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震駭のゴット・シュヴェルツェン  作者: コダーマ


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エピローグ4

 ガーネットといったか、あの女……。

 一ヶ月前に起こったリュックザイテ署爆破事件。


 あのとき死んだレオ刑事。

 そいつがシルヴァー+クロイツ誘拐犯として容疑者死亡の状態で捜査対象となったという事は彼女から聞いたのだ。


 奴と付き合っていたというガーネット刑事は精神的ストレスを理由に現在休職中である。

「アタシはとことん男運がないのよ」と、酔っ払っては週イチの頻度で夜中に真霧に泣きついてくるらしい。

 さすがの真霧も寝不足だとさり気なくぼやいていた。


 咲良の足が五階で止まる。

 そこにあの少女が住んでいるから。


 今日は彼女の包帯を取る日なのだ。

 花じゃなくて食事を持って来た自分は、意外とデリカシーのない人間だったかもしれないと彼は今頃気付いた。


 大皿を持っているためドアを足で蹴ると、中からあからさまに不快そうな舌打ちが聞こえた。

 細く開けられた扉の隙間に顔を突っ込む。


「真霧ちゃん、具合どう? ご飯持って来たよー」


「その声は麻倉さん? いらっしゃい」


 奥から可愛らしい返事が聞こえた。

 だからドクター咲良だってば。

 呟く彼は、しかしビクリと全身を硬直させる。


「あの、何か……?」


 直ぐ隣りで何度も舌打ちを繰り返されれば彼でなくとも気になるだろう。

 玄関先には銀髪の青年が立っていた。

 不機嫌そうに顔を顰め、咲良を睨み付けてくる。


「このヤブが。俺の包帯も取れよ」


 シルヴァー+クロイツの左手はギプスで固定されていた。


「駄目だよ。あと二週間はそのまま動かさないように」


 医者として毅然とした態度でそう言うと、相手はブツクサ言い始めた。


「腕が使えないと商売上がったりなんだよ」


「無茶言うなよ。あの爆発喰らって骨折で済んだなんて奇跡だよ。一緒にいたあのレオって刑事は即死だったんだろ」


「何が奇跡だよ……」


 レオのクロスファイアは警察署壁を撃ち壊した。

 側に停めてある車もその銃撃の餌食となる。

 ガソリンに引火し、小爆発を起こした。

 そしてそこにはバギータイプの軍用車両も停車していたのだ。


 奇跡というなら、そこにある。

 FAVスコーピオン。

 それはブラッドの愛車だった。


 そしてそこに相当量の爆弾を搭載したのは降夜である。

 クロスファイアにより衝撃を与えられた爆弾ソイツが爆発して辺り一帯を吹き飛ばし、犯人であるレオを爆風で飛ばしたのだ。


 偶然、車体が遮蔽物となったシルヴァー+クロイツは結果的に命を救われたこととなる。

 無論、そんな事情をここに居る者達が知る由もない。


 奇跡といえば、ここにもうひとつ──。


「シル、喧嘩しないで」


 白い少女が覚束無い足取りでヒョコヒョコと玄関に出て来た。

 不機嫌そうに顔を歪めていたシルヴァー+クロイツが反射的に笑顔を作る。


 その様を間近に見て、咲良が頬を引き攣らせた。

 スゴイ笑顔だけど真霧ちゃんに見えるわけないのに、と言いかけて慌てて口を押さえる。

 余計な事を言えばまた悪態をつかれるに決まってる。


「シル?」


 困ったように立ち尽くす真霧には、シルヴァー+クロイツも咲良の姿も見えてはいない。

 両目に包帯を巻かれているのだ。


「今日は包帯を取る日だね、真霧ちゃん」


 ここに来た本来の目的を思い出した。

 咲良がそう言うと少女は不安気に身を引き、全身ぷるぷる震わせる。


「大丈夫、真霧。俺が付いてる。もし駄目でも、今度こそちゃんとした医者を見付けてやるさ」


「シル……、真霧は大丈夫。きっと上手くいくよ。麻倉さんを信じてるの」


 シルヴァー+クロイツのその言い草を咲良は笑顔で聞き流す事にした。

 真霧ちゃん、奥に行って包帯取ろうね、と少女を部屋に連れて行く。

 舌打ちしながら銀色の青年も付いて来た。

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