第22話 「星こそが道標」
切り札はまだある。本命以外に、もう一つ。用意してあったのだ。
「お前のやりたいことは把握済みだ、『色欲』!!!」
「欲がわかってるって?」
「お前は無償の愛を欲してるらしいな。でもそれは違う。僕が思うに、愛は有償なんだよ」
レロスはリーナスとの交際、それ以前の関係を一言で表すなら補う補われるという関係だったと考える。「実際、リーナスが重傷を負った時はレロスが、レロスの、ペテルギウス失敗時はリーナスが、そして今はお互いがお互いを常に支え合う関係が成り立っていた。
「愛は……有償……?」
「ああそうだ。お前の言う愛は……『色欲』のそれだ!!」
「聞いていればふざけたことを…!」
「奪われる前にお前を奪う。俺の好奇心が働いちまったからな!!」
そう言って2人戦闘を開始する。
乱闘だった。殴ったり蹴ったり。踏んだり蹴ったりみたいに、泥沼にすっかり浸かるような戦闘だった。
「アルコル!!」
レロスが詠唱したそれは、この世界に来て最初に唱えた魔法。魅了させる魔法だったが、さらに本質を深めることでさらに効果を発揮する。その効果は…
「なあああああああっ!?」
星灯の、串差し刑だった。
残酷だろうが彼女は色欲。いくらやっても生き返るだろう。無駄だとはわかっている。それぐらい、ずっと調査しているのだから。ずっと戦って体感しているのだから。
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「リー、今はくっつくのやめて」
「なんでなんで!私と一緒にいて嫌なわけ!?」
「嫌じゃないけど」
「ならいいでしょ!?」
交際前に色欲のことを調査していた時だった。
色欲の異能が主に2つあるのはわかっていたが、全部一個の結論に至っていることが改めてわかったのだ。
───人に化けたりする力。相手の愛情など感情を利用する。場合によっては精神攻撃も可能で、使い方次第ではかなり有能と言える。レロスは使いたいと思わないが。
───生き返る力。生きることに執着したと言える力。彼女にとってはこれなしでは生きていけないだろう。
これらから、色欲という言葉を考えるに、「愛」が何かしらの鍵なのだと、その時になって気づいた。ハっとした。確かにこれまで愛を欲していたような感じがした。初めて遭遇した時にリーナスを利用したのもそれが理由なのかもしれない。
「なるほど、あいつ本当に厄介だな」
「え、なになに?」
「大丈夫。『愛』はやっぱり誠心誠意の方がいいよねって思っただけ」
リーナスはわけわかんねえよこいつ何言ってんだと言うような顔をしてからちょっと笑った。
「レロ、変なの」
「え?何か変?」
頭の上をゴソゴソと触ると、髪が固い。結ばれている…?
鏡を見た。とんでもない髪型にされていた。
「リーナス!!!!!!!」
「あはははは!!!!」
…そんな出来事を戦闘中に思い出した。
まあ煽り文句としては有能だろう。輝きを失わないようにそのことを星にして覚えた。そしてさっきそれを言った。彼女が魔族としての本領を発揮したのは、そこからだった。
「泥棒猫からあんたを奪い!あんたを私を愛させる忠実な男にする!!」
「嫌だそんなの!!」
レロスはしばらく逃げることしかできない。アルコルは無駄だった。ポラリスも効果がない。グラビティも使った。エフェルは今ふと思った。最初からなぜか彼は浮いていた。風属性を使っている訳でもないのに、なぜ…?
