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4話 ジュンと隼人

 澪はアフレコブースにいた。前方にはモニター、その手前にマイク。出番のたびに入れ替わりでマイクの前に立つ。春から始まるテレビアニメ「超常現象依頼記録書」の第十一話、最終回の一話前を収録している。小説原作の現代ファンタジーで、澪が演じるのは主人公のジュン。外見は十五歳くらいなのに中身は四十代という役柄だった。


 今作はいわゆる怪異ものに当たり、普通の人間には見えない人ならざる者が登場する。訳あってこの世界に足を踏み入れたジュンは、オカルト的な相談を受けて報酬を得ていた。智紀演じる霊感体質の大学生・隼人と出会ってからは、二人で様々な依頼に立ち向かう。


 アニメは基本的に一話完結式だった。導入、問題発生、解決とテンポ良く進む。

 アフレコはテストとして一回通し、ディレクションを受けて本番に挑み、それからリテイク部分を録る。今はテスト中。アフレコ時の映像完成度は作品によりけりで、あまりできていない場合も多いが、この作品はほとんど仕上がっていた。アフレコも含めて今月中には全て完了する見込みだ。


 モニターが古びたビルの一室を映す。テーブルにソファー、書類棚など、必要最小限の設備しかない殺風景な部屋。隼人はここにやってくるなり、ズボンのポケットから物を落とした。ジュンが拾い上げる。

「『なんか落としたぞ……お、二十歳になってすぐに喫煙か』」

「『ああこれ、友達に勧められたけど微妙だった。一本でギブ』」

 智紀から発せられるのは、成人男性の落ち着きと学生らしさが共存した声。低音でありながらほどよく軽い。智紀も澪と同じジュン役で受けていたのだが、こういう引き出しも持っている。

「『別に無理して嗜むものじゃないしな』」

 すると隼人は煙草とジュンを見比べて、煙草の箱を突き返した。

「『いる?』」

「『なんで』」

「『いや吸いたそうにしてたから』」

「『吸えると思うか?』」

「『完全に成長が止まったわけじゃないから、アウト寄りのセーフかと』」

「『完全なるアウトだよ。俺がお前と同い年に見える? 見えないだろ』」

 ジュンはある時期を境に成長速度が遅くなった。常人の十年間がジュンにとってはたったの一年ほどだ。

「『それはそうだけど』」

「『そのお友達にあげれば。ありがたく頂戴するだろうよ』」

 隼人に煙草を突き返したところで呼び鈴が鳴る。

「『はーい』」

 澪がジュンとして返事をする頃には、横に沙耶が並んでいた。

「『すみません。昨日連絡した者です……』」

 おとなしそうな女性は今回の依頼主だ。客人としてソファーに通してからは依頼説明が話の中心となった。

 依頼主は自室で撮った覚えのない写真を見つけた。どれも自分一人しか写っていないが、明らかに二人で撮った構図のものばかり。この謎を解いてほしいという内容だった。


 Aパートを通すとディレクションが行われた。調整室から音響監督が指示を送る。

『五十カットから六十カット。隼人はもっと何気なくお願いします。ジュンは吸えないことを気にしている点を若干強調してください』

「はい」

「はい」

 澪と智紀の声が重なる。序盤の煙草のシーンだった。あそこでジュンは断りながらも気にしていた。だからこそ直後に「お友達」と出てくる。「お」をつける理由は皮肉であり自虐だ。自分と隼人の時間の流れは違うと突き付けられたから。本人に自覚はないためにどこまで表現するかが難しかった。


