↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツモってあそぼ!〜VTuberたちの麻雀コラボ〜  作者: 永久保セツナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/12

第2局 機械仕掛けの月女神

「レンちゃん! コラボのお誘い来てるよ! やったー!」


 配信から数日後の朝、レンちゃんが眠い目をこすって居間に来ると、テンちゃんはぴょんぴょんと飛び跳ねるように、はしゃいでいた。


「テンちゃん、マンションだから下に響くよ。それで、そのお誘いって何?」


 テンちゃんがふんすふんすと興奮気味にスマホの画面を見せる。

 そこに映っているのは麻雀配信チャンネル『ツモってあそぼ!』のSNSアカウントに届いたDMの文面。


「VTuberの『ユエ』さん……初めて見る名前だね。誰だろ……私たちのチャンネルに来てたっけ?」


「私も知らないけど、きっとチャンネル見てくれたんだよ!」


 レンちゃんは落ち着き払った態度でDMに目を通した。

 そこにはこう書かれている。


『平素よりお世話になっております。VTuberのユエと申します。突然のご連絡失礼いたします。貴チャンネルの配信を拝見しました。貴殿の打牌における期待値の欠落について議論の余地があります。対局を希望します。つきましてはコラボの予定のすりあわせを――』


「……なにこれ」


「すごく丁寧なDMだよね!」


 ――丁寧というより、慇懃無礼に見えるんだけど……。

 レンちゃんは内心、相手に対する不信感を抱いた。


「テンちゃんはこの人とコラボしたいの?」


「うん! 麻雀を通して色んな人と知り合えるの、良いことだと思うよ!」


「……そう。テンちゃんがいいなら、私もいいけど」


「やった! じゃあお相手さんとコラボの予定を合わせよう!」


 テンちゃんは嬉しそうにスマホをいじり、ユエと連絡を取る。

 こうして、立直姉妹の初めてのコラボ配信が決定した。


 数日後、いつもの配信の時間、夜の20時。


「はーい! 皆さんこんばんは~! 『ツモってあそぼ!』の時間だよ~!」


「今回は初のコラボということで、テンちゃんがいつもよりテンション高いです」


 黒髪に赤チャイナのテンちゃんと、白髪に青チャイナのレンちゃんが画面に並んで映っている。

 その間には、人がひとり分入るスペースが空いていた。


『コラボ! めでたい!』

『女の子だよな!? 立直姉妹の間に挟まる男などお父さん許さんぞ!』


「誰がお父さんですか」


 リスナーのコメントにジト目でツッコむレンちゃんは通常運転である。


「今回のコラボ相手は~! じゃん!」


 テンちゃんの掛け声と同時に、相手の立ち絵が表示された。

 サーバーチックなスーツに、月の意匠が入った近未来的なデザイン。

 銀縁のメガネの奥には冷徹な目が光っている。


「V雀士のユエと申します。皆様、お見知り置きを」


『ゲェ~ッ!? ユエさん!?』

『AI並みの期待値で「機械仕掛けの月女神」とかいう異名を持つVTuberだよ、そいつ!』

『なんでこんな弱小エンジョイ系麻雀チャンネルに来てるのぉ!?』


「えっ、ユエさんって結構有名人!?」


「っていうか今、弱小とか聞き捨てならない単語が見えたんですけど」


 ざわつくリスナーと立直姉妹を尻目に、ユエは淡々とした口調で話し始めた。


「先日、立直姉妹の配信を拝見しました。それで我慢ならなくなったのです」


 ユエはテンちゃんを厳しい視線で見ている。


「テンホー・立直。貴方の打牌は非効率の塊。字一色を狙って南をカンするなんて、成功率を自分で削っているようなものです。それは打牌ではありません。ただの浪費です」


「は?????」


 即座に反応したのはレンちゃんのほうであった。

 彼女の声音に怒気が混じる。


「ユエさんって言いましたっけ。あなた、そんなことを言うためにコラボを申し込んだんですか?」


『そうだそうだ、言ったれレンレン!』

『コラボ相手に喧嘩売りに来るのヤバすぎて草』

『ギスギスしてきたな』

『さすが機械仕掛けの月女神、人の心がない』


 一瞬にして空気が悪くなった。

 コメント欄も煽るなどして混沌とする。


「す……」


 テンちゃんは言葉に詰まってしまった。


「……すっごーい! 道場破りってこと!? 私、生で初めて見た!」


「テンちゃん??」


「レンちゃん、うちのチャンネルもとうとうこの領域まで来たんだねえ」


「いや、多分絶対違う……」


 テンちゃんはレンちゃんの両手を握ってブンブン振る。

 レンちゃんも、もちろん彼女のポジティブさに困惑しているのだが、それ以上に腑に落ちないのはユエだった。


「……理解に苦しむ。このチャンネルは麻雀道場だったの?」


「そのツッコミもなんかズレてるんだよね……」


「じゃあさ、じゃあさ! 早速打とうよ! 楽しい対局にしようね!」


 配信画面が雀卓に切り替わる――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。