第6話 「吸い込め」
過激派による攻撃は、無慈悲にも始まった。
街はありとあらゆるところが破壊され続け、今防衛戦を張ろうといているこの瞬間にも攻撃は続いていた。
「くそ、なんで俺とこれがセットで...!」
レロスは嘆いた。これと出会ったことが悪かったとは思わない。なぜ俺が狙われ、そしてこれまでも狙われているのか、謎はより深まった。
「嘆く暇があるなら早くしよう、奴らの攻撃はこれで...一旦『静まる』…!」
ウヌクはそう叫んだ。叫んだと同時に、バリアが貼られ、攻撃はたちまち防がれた。
「にしてもあれだね、レロスは珍しい属性だね」
ウヌクはそう呟いた。どうやら属性は一目見ただけでやはりわかってしまうようだ。
それもそのはず、闇属性はモヤから発現するものが多いため、一目見ただけでわかってしまうことが多い。
「私のとは正反対だね、魔族としては少し羨ましいよ…」
「俺の真逆、ということは、つまり…」
レロスは言われてからハッとした。
バリアを張る際も、バリア形成直前に光が『漏れ出ていた』こと。
「その通り。まあご明察だ。私の属性は聖属性。君の真逆で、本来君のような存在が持つべきもののはずだ」
ウヌクはそう嘆いた。ちょっとレロスのことが羨ましそうにも聞こえる言い方で、レロスは申し訳なく思った。
「おい、いつまで呑気に話してやがんだ?」
上から声がした。ふと見上げれば、そこには宙に浮いた魔族が。ウヌクと似たような服を着ているので魔王軍だろう。
「おやおや、これはこれは。ウヌク様ではないですか。いまだに人間どもとの共存を願っている惨めな魔族」
そう言って過激派は笑って見せた。
ウヌクの尊厳を、見事なまでに破壊するかの如く。
「おい!言いすぎやしねえか?ウヌクだってお前らの幸福を願ってるはずだろ」
レロスは張り合うようにそう言ってのけた。
しかし、過激派は一貫して穏健派一派を排除し、最終的な人類滅亡への道を消すなんてことはしなかった。
「たかが人間如きが、我々に口出しできると思うなよ?三下」
過激派はそう言ってレロスを一蹴した。
ウヌクは「ぐっ…」としか言うことが今はできないようだった。
どうしてもそれしかできようがなかった。
「くそ、こういう時にあいつがいれば…!」
そう、この場にいないリーナスである。
そしてこの場に彼女の姿は全くない。というのも、リーナスは王都でも最高戦力と言われるほどの魔法使い。
現在はレロスが所持している立方体の代わりに、新たに魔法を発動する道具を見つけたそうで、1人でも戦えるようになっているようだ。
「彼女がいれば、と思っているのか?」
「ああ、いればなんとかなっただろうさ」
レロスはこれがごもっともだと思っている。
レロスとリーナスのパーティは、どちらかが欠ければ終わりだったのだ。何事も2人での協力あってこそだった。
それが今は崩れている。それは極めてまずいことだった。
「リーナスがいれば、こんなことにはならなかったのに」
レロスは誰にも聞こえない声でそう呟いたのだった。
「そろそろ気づいた方がいいって、己の不甲斐なさに。己の弱さに」
過激派はそう嘆く。否、傷心に漬け込むように。
彼らはそうやって穏健派から人を吸い取って肥大化していったのだろうか。
「そうやって、吸収していっては肥大化...まるで小さな肉食動物の子供がみるみる大きくなるようだな…」
「何?貴様っ、この期に及んでまだそのようなことが言えるか!!!」
そう言って過激派はレロスを蹴り飛ばす。
建物を突き破り、三棟ほど倒壊させたのちにレロスは倒れ込んで血を吐いた。
腰部のポーチを見れば、光が点滅していた。
一つ瞬きすれば、それはレロスの目の前に出現していた。
「なんだそれは。笑わせるな、そんな小さな石ころで何ができる?」
過激派はそう言う。彼らは本質に気づいていないらしい。現状魔王軍も情報収集が済んでいないどころが、場合によっては全く知らない可能性もあると言う説も浮上した。
立方体はレロスの目の前で光を放った。
「聖属性」が、レロスを癒していき、気づけば全治していた。
「なに...?貴様、何をした?」
過激派はそう言う。やはり何も知っていない。
…もしかすればこいつだけ知らない可能性もあるが。
「何をしている?...!!それは...なるほど...」
別の過激派が来た。彼の反応からすれば、彼は「知っている」ようだった。
「お前、これについて何か知っているな...」
「無論、これについては知っている...だが、貴様に教えることはない」
過激派は突っぱねた。予想通り、彼は教えてくれなかった。
仕方がない。やる他、道はない。
彼は決意した。立方体が黒く染まって行く。
「...貴様、何をする気だ」
過激派...知っている方でさえも怖気ついていることがわかる。
「お前たちは何もわかっていない」
レロスの声が少しだけ変わった気がした。
「これの本質に。これの正しい使い方に。」
レロスは少しずつ間合いを詰める。
「私の方が十分理解している。それで貴様が『理解』?笑わせてくれるな。貴様に何がわかっている?その代物が一体...」
過激派はそう言う。
しかし、レロス、否、レロスと立方体は違った。
「お前らとは違うんだよ」
───その直後、立方体は黒く染まりきった。
レロスからもとんでもない気迫を感じる。
過激派も、この気迫には耐えられないようだった。
「な、なんだ...」
視界が、世界が黒くなっていくように見えた。
「ブラックホール」
過激派は気付けば丘の上にいた。
夜空が広がっていた。とても綺麗だった。
「なんて綺麗な...人間どもを駆逐したら...いや、今はこんな幻術に惑わされている場合では───」
しかし、彼は「視認してしまった」。
特異点に。気づいてはならないものに。
──静かな夜空は、一瞬にしてその特異点に飲み込まれた。
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過激派は片づけれた。単独で。いや、2人で。
「助けてくれてありがとうな、立方た───」
後ろから剣撃の音が聞こえ、命の危機を感じたために、必死で身を捻って交わした。
「何事………は......?」
目の前にいる人物。その人物が自分を攻撃すること。
それがありえなかった。
彼女───否、リーナスが剣を持ってそこに立っていたのだから。
「ずっと、貴方を殺したくてたまらなかったの」
彼女は不気味な笑みを浮かべてレロスに斬りかかったのだった。