「隼人には勘付かれない範囲で、ですか?」

『そうですね。あくまでも少し漏れ出る程度でお願いします』

「承知しました」

 メモを取る澪の横で智紀もペンを動かす。澪は横目でちらりと見る。左手で綴られる文字は整っていて読みやすい。


 ニュアンスをつかむために一度練習することになった。

「『いる?』」

「『なんで』」

 先ほどよりも自然になった智紀の演技に合わせて、澪は気持ち強めに反応する。

「『いや吸いたそうにしてたから』」

「『吸えると思うか?』」

「『完全に成長が止まったわけじゃないから、アウト寄りのセーフかと』」

「『完全なるアウトだよ。俺がお前と同い年に見える? 見えないだろ』」

 嫌味で言っているつもりはなく、隼人にも本音を悟らせない。でも視聴者には伝わるように。各視点から捉えたジュンと、ジュンの心情を合わせて矛盾なく表現した。

『オッケーです。本番もこの調子でいきましょう』

 澪は調整室から視線を移し、智紀と目配せした。いいものにしようと確認し合うように。


 Aパートの本番後、休憩を挟んでBパートのテスト、本番へ。ストーリーが進むにつれて煙草のやり取りが生きてくる。

 ジュンは三十年ほど前、十二歳のときに家族を事故で亡くした。自身も命を落としかけたが、不思議な力に目覚めて一人生き残る。視えないものが視えるようになり体質も変わった。この三十年で三歳程度しか年を取っていない。


 ジュンの戸籍、社会的身分といった現実的問題は上手くぼかされている。突き詰めても「それを言ってはおしまい」になるだけなので、原作でも掘り下げられはしない。おそらく人間としては死んだ扱いになっている。まっとうな生き方ができなくなったから、人目を忍んでアウトローな商売をしている。というのがオーディション時の澪の見解で、収録が進むにつれて理解を深めてきた。


 ジュンの生い立ちは第二話で軽く説明済みだが、踏み込みはしなかった。ここまで取っておいたとも言える。

 依頼の解決が目的であるのに、今回のジュンは反する行動を取ろうとした。

写真の謎は依頼主の恋人が握っていた。天涯孤独の彼は依頼主と恋仲になったが、病気が発覚。死の間際で彼は死神に願った。彼女の記憶から自分と出会ってからの思い出を消してほしいと。真相に辿り着いたのにもかかわらず、ジュンは依頼主への報告を渋る。初めて二人の意見が割れた。


「『打ち明けるべきじゃない。あの若さで過去を背負って、未来を閉ざしてしまうなんて酷だ』」

 心の底では正しくないとわかっていても伏せようとする。澪はジュンの主張を極論だと思うも、そこに至った過程を深く理解している。記憶を取り戻したところで恋人は戻ってこない。それならいっそ。家族を失い、寿命が長いためにまた誰かを失うからこそ過剰反応する。澪はそんな彼に声で寄り添った。

「『閉ざされるものか。背負ってでも前に進める』」

 本当は迷いがあるから隼人の正論で揺らぐ。ジュンを揺さぶるのに十分な声が智紀によって紡がれた。

「『亡くなった本人の望みでもあるのに?』」

 恋人はすでに成仏していた。願いを叶えてもらうのと引き換えに魂を捧げたからだ。つかみ取った情報からしか本音はわからない。

「『彼だって本心では願っていなかった。心の底では忘れないでほしいと望んだから、死神の術が不完全なものになって写真が残っていた』」

「『それは……ただの推測だろうが』」

「『だとしても理由にはなる。第一、俺たちが寄り添うのは依頼主だろ? 知りたがっているんだから叶えるべきだ』」

 澪は思わず智紀を見た。映像の中にいるはずの隼人が、次元を超えて自分の隣にもいると錯覚しかけた。智紀のそばにいるとたまにこういうことが起きる。

「『その依頼者のためだと言ってる……! 知らなければ良かったと苦しまなくて済むように』」

 澪は、隼人を直に感じては応えるように返した。

「『苦しむだけじゃない、苦しんでも覚えていたい記憶がある。俺なら忘れたくない。いつか潤と離れる日が来てもなかったことにしたくないんだよ!』」

「『……っ』」

 「潤」とはジュンの本名だ。普通に生きていた頃と分けるためにカタカナで通していた。ジュンに人として向き合った隼人は本当の名前で呼ぶ。映像で本名呼びが明かされるが、なくても伝わる演技だった。真摯な言葉に心を打たれ、ジュンは息を漏らす。澪は別の意味で息をこぼしたくなる。


