第6話バザールのバター味噌鍋
シロがやって来てしばらく経ったある日のこと。姉猫と弟フェレットは何やら荷造りしていた。シロは気になり歩いてきた。
「お姉ちゃんたち何してるの?」
『豚人族の村に行く準備。』
『豚人族のキノコを貰いに行くんだよ。』
「…きのこ?」
『そうだよ。後は燻製した魚と肉でいいかな。』
『小人たちが屋台持ってきたー。』
<やー!>
<任せてー!>
『シロも行く?』
シロに靴も履かせている為大丈夫かなと思い、姉猫は一緒に行くかと聞く。シロは一緒について行くと頷く。
『よーし!しゅっぱーつ!』
魔の森にはいくつかの集落がある。ドワーフの集落、エルフの集落、狼人族の集落、そして豚人族の集落である。集落の主な取引は物々交換。ドワーフの集落では武器、食器、ワイン。エルフの集落では薬草と山菜。狼人族の集落では狩りで入手する肉と卵。豚人族の集落ではキノコと野菜だ。
『人の里も悪くないんだけど物々交換も悪くないよ。』
『豚人族の採るキノコは美味いんだ!』
「楽しみ。」
今回は豚人族の集落で行われる月に1回のバザールに出店するのが目的だ。小人たちと協力し、屋台を押して一時間も立たないうちにたどり着いたのが豚人族の集落である。
「…うん?おお!猫たちか!」
『こんにちは!』
『今日は色々持ってきた!』
「…うん?そっちにいるのは?」
『妹!』
「…ふむ、なるほど。深いことは聞かん。入りなさい。」
「ありがとうございます。」
「いやいいんだよ。猫たちはいい奴らだ。きっと色々と教えてくれるさ。」
猫たちと一緒に豚人族の集落へ入っていく。バザールと言うだけあってドワーフ、エルフ、狼人族、豚人族が多く存在した。
「猫ちゃんだ!」
「猫ちゃーん!」
「フェレットもいるー!」
「新しい仲間もいるー!」
指定された場所に屋台を置き、品を出していく。今回は加工品、燻製品、乾燥品である。野菜は加工しておくのが一番なのだ。
「こんにちは。」
『エルフお兄さんこんにちは!』
「こんにちは、今日も品揃えいいね。」
『今回も薬草なんですか?』
「まあね。この森は自然豊かだから薬草も取り放題さ。梅酒あるかな?」
『はい!』
「やったー。梅酒を飲めるの楽しみにしてるんだー。」
「お、猫とフェレット…と?誰だ?」
『シロ!俺たちの妹!』
「ほうほう、珍しい事もあるもんじゃ。詳しいことは聞かんが…お、そうじゃ、ワシのワインと交換してくれんか?」
「ドワーフのじいちゃん!先は僕ですよ!」
「硬いこというな!」
『順番です。』
バザールが開催された途端主婦の皆さんが一斉に駆け寄る。主に犠牲になるのは野菜売り場と肉売り場である。
「ひぇぇぇぇ!!助けてーー!!」
「野菜売り場が全滅しそうじゃの。」
「ええ…」
「…凄いね。」
『加工品とかにして良かった。』
「あら〜、猫ちゃん。」
『豚人族のおばあちゃん。』
「今日は梅干しとバターが欲しいんだけど…」
『今包みますねー。』
『おばあちゃん、この間のキノコありがとう!美味しかった!』
「ふふ、ありがとうね。はい、キノコだよ。」
『ありがとうございます。』
『ありがとうございます!』
「あ、ありがとうございます。」
少しずつだが人集りが出来始め、慌ただしくなる姉猫と弟フェレットとシロ。エッホエッホと運ぶ小人たち。
<蜂蜜どうぞー。>
<燻製肉どうぞー。>
<お酒はこっちでーす。>
「え、えっと…バターとチーズはこっちです。」
「ワインと交換!」
「うちはキノコだ!」
沢山の食材を貰った姉猫は頷き、宣言する。
『今からお鍋を作りまーす!』
「おお!猫の手料理か!」
「楽しみー!」
<お鍋ー!>
<鍋準備ー!>
<火をつけるー!>
屋台の中から包丁とまな板を取り出し、トントンと野菜とお肉を切っていく。今回はバター味噌鍋である。エルフは野菜しか食べないイメージだがこの世界のエルフは美食家として名高い。ようは美味ければそれでよしで生きているのだ。狼人族も豚人族も共食いではない限りなんでも食べる。
「今回はバターを使っているんですね。」
『そうですよー。』
『姉ちゃんの料理美味いんだー。』
「ええ、知ってますよ。」
トントコトントコ、グツグツグツグツ、バザール全体に味噌の匂いとバターの匂いが立ち込める。鼻のいい狼人族と豚人族はすぐさま駆け寄った。子供たちもヨダレを垂らしていた。
『うん、よし。出来上がりましたー!』
「うぉぉぉ!!」
「スプーンと器を持てー!」
『並んでくださいー。』
器を受け取り、バター味噌鍋をお玉で掬い、入れていく。白菜、長ネギ、キノコ、豆腐、猪肉を味噌で煮込み、器ごとにバターを乗せる。
「…もぐっ。アッツ!でも…うめぇ!」
「キノコうめぇなぁ…」
「ほっこりする…」
「バターと味噌って相性いいんだな。」
「イノシシ肉ってこんなにも美味いのか。」
「俺たちが狩った肉だからな!」
「キノコだって俺たちが採ったんだぞ!」
「かー!これで飲むビールは堪らん!」
「ドワーフの爺さんずりぃ!」
「猫ちゃん、すまないねうちの主人が。」
『いえいえ、大丈夫ですよ。皆で食べるご飯は美味しいんですから。』
「…お姉ちゃん。」
みんなで食べるご飯は美味しい。シロが思い出すは一緒に作ったうどん。心が暖かくなるシロ。
「…うん、美味しい。」
「そーだ。丁度本があるんだ。読まないからシロちゃんに読ませてあげな。」
『いいんですか?』
「勉強は大事だって言うだろ?古いものでよけばなんだが…」
『ありがとうございます!良かったねシロちゃん!』
「うん。」
バザールは大成功に終わり、帰宅する。弟フェレットはシロに読み聞かせをしていた。伝説の聖獣の物語を。
「…お兄ちゃんは聖獣?」
『違うぞー。俺はフェレット!』
『私は猫かな。』
「…そっか。」
それ以上に必要はないのだと分かったシロは姉と兄として慕うのだ。聖獣じゃなくていい、側にいてくれる家族なのだ。
あと少しの未来、魔法学園に入学することになるのだが…シロはまだ知らない。
バター味噌ラーメン好きなんでもし仮にバター味噌鍋出来たらラーメンぶっこみたいですね。




