第5話 「真相と疑念」
その晩は少し世間話をして寝た。
レロスは行動に移さないと、真相へ近づけないと悟った。
翌朝、レロスは「話がしたい」と、リーナスに告げてテーブルを挟んで向かい合った。
レロスは改まっているような気がして、リーナスは少しだけ緊張した。
「それで、話って何?」
リーナスはそう聞く。
「あのブロックとは、どこで出会った?」
リーナスは予想外の質問に驚きを隠せなかった。
まさか彼からそんなことを聞かれるなんて思っていなかったからだ。
「一応何でそれを聞くか、聞いてもいい?」
そう言ってポーチから取り出した「ブロック」…否、立方体が机の上にそっと置かれる。
「もちろん。まあ、それに触れたことでこの世界に来た。そして何か俺とこいつは法則性があるのか、適任なのかわからないが、何かあると見た。そこで元所有者のリーナスとこいつがどこで出会ったのか、と疑問に思ったんだ」
話はもっともであった。むしろ、今の彼にとっては聞かれて当然かもしれない。
リーナスは目を瞑って思い返す。遠い昔。いや、そこまで遠くないが、やや遠い過去に目をやった。
「そうだね...ちょっと話そう。私がこれと出会ったのは、私が7つの時だよ」
曰く、森の中を探検していたところ、発見していたそうだ。
当時から珍しい石だと思い込んでいたが、鑑定の結果石ですらない何かであると言われたので「ブロック」と呼んでいたそうだ。
「なるほど...つまり10年近くこれと一緒にいたのか」
レロスはそう口にした。
思った通り、やはりこれの本質には気づいていないらしい。
彼女はおそらく、これは「魔法を介して放てる『道具』」としか思っていないのだろうと悟った。
そしてその実態に驚愕と焦りを感じた。
この立方体で何かしてないかどうか、気にし始めたからだ。
「それで、これの正体は何?」
リーナスは目をレロスに向ける。
今か今かと、その問いへの返答を待つように。
「...これは立方体。持ち主次第では...いや、使い方次第では悪いこともいいこともできるものだ」
レロスはあまりショックを与えたくなかった。
そう、「持ち主によっては、世界を滅ぼしかねないもの」なんて口にしたら、リーナスはしばらく口を聞いてくれないだろう。
そうなればパーティ解散の危機にもなる。
「へえ、使い方次第では...それって、どんなことでも?」
リーナスはさらに問いを重ねた。
「あ、ああ。そうだ。悪いことだってできてしまうだろうな」
レロスは急な問いでびっくりした。まさかさらに聞いてくるとは思いもしなかったからだ。
さらに問いを重ねたらどうしようかと、ひたすら脳をフル回転させた。
しばらくしてから、ドアをノックする音が聞こえた。
「はいはい、どちらさ...ま......」
レロスはドアを開けて、そこに立っていた人物に驚きを隠せなかった。ウヌクだった。直後にリーナスから溢れ出たのは、憎悪にも近しい嫌悪の情。魔王の覇気のように、圧倒される。
「なんであんたがまた...」
「まあ落ち着きたまえ。私は別件で来たのだ。貴女に用はない。レロスに用があるのだ。レロス。魔王軍の中で君とそれを狙っていると言う動きが見られる。くれぐれも過激派には気をつけるように」
───レロスは突如として、忠告を受けてしまった。
ウヌク曰く、魔王軍には穏健派と過激派が存在するという。ウヌク率いる穏健派は、人類との両立を、先代魔王の血筋の者が率いる過激派は人類の滅亡を、それぞれ願っている。
過激派は各地で暴動を起こし、甚大な被害を受けている。その都度、穏健派がどうにかしていたようだが、今回はそれでどうにかなるわけではないようだった。
「穏健派から過激派に移ってしまった者がかなり多くいて、穏健派が少数になっている。守備は………かなり悪い」
ウヌクは申し訳なさそうにそう言う。
考えを改めたりして穏健派から離反して過激派に移り変わった者が多数いるようだ。どうやらかなり厄介なことになっているらしい。
「ウヌク、心配いらない。俺にはこれもある。自分にも力はある。少なくとも、あいつらをどっと言わせて───」
レロスは自信ありげにそう言い切った...その直後、爆発と共に何者かによる攻撃が始まったのだった。