(すごい。テストでも際立っていたけどそれ以上に)

「『いつか来る別れのとき、悲しみをより長く背負うのは俺の方だ』」

 ジュンは肩に乗っていた隼人の手を振り払うが、澪は智紀に手を引かれているような気がした。より磨きがかかった感情に澪も引き上げられていった。

「『わかってる。それでも忘れたくないし忘れられたくない。悲しみごと背負ってもいいと思われるほどの記憶を残したい』」

「『……本当に勝手な奴だ。……でも本当は、俺も……』」


 ――場面変わって。

「『真実がどのようなものであっても知りたいですか?』」

「『はい。お願いします』」

 ジュンが依頼主の意志を確認して、彼女の頭にそっと触れた。死神から取り戻した記憶を返すために。

「『痛くて、苦しくて……。それなのに満たされていて。あの人はバカね。私には全部受け止める覚悟があったのに』」

 彼女は大切な思い出を感じ、死神にすがった彼の想いも知った。その上で全てを背負い、抱きしめて生きていくのだ。沙耶は愛と決意を余すことなくマイクに乗せた。


 依頼が達成されたように、収録もまたつつがなく終了した。リテイクは少なく、ジュンが反対しだしてからは全くなかった。


 澪はブース後方の長椅子から、調整室にいる智紀を見ていた。ガラスを挟んだ先で音響監督と話している姿を。去っていく共演者に挨拶をする間も気になるほどだった。

 智紀と役を争った際、戦績だけ見れば五分五分でいい勝負をしている。のだが、智紀は澪に敗れても他の役で受かりやすい。ゆえに澪より売れっ子だ。今日の彼には有益なヒントがありそうで、つい釘付けになってしまう。

「気になる?」

 帰り支度を済ませた沙耶が横から覗き込む。

「ちょっとだけ。……沙耶さん」

「あ、急がなきゃだった。お先に」

「お疲れ様です」

 沙耶はそそくさと出ていった。変な気を回された澪はその場に取り残される。


「柴田さん。最近何かありました? 何か変わったことだったり、心動かされる出来事だったり」

 少しでも秘密を知りたくて、戻ってきた智紀に問いかけた。智紀はわずかに迷いの色を示しつつ、澪にならいいと決めたように表情を緩ませた。

「たいしたことではありませんが」

 そう言ってちらりと周りを見やる。ブース内では二人きりだが、ガラス越しにスタッフの視線があった。彼らに挨拶しアフレコブースを出てから、改めて智紀は話し出す。

「本当にたいしたことではないんですよ。……好きなアイドルグループの解散が発表されまして」

「たいしたことですよ。もしかしてそのグループ――プチジュエル・プリンセスですか?」

「え、高倉さんも……」

「はい。わたしもファンなんです」

「いつからですか?」

「四年くらい前からです。沙耶さんに勧められたのがきっかけで。柴田さんはいつからです? 誰推しか聞いても? わたしはゆっきーなんですけど」

 嬉しくなって色々聞いてしまう澪に、智紀はやわらかい笑みを返す。

「僕も四年前ほど前、たまたま動画を見て好きになりました。ひな推しです」

「ひなもいいですよね。かわいさの塊ですもん」

 スタジオ外に向かっていた二人はいつの間にか足を止めていた。出入口付近に留まり進まない様は、解散を惜しむファン心にも似ている。

「立ち話もなんですし、もしお時間あればお昼ご一緒しませんか?」

 智紀はこの間の「また誘ってください」をさっそく実行した。澪も次の仕事まで時間はあるし、単純に話を続けたい欲も大きかった。

「是非。どこに行きましょう?」


 近くのカフェにやってきた。パスタを注文して曲やライブの感想で盛り上がっていたところ、話題は次第に解散へと移っていった。

「柴田さんはひなの引退をどう受け止めましたか?」

 そして、少々尋ねにくい事柄にも触れた。

「初めは解散と二重でショックでしたし、デザイナーなら芸能人のままでいいのでは考えました」

「ああ、タレントデザイナーみたいな」

「ええ。けれど、実力で勝負したいからなのだと納得しました」

 陽南子にはステージ衣装や洋服のデザイン経験がある。それでも本職デザイナーとしては新人になるのだから、元アイドルのブランド力は利用した方がいいだろう。そこをあえてしなかった。澪も陽南子らしい選択だと思う。


