第5話思い出のかけうどん
シロという少女は奴隷であった。白い髪赤い瞳な為両親から怖がられ、売り飛ばされた。聖魔法が使えると知った奴隷商人たちは高値で売ろうとしていた…だが檻が壊れ、脱走した。逃げて、逃げて、姉猫と弟フェレットに拾われた。そして現在、シロと名付けられた。首輪もいつの間にか取れていた。
「…首輪。」
『じいちゃんが取ってくれたんだ!邪魔だろ?』
「うん、邪魔だった。」
『良かったー!姉ちゃんー!シロに何食べさせるんだ?!』
『うーん、胃に優しいものかなぁ。』
「…ご飯?」
『おう!ここでは一日三食食べられるからな!』
「贅沢。」
実際のところ貴族でも一日二食食べるのが限界だ。作物がそんなに取れないからだ。全世界で食糧難になるほどには…
『そうだ…久しぶりにうどん作ろうか。』
『うどん?!やっほー!』
「…うどん?」
『胃に優しい食べ物だよー。』
『すげー、美味いんだ!きつね揚げとか美味しくて…月見うどんも美味しんだよなぁ。』
「…ごくりっ。」
絶対美味しいと感じとったシロは楽しみに待っていた。だが不安にもなる。何故こんなにも優しくしてくれるのだろうかと。
「…なんで優しくするの?」
『え?家族だろ?』
「…かぞく。」
『シロちゃん。何があったのか深くは聞かない…でもここは安全だよ。ご近所さんたちもおじいちゃんも守ってくれる。』
「…」
ここは居場所なき者たちの楽園、後に聖女となったシロが答えるくらいには。
「…ありがとう。」
『ううん、いいんだよ。』
小麦粉、塩、水を用意してこねていく。コネコネコネコネ、器用にこねて、形となった時…袋の中に入れる。
『フミフミ。』
『フミフミ♪』
姉猫と弟フェレットが踏んでいく、ジッと見ているシロを手招きする姉猫。シロは傍によると一緒に踏み始めた。
「ふみふみ。」
『フミフミ。』
『フミフミ♪』
まるで家族全員で作ってるような感覚に嬉しくなるシロ、微笑ましいものを見る目で見ている姉猫、楽しそうにフミフミする弟フェレット。
『楽しいだろ?』
「うん。」
『さてそろそろかな。』
踏み終わったうどん生地を一旦寝かせておき、うどんの出汁を作っていく、何故か箱庭にある魚の養殖場で採れる乾燥した昆布、魚の養殖場の鰹を乾燥させ、鰹節にしたものから鍋で出汁をとっていく。
<醤油出来たよー。>
『いつもありがとうー。』
「…妖精?」
<小人だよ!>
<仲間!>
<仲間!>
シロの周りでクルクル回る小人たち、大歓迎なのかプレゼントまで貰った。小人たちの手作りの子供用ワンピースだ。
「…着ていいの?」
<うん!>
<仲間大事。>
<服ボロボロダメ。>
<風邪ひく。>
部屋の中に入り服に着替える。蚕から作ったシルクだとは知らず、着心地がよくて目を輝かせるシロ。
「着やすい。」
『良かったな!』
「うん。」
「貰った醤油を入れて…よし完成!かけうどん!」
『やったー!かけうどんだー!』
『手を洗いなさい。』
『…はい。』
「手を洗う?」
『大事な事だよ。シロちゃんに手の洗い方を教えてあげて。』
『おう!こっちだ。』
手の洗い方を教わるシロ、石鹸というものが貴族の間で流行っているがここまで泡立つ石鹸があるとは知らないシロは、楽しげに泡立たせて手を洗う。
「楽しい。」
『バスボムとかあるんだぜ、怪我が治ったら一緒に入ろうな!』
「!うん。」
楽しみが増えたシロは用意されていた椅子に座る、食卓には伸ばして切って湯掻いたうどんに出汁をかけたかけうどんが置いてあった。
『さ、一緒に食べよ。』
『いただきます!』
「…いただきます。」
シロは弟フェレットの真似をしながら手を合わせ、食べていく。箸はまだ使えないのでフォークで食べる。
「…ツルツル。」
『うまー!コシがいいー!』
『出汁が上手く取れてよかったー。』
<ちゅるちゅる!>
<猫美味しー!>
『良かったー。』
「…猫?」
『私の名前。』
『俺はフェレット!』
「…お姉ちゃん?」
『うん。』
「お兄ちゃん?」
『えへへ、妹出来ちゃった。』
「…種族違う。」
<それでも家族!>
<仲間!>
血は繋がってない、種族も違う、だがここではそれは関係ない。仲間、家族、繋がりを大事にする所なのだとわかったシロは嬉しくなり、涙を泣かしていた。
「うっ…」
『え、どうしたんだ?も、もしかして埃が…』
『…大丈夫だよ。シロちゃん。』
肉球がシロの手の上にそっと乗せられ、安心したのか姉猫を抱きしめた。こうしてシロという少女が家族となり、共に過ごすことになる。
後に思い出のかけうどんと呼ばれ、聖国では有難い食べ物として布教されることになる。聖女が愛したかけうどんとして。
「私はあの日、姉たちと共に作ったうどんを今でも忘れられません。生涯忘れることはないでしょう。」
誰にでも作れるということもあり聖国でうどんは名物となった。別名うどんの国とまで言われるまでうどん大好きな国へと変わることなんて誰も分からないまま。
シロもただの少女として日々を過ごすことになるだろう。
『そういやぁ、まほうってなに?』
「え?」
『そういえばなんだろうね。』
『なー?』
魔法というものを知らない姉猫と弟フェレットは首を傾げていた。かぼちゃが大量にできてしまい困った若き魔女がシロの師匠となるまであと少し。
うどん、特に冷凍うどんは美味い、電子レンジでチンしてその上からごまドレッシングをかけるのが至福、太る?……気にするな!(血涙)




