FAVスコーピオン(1月11日・3)3
人殺しの道具を造っている以上、これは必ず直面する問題だった。
使う奴に問題があるのだと開き直るつもりはない。
その銃を造らなければ、少なくともそいつを使って人が死ぬことはないのだから。
奇麗事は言わない。
銃とは基本、人を殺す為に存在する道具なのだから。
シルヴァー+クロイツはその場からじわじわと後ずさった。
レオの殺気が高まっていくのを感じたからだ。
この狭い場所でクロスファイアを一発ぶち込まれれば、それだけで命取りになる。
──真霧……。
その名を心の中で呼ぶ。
あの戦場から逃げて、都合の良いことだけ覚えていて真霧の保護者気取りでいた。
彼女の親を殺し、彼女の住む世界を壊したのは自分だというのに。
己が滑稽すぎてどうしようもない。
真霧のことも、そしてこのレオの事情も。
すべての責任を負って、今ここで自分が死ねば良いのだと……しかし彼はそこまで大人気ないことは考えない。
「お前ごときに俺は殺せない」
「何だと?」
レオは逆上した。
「マフィアに引き渡して金に換えてかともやろうと思ってたんだけど、別にシルヴァー+クロイツになんて未練はないんだ」
今ここで殺したって構うもんか──そう叫んでクロスファイアをぶっ放す。
その瞬間、シルヴァー+クロイツは身を翻した。
レオに飛びかかり、クロスファイアをわし掴む。
太い銃身を振り回して脱色頭を殴りつけ、二人はその場で揉み合った。
引金にかけたレオの指が何度も引き攣り、立て続けに弾丸を撃ちまくる。
それは壁を破壊し、建物の外に停車したままの車に撃ち込まれた。
「………………?」
至近距離でのショットガンの射撃に耳をやられたのか。
一瞬にして周囲の音が遠のいていく。
海鳴りのような静かなさざめきがこめかみを打つ嫌な感覚に、シルヴァー+クロイツの身体が硬直した。
僅かなその隙をついて、レオがクロスファイアの銃身で銀髪の青年の腕を殴り付けた。
「うっ!」
上腕の骨が軋み、嫌な音を鳴らす。
たまらず倒れ込んだシルヴァー+クロイツの上体にのしかかり、レオはクロスファイアの銃口を相手の首筋に圧し当てた。
シルヴァー+クロイツの全身が硬直する。
視界には大きな銃と、それからその引金に掛けられた指──それがゆっくりと動く光景が。
頭の中が真っ白になるなか脳裏を過ぎったのは、小さな少女の姿であった。
真霧と約束した。
待っていろと言うと、大人しく何時間でも何日でもじっと待っているような子だ。
戻ってやらなくてはならない。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
このまま俺が死んだらあの子は心に傷を負い、そしてそのまま生きていくことになるだろう。
それはさせられない。
あの子のために出来るのは、今自分が生き延びること。
──だが、そうも言ってはいられないらしい。
迫る死を、このときシルヴァー+クロイツは確かに自覚する。
次の瞬間、爆発音が彼を襲った。
悲鳴すらあげられない。全身がバラバラに千切れる感覚。
──何が起こった?
目の前には爆撃で生じた炎──こんな光景を見ながら死にたくない。そう思った。
いや、自分勝手な記憶を捏造して生き続け、人殺しの道具を造り続けてきた自分にとっては相応しい死に様なのかもしれない。
皮肉な思いが彼の傷を覆う。
※ ※ ※