「それに……」

 智紀はフォークを動かす手を止め、言葉を区切った。

「前に、隼人が大学を卒業したらジュンとの関係はどうなるか、という話をしたのを覚えていますか?」

「しましたね。本編のような日常はなくなっても、繋がりは続いていくって」


 収録に慣れてきた頃、原作でも描かれないであろう未来図を語った。ジュンたちの変化は隼人の老いを待たずに訪れるだろう。隼人は異質なものが視えるだけの人間だ。一般社会になじめる程度である。今は縁あってジュンの助手のような立場だが、それも学生というしっかりした身分があってこそ。裏社会のジュンにいつまでも雇われているわけにはいかないのだ。隼人がアンダーグラウンドな世界にどっぷり浸かることはジュンも望まない。あと二年半も過ぎれば就職し、いつかは家庭も持つ。そうなってもたまに様子を見にきて話をするはずだ。


「環境が変わっても縁は切れません。きっと隼人が寿命を迎えた後も」

 智紀はあのときの続きを始める。澪も時を経たジュンを思い描いた。

「その頃にはジュンも大人の姿になってますね。煙草をふかしながら、依頼主に『こんな奴がいたんだ』と話したりなんかして」

 背が伸びて体つきも男性らしくなるだろう。澪が出せない声になっているかもしれないから、寂しくもあるが。

「想像できます。隼人と同じ銘柄だとなおいいですね」

「隼人は煙草に再チャレンジした設定ですか?」

「社会人になって心境の変化があった設定で」

 ジュンたちの未来がどんどん膨らむ。切なくも情緒的なイメージを二人で共有した。

「ひなやプチプリも隼人たちのようにあってほしいです。日常が形を変えるだけで、三人の関係、三人とファンの関係も根本は変わらない。ずっと残って、後世に語り継がれるグループになったらいいなと」


(「潤と離れる日が来てもなかったことにしたくない」か……)

 隼人の「潤」が澪の脳内で再生される。いつもより心の深くまで触れる声。目の前の智紀が隼人に重なった。その顔から目を反らしたくなるのに少しも反らせない。澪が聴き惚れた演技は想いの結晶だったのだろう。依頼主と恋人へ、隼人とジュンへ、陽南子とプチプリへの。自分の感情を見事に昇華させていた。


 秘密を暴いた澪だが、もう一つ気になることが出てきた。

「ひなと同じくらいプチプリが大好きなんですね。箱推し寄りな感じがします」

 もちろん澪もグループとして好きだ。智紀はさらにその性質が強く見えた。

「半分は箱推しかもしれません。高倉さんはゆっきーのどこが好きですか?」

「清楚で大人っぽい振る舞い、感情豊かな歌声、パフォーマンスの丁寧さと手堅さ、ドラマにも生の舞台にも適応できる演技力、ファン対応の良さ……。もっとたくさんありますけど、とりあえずこんなところでしょうか」

「僕はひなの技量やファンサービス面より……いえそれらも二十分に好きなのですが。それ以上に、誰よりもメンバー想いなところが好きです」

 三人はとても仲がいい。雪奈が優しいお姉さん系(実は最年少なのだが)、菜摘が姉御肌ということもあり、陽南子はムードメーカーな末っ子のよう。可愛がられポジションにいながらもグループを引っ張っている。それぞれがそれぞれを想い合う中で、彼女は愛の中心にいた。雪奈以外のメンバーを褒めるとき、「でもゆっきーが一番」と付け足したくなる澪でも異論はない。


