FAVスコーピオン(1月11日・3)2
追う警官の半数が『シルヴァー+クロイツ』を装備しているではないか。
完璧な性能を持った銃で武装している彼等に対してこちらは丸腰だ。
警察署の建物にも詳しくはない。
銃撃から逃げて階段を上ったり下りたり。
拘留されていたチンピラ達に紛れて逃げ出したものの、外観が目立つ彼はたちまちのうちに狙われ、追い詰められてしまった。
警察署裏口近く──空き部屋の柱の影に身を隠して周囲を伺う。
せめて武器があればと思う。
落ちている鉄パイプでも構わない。
それを曲げて、ライターの火を使って銃底部を溶接して強化すれば簡易の銃として使用可能だ。
しかし追われる中、そんな時間は到底ない。
真霧らと別れてから十分は経った筈だ。
無事にこの建物から逃げ出しただろうか。
麻倉という名の、いまひとつ頼りなさげな男を思い返して彼は深い溜め息をつく。
彼女の為に出来るだけ時間を稼がなくてはならない。
その時だ。
すでに耳慣れた感のあるクロスファイアの爆撃音と共に部屋の壁が吹き飛んだ。
爆風に煽られ、銀髪の青年の体は床に叩き付けられる。
「う…………」
白煙の向こうから現れたのは、レオであった。
「無駄だよぉ。シルヴァー+クロイツ」
彼の言う通りだ。瞬時に身を起こしたものの、レオのクロスファイアの銃口は完璧にシルヴァー+クロイツを捕らえている。
追い詰められた彼は視線だけを動かして周囲の状況を確認した。
壊れた壁。その向こうにクロスファイアを抱えたレオ。
自分との距離は僅か8メートル。
レオの他に警官が潜んでいる気配はない。
飛びかかって押さえ込んで、そしてあの銃さえ何とかすれば──。
腰を屈めて息を詰める。一瞬の油断を探る。
おもむろにレオが上着のポケットに手を突っ込んだ。
銃口がブレるその時を狙うものの、シルヴァー+クロイツはレオの中に突然走った憎しみの感情に身を竦ませる。
「コレ、覚えてるか?」
レオが取り出したのは何の変哲のないボールペン……いや、それに見せかけた小型銃だ。
傷だらけになっているが精巧な造りには見覚えがあった。
「シルヴァー+クロイツ製だよ。ホラ、ここに+クロイツが彫ってある」
「……それがどうした」
レオの意図は読めないが、会話に乗るつもりはない。
シルヴァー+クロイツは素っ気無く答えた。
クロスファイアを腰撓めに構えたまま、レオは指先でクルクルとペンを回す。
「姉ちゃんがコイツで死んだんだ。半年前だったかな……麻薬クスリの売人同士のトラブルに巻き込まれてねぇ」
軽い口調。だが声は震えていた。
──恨みか。
シルヴァー+クロイツはようやく納得した。
この男が自分を執拗に狙う理由がやっと分かった。
「いや、別にシルヴァー+クロイツのせいじゃないって分かってるよ。姉ちゃんも麻薬をやってたわけだし。恨むんなら、銃使って彼女を撃ち殺した奴を恨むよ」
でもさぁ、と男は続けた。
「こんな紛らわしいモン造ったのは誰だよ、とも思ったよ。いや、その件で復讐しようってほど常識なくないけどさ。でも、恨みはある。シルヴァー+クロイツには出来るだけ不幸になってほしいんだ」
饒舌を装うもののクロスファイアの銃口からは憎しみが迸っていた。
──何の因果だか……。
シルヴァー+クロイツは舌打ちする。