「なんで浮いてるんだ、って思ってるのか?」
「なんでわかるわけ?」
「顔に書いてるんだよ。まあこれはアンチグラビティって奴だ。重力を生む力だな。弱めてこうやって浮いたりできる」
これもブラックホールの応用である。特異点を自分に置き換え、自分自身にかかる重力の調整を行える。
「でもまあ、これは下ごしらえにすぎない。あんたの自己愛の語りも聞き飽きたしな」
「なにを!!!」
「切り札があるんだろ?さ、放ってみろよ」
「…言ったね?」
レロスはうなづくだけだった。エフェルはニヤつく。
これで彼を奪えると。そう思った。これは好機だ、逃すわけにはいかない。
「闇よ、あの者の全てを吸い込め」
その詠唱は、闇属性最大威力を誇る、あの魔法の詠唱だった。レロスも何度も使ったことがある魔法だ。
「ブラックホール!!」
迫り来る黒いモヤに向かって、手を差し出す。手には立方体が乗っかっている。その立方体自体は黒いがやや光を放っている。レロスに呼応するように点滅する。いよいよブラックホールに飲まれ始める。
「やるぞ、俺とお前で。2回目の、蹴散らしを!!」
エフェルと共に黒いモヤに包み込まれ始めた、その時だった。
「超新星爆発」
レロスは詠唱完了と同時に、黒いモヤに包み込まれた。
黒い球体となり、徐々に小さくなる…のが通常の挙動だった。
しかし「違った」。むしろヒビが入り、エフェル側の状況は悪化する。黒いモヤの中から声にならない叫び声が聞こえる。立方体の色が「反転」する。白くなり、黒いモヤから光が溢れる。どんどんと、どんどんと。
そして、大きな衝撃音と共にそれは爆散した。そして、中から現れた黒いフード付きローブのフードを深く被った男が立ち、エフェルの体はそこに倒れていた。
黒いフードの男…レロスはフードを外し、グーの手をして天へ高く捧げる。
「ここに!!『色欲』を討伐したと証明する!!!よおおおし!!!お前らああああ!!!かかれー!!!!!!!」
「えっちょっま」
今度はエフェルの下っ端の過激派の声にならない逃げ惑う声が響き始めたのだった。
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「よくやった、レロス!」
「流石でした。よっ、王都を二度救った英雄!」
「どうもどうも」
「リーマス夫人もお疲れ様でしたね」
「夫人だなんてそんな!!!」
「いだっ?!???!?」
穏健派の若い魔族が思いっきりしばかれた。
そう言うわけで、事の成り行きで祝賀会が行われることとなった。豪華そうな肉料理は、王城からの差し入れ。ポテトとその他は付近で迷惑を被っていた農家から。
多くの人から感謝される結果となり、結果として大勝利を収めた。
「何がともあれ、無事終わったことに感謝だ」
ウヌクはそう言う。実際に今回の戦いで穏健派は一命たりとも失わずに過激派を壊滅させた。
「よかったよ本当に」
「にしても超新星爆発だなんて、よく思いついたね」
「ペテルギウスって星は俺の元いた世界では爆発しかけてる星なんだ。…こっちでは元気なんだけどな」
そう言って上を見上げる。一番目立って輝くあの星が、ペテルギウス。この世界ではペテルギウスはまだまだこれからと言う星だった。
「宇宙は広いんだなあってしみじみ思うよな」
「レロスの魔法を見ると尚更だな」
「ああ本当に」
『強欲』と『傲慢』の会話。
「うえええい!!」
「おら酒飲め!!!」
「うべべべべべべべべべべべ」
グェードと、若い魔族。…若い魔族が酒を強制的に飲まされているが。そして、すぐそばに立つ人物へ目を向ける。
顔立ちは整っており、髪はとても薄めな紫色..年齢は同年代だろうか、レロスがよく読む異世界小説ではあるあるの美少女...レロスの好みど直球をいく容姿をしている少女が、頬を赤らめてレロスのことをじっと見ていた。
「どうしたの?」
「初めて会った時のことを思い出した」
「そう?」
「その時から惚れてたからね」
「え?そうなの?」
「ああ、そうだ」
レロスは真剣な顔をした。真剣な顔で見つめる。
リーナスは見つめられて照れる。恥ずかしくて、顔を隠すが、レロスが口を開いた。
「改めてになるけれど、リーナス、好きだ。大好きだ。僕と付き合って欲しい」
周りにいた全員がレロスとリーナスを見る。
手を差し出したレロスは、深々と頭を下げて目を瞑った。
手を握られた。受け入れてくれたと思った。
そうして顔を上げて口を開く。
「リー…」
「おじさんとお話しなァい?」
酔っ払ったグェードが手を握っていた。
レロスの顔は真っ青、真緑になって、叫んだ。
「放せよ!!!酒くせええ!!!」
「全くひどいぜ」
しばらくして、再びレロスは頭を下げて手を差し出した。
今度こそ。リーナスの今の気持ちをとお
「はい。私はあなたの彼女ですから」
「リーナス…!!」
「公認カップル誕生だぜ!!!祝杯をあげろおおお!2人を祝福だあああ!!」
即答だった。
レロアスやウヌクもニッコリとしながらその場を眺める。祝福ムード、戦勝ムードがぐっちゃぐちゃのこの空間において、負の感情はないだろう。あったとしたら怖い。
「あんたもこう言う場にいていい気持ちになるか?」
「あの2人には色々と縁があるんだ」
「へえ、そうかい」
「私も忘れないでいただきたいですね」
「げっ、正教会」
「げっは不要ですよ、隊長殿?」
正教会最高顧問、ヴィナスもその場に居合わせた。
三者三様。目的は違えど、目指す方向は一緒の3名が祝杯をあげ始め、いよいよ祝賀会はクライマックスを迎えたのだった。
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リーナスはしばらくしてからレロスと旅行へ出かけた。前回は温泉街だった。今度は、海へ行くことに。それも、ウヌクとグェードを引き連れて。
楽しい楽しいバカンスが始まろうとしていた。




