
気付けば大粒の涙を流すミナ。
泣きたいのは俺も、大嫌いって言われたから。
「どうして嘘を付いていたのよ!」
「俺がミナにフェニックスの力を、また与えてしまったんだ。呪いから解放されて喜んでいた君に、そんな事が言える訳無いだろう」
ミナの涙を左手で拭う。
「その事がずっと、うしろめたかったんだよ。だからミナをからかい。ワザと暴走を誘ったりしてたんだ」
俺がミナとの関係で優位に立つため。
ミナの弱味を握っておきたかった。
だってミナは優しいから。
ちゃんと謝ってくれるのだから。
本当に俺って最低だよな。
「ふざけないでよ!」
髪の毛を思いっ切り引っ張られ。顔を近くにやられた。
だが俺は動じない。
「でもね。暴走を誘ったのは、それだけじゃないんだよ」
俺が言うと、更に怖い顔で睨むミナ。
その瞳を俺も見つめ返し。
「俺の寿命を延ばすため。……効果があるか知らないが。ミナが俺を回復する度に。他の身体の不調が全部治っていたんだよ」
伝えきった。
過去の件と俺の思惑を。
「それが本音なのね」
手を離し俺を解放するミナ。
ゆっくりと刀に手を掛ける。
「感情がコントロール出来ませんわ」
本格的に暴走する手前なのだろう。
汗をかき、呼吸がやや乱れ始めていた。
「この際だからついでに言わせてもらう」
刀を持ったミナの腕を掴み。
斬られないようにしてから。
「さっきはナミの前だから言えなかったが」
深く深呼吸をする。
そして。
「お前が変に、アミュレットデバイスをイジったせいで。クレアとアオイを危うく、殺すとこだっただろうが!」
怒号を怨みを込めて畳み掛ける。
「今は辞めてください。暴走しそうだから」
いつもは勝手にするくせに。なにを今更。
「もうしてるだろうが!ミナは良いよな。絶対に許してくれる旦那に暴走出来てよ」
片腕しかないのは不便だ。
左手のみでミナを押さえつけ。
「何されても許してやる。だけど娘を巻き込むな!」
急に黙り込むミナ。
「おかげで娘に嫌われちまっただろうが!どうしてくれるんだよ」
俺の瞳から赤い涙が滴る。
先程と反対の構図になっていた。
「ミナに似て可愛い娘達なんだよ。なんで殺しかけなくちゃいけないんだよ」
ミナの髪を掴む。
「俺はただ。家族皆で幸せに暮らしたいだけ。ただそれなのに」
俺は髪を掴んだまま立ち上がり。そのままミナを引き寄せる。
「や、やめて」
痛がり。怯えた表情で俺を見るミナ。
暴走しかけていたのが嘘みたいだ。
むしろ俺の方が。
「そんな俺の気持ちを踏み躙りやがってよ!」
物を投げ捨てる様にミナを放り投げる。
「キャッ」
そして思い出した。ポケットに例のアミュレットデバイスが入っていたな。
「こいつのせいで!」
感情が溢れ出すのを抑えきれず。ミナに思いっ切り投げつけた。
六芒星型のデバイスがくるくると弧を描き。
ミナの顔をかすめ。床に落ちる。
「ッ」
ミナの反応は、部屋に響く金属音に掻き消され、右目から血を流すミナ。
「ミナ、お前のアミュレットデバイスよこせよ」
ミナの身体を弄り、アミュレットデバイスを探す。
「やめて。なにをする気ですか」
いつもなら俺よりも力が強いクセに。
なぜだか無抵抗のミナ。
俺は構わず手当たり次第に探す。
「どうせお前のデバイスに、自爆するシステムが組み込まれてるんだろ。俺もそれを使う」
「だ、駄目ですよ。そんな事しないで」
「なら取られないように、抵抗しろよな」
無抵抗過ぎてつまらない。
なので腹部に拳を入れようとした。
けど当たらなかった。
急に距離感が分からなくなる。
視界もぼやける。
「おかしいな」
1度床に膝を付いて。呼吸等を整える。
けど。どんどん異変が増していく。
「おかしいのはレイキさんですよ」
赤い瞳で俺を見つめる。
その右目は、まだ治っていない。
「血が、身体中から漏れてるの。気付いてないんですか」
「何言って?」
そんな訳無いだろう。
そう思いながら目を擦った。
すると手が赤く染まる。
身体を見ると全部赤い。
おかしいな。
「なん、で。ゴボォ!!」
言いながら血を吐いた。
「れ、レイキさん!」
ミナの不安な声が聞こえる。
けどどこに居るのか分からない。
「しっかりして下さい」
俺を必死に揺さぶるミナ。
なんだ。まだ完全に嫌われてないようだな。
「愛してる」
そう言い残し。
視界がやんわりと歪みだす。
俺の存在を掻き消すかのように。
もうどうでも良い事だ。
無から生まれて無に還る。
その時が来たようだ。
「嫌だ、死なないで」
愛しの彼女の声に包まれながら。
俺は全てを諦めて目を閉じた。