「メンバー想いは同感ですが、そこが一番好きなんですか?」

「はい。ライブやイベントでも、ひなだけではなく全員を見ています」

「じゃあライブでひなと目が合うのと、ひながメンバーとアイコンタクトを取ってるの、どっちが嬉しいです?」

 澪は断然、雪奈と目が合う方が嬉しい。だが滅多に降ってこない幸運だ。メンバー同士のアイコンタクトならお目にかかれる機会が多かった。

「後者ですね。アイコンタクトは特別感があっていいです」

「やっぱり。柴田さんの楽しみ方がわかってきました」

 珍しくもない光景が特別だという。同じグループを応援しているのに見方が違った。

「変ですかね?」

「や、おもしろいなって。初めて知る応援の仕方だったもので。グループの雰囲気を重視しているんですね」

「雰囲気がいいと見ていて癒されますから。憧れなんです」

 心躍る感覚から一転、澪は現実へと連れ戻された。憧れを語る声がやけに感傷的で。

 プチプリは一般公募オーディションから生まれた。要は事務所の同期で組んだグループ。そして、智紀は同期と上手くいっていない。

(やっかんで攻撃してくる人は許せない。距離を置いて正解。だけど……。こんなのは寂しいよ)


「高倉さん?」

 唐突に黙った澪を不思議に思ってか、智紀は声をかける。

「……今から失礼なことを尋ねるかもしれません」

保険をかけるずるい言い方だと思うも、遠慮せず口にした。

「意味があってのことでしょう?」

「……では。率直に聞きます。ご自身と事務所の同期との関係をどう見ていますか?」

「そう、ですね……。表面上だけでもどうにかしなければと思っているのですが」

 しどろもどろな口調から本音をすくい上げ、澪はさらに踏み込む。

「表面上じゃなくてプチプリみたいな関係になりたい。本当はそう思っているのではないですか」

「……」

 今度は智紀が黙り込んだ。気を悪くした様子はなく、どう答えていいか戸惑っているようだ。


「ひなだけじゃなくて、自分の夢も大切にしてあげてほしいです。酷いことを言う人もいるでしょうけど、仲良くなれる人だってきっといますよ」

 澪が口を挟むのは傲慢でもある。事務所に同期がいない、関係の難しさを知らない身だ。しかし伝えずにはいられなかった。傷つけてくる者ばかりではなく、わかり合える同期もいるのだと信じたい。

「お恥ずかしながら図星です。ひなに理想を夢見て自己完結していました。自分のことにも真剣になるべきでしたよね。……今からでも取り戻せるでしょうか」

 智紀はやや自虐気味だったが、一縷の希望を見出した顔でいた。澪は胸を撫でおろす。

「できますよ。『いつでも手遅れなんてことはない』んですから」

 「解呪迷宮のアリス」に出てくる台詞。オーディションを控えているからだろうか、ぱっと思い浮かんだ。

「勇気づけられました。ですがなぜ解呪迷宮から?」

「なんとなくです」

「もしかしてアリス役を受けられます?」

「バレました?」

「近々オーディションをすると聞いていましたので。よろしければ一緒に練習しませんか?」

「付き合ってもらうなんて悪いですよ」

「僕もアリスとの掛け合いを練習したかったんです」

「……じゃあお言葉に甘えて」

 ヘンリー役の智紀との練習で得られるものは大きいだろう。


 誘ってもらったお返しというわけではないけれど、澪も誘いたくなった。

「柴田さんって、ファイナルライブは誰かと行く約束してますか?」

「いいえ、特には」

「わたしは沙耶さんと行く予定なんですけど、柴田さんも一緒に行きませんか?」

 プチプリのライブやイベントの連番(横並びで席を取ること)は二席までだが、席が離れていても一緒に行けば楽しいに違いない。

「是非ご一緒させてください」


 二つの約束をしてお開きに。智紀との時間のおかげで、次の現場ではいつも以上に力を発揮できた。

(もっと早くプチプリの話をすれば良かったな)

 夜。そんなことを考えては、アリス役のオーディション資料と向き合った。

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