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第15話 「開戦の狼煙」


「ブラックホール」


黒く染まった立方体とレロスから、黒いモヤが勢いよく吹き出して魔王軍の軍勢を包み込み、吸い込んだ。


全員に一瞬星空が見えたが、全員は何かの幻覚かと思って、無視したが、その夜空はこれまでとは違う。リーナスは誰よりも早く気づいた。その夜空は前以上に美しく、呆気に取られる夜空をレロスは完成させた。完璧なまでにレロスは輝きを取り戻して見せた。それどころか、輝きを増してきたのだ。


モヤに包まれた魔王軍は一つ誤認してしまった。

その「幻覚」がレロスの「ブラックホール」によって作られたものである、と。ただ夜空に包まれただけだと、そう勘違いしていた。しばらくして、魔王軍過激派の1人が見てはいけないものに。否、見なければよかったものに、気づいてしまった。

刹那、彼らは夜空が広がる高原から何も見えない闇に閉ざされる。現実ではモヤが一点に集中し、黒い球となったのちにヒビが入って割れた。ガラス玉のように一瞬で割れてしまった。とても虚しく。


「レロスがやったぞ!!俺たちも続くぞ!!!」

そう叫んで穏健派は一斉に残る過激派と衝突した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レロスは心のうちに闇が溜まっていないか再度確認し、輝いていることを確認して対色欲戦の準備を開始しようとしていた。


「おいおい、過去の俺よお、そんなにカッコつけてえのか?さっきも俺の闇を「照らしやがった」よなあ?」

「よお未来の俺。あんたに構ってる暇は御生憎様ねえんだわ。少なくとも、お前みたいに俺は闇に閉ざされていない…数多くの希望が俺を後押ししてくれているからな」


そう言って煽り立てるケルベスを一蹴する。


「おまっお前えぇぇえええぇぇ!!!!」

「どうしたどうした!過去の俺が立ち直ったこと、リーナスに求められていることに嫉妬でもしてるのか?それとも………俺が「光」を持ってして立ち直ったことへの苛立ちか?」

「お前に答えることなど…ないっ!!!」

「ああそうかい」


そう言って2人のレロスは衝突する。

リーナスはそれをただ見守ることしかできなかった。なのでレロスには本物の印はない。強いていうなら立方体を持っているかいないか程度で、あまり闇属性に染まっている立方体も夜で暗いせいで目につかないので見分けがつかない。


「お前はどうしたら…!そうやって立ち直れる!?」

「………ひたむきな努力。知りたいと心の底から思える好奇心。…愛する人がいる、その人が待っているからこそ今を生きたいという希望。俺はそれだけで十分生きられるさ」

「やはりお前と俺は違う…違うんだぁあぁぁぁぁああ!!」


ケルベスは彼方此方に闇を解き放つ。とことん黒いそれはレロスを次第につつみこむ。


「レロ…!?よくもレロを……!!」

「リーナス落ち着け…見てみろ」


遠目で見ていたリーナスは心配をしたが、ウヌクがリーナスを落ち着かせて再度冷静に見てみるよう促した。すると黒いモヤに包まれたレロスだったが、そのモヤから溢れた「明るい闇」によって逆にケルベスを閉じ込めて見せた。


「ポラリス」


そう言って発動するのは、色覚系誘導魔法の「ポラリス」。人類は古より、北極星を導としてきたとされる。そんな北極星の虜となってしまうのがこのスキル。しかしレロスが完全復活した現在は、その北極星はいつも以上に目立っていて…


「くそ、自分ながらなんてすげえ魔法だよ…こんなの見ないとか無理だろ」


そう言った直後にケルベスは切られてしまった。

肩から腰にかけて、斜めに切られたのだ。リーナスからの大事な贈り物であるあの星が、ひときわ目立つのだ。それに目を奪われてしまったのだ。レロスは一応自分であるケルベスの亡骸を見つめた。


「お前の闇も照らしてみせるさ」

「ああ、そうかい。できるかどうか見ものだな………」


そう言ってケルベスは気を失い、彼の遺体はモヤに包まれて消された。否、吸い込まれたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


黒いモヤが立ち込めているその近場でリーナスは黒いモヤからレロスが生きて帰ってくると信じて祈り続けた。ずっとずっと、モヤが薄れるまで。

薄れてくると中からレロスが戻ってきたことを確認して安堵の息をつき、そして少し泣きそうになってから、ゆっくりとレロスに近づく。


「レロ…だよね?」

「ああそうだとも。…リーナス」

「よかった、生きて帰ってきて」

「流石にあれじゃあ死なないよ」


レロスは笑ってそう言ったが実際は押し返せるか不安だった。というのも、一度経験済みの闇属性であるので、対策自体は容易に可能。しかしケルベスの闇はどこまでも深く、暗い。一回あちらに飲み込まれたら脱出はほぼ不可能と言ってもいいだろう。

辺りを見ると、穏健派及び王都軍と過激派が攻守を切り替えながら戦闘を続けている。


「こりゃ、どっちが勝ってもおかしくないな」

「ええ、そうね」


レロスは再度リーナスの腕元を見た。

そして確信した。彼女は──────。


「ところで…お前もここで何してんだ?」

「へ?レロ?」

「とぼけても無駄だ。お前は『色欲』だろ?」

「え?違う違う!本当だってば!」

「何が本当なんだ?色欲であることが?」

「ひ、ひどいよ…」


レロスは腕元を見た。ブレスレットをつけていない。

よって彼女は「偽物」であり今の彼女がレロスに向ける愛は「偽り」であると。


「酷い?お前の方が酷いだろ。人の純情を弄びやがって…!!」



「………はあ、面白くないな」

「やっと本性を見せたか」


そう言ってリーナスは真の姿…エフェルとしての姿を見せた。

「私は魔王軍7大幹部が1人、エフェル。そう、あなたのいう通り偽物。なぜわかったかは聞かないけど……前とは少し違うようね」

「お前のせいで散々な目にあったからな」

「あらそう?まあ精神的に強くなったなら結果オーライじゃないの?」

「結果オーライもクソもあるか。ここでお前を倒し、この王都を救ってみせる」


レロスは決意する。再びこの王都を救ってみせると。

今度は誰も失わずに。誰も彼も生きて帰って来れるように。

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