第16話 「惑わすもの」
両者の闇が激しくぶつかり合う。その闇は片方が限りなく暗く、片方は闇の中から輝きを見せていた。
「やっぱり君の闇は何か違うね」
「あんたの闇が正統派だろうよ」
レロスはそう言ってのける。彼は闇属性は闇属性でも、かなり特例の闇属性の使い手だった。
世界的にもごく稀に見られる「光明」。それは────。
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時は遡り、数ヶ月前。
図書館にて闇属性やその他について探求を進めていたレロスは、闇属性の本を読み漁ることに夢中になっていた。
「なるほど。闇属性は『吸い込む』…なんだかブラックホールみたいだな」
ブラックホールは重力がかなり強い宇宙でも謎に満ちた天体の一つ。光さえも、その光から逃げられない…
故に、特異点でしかない。それへの好奇心は収まることを知らない。吸い込まれたらどうなるのか。重力がとてつもなく強いなら一瞬でぺちゃんこだろう。
「やっぱり興味がわくなあ」
レロスはそう言って闇属性は雰囲気がブラックホールだと仮定づけて次のページをめくったのだった。
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「果てしなく暗いな、やっぱり」
「君こそどこか明るい。一回吸い込まれた経験はあるけど、やっぱり興味深いね」
「まあ“今のお前”と探究心を深め合う気はないな」
「ははっ、全てお見通しってわけ?」
両者譲らない闇のぶつけ合い。リーナスはそれを遠目から見守っていた。側から見ればただただ黒い煙がぶつかり合っているだけにすぎない。まるで暖気と寒気がぶつかり合う感じで。しかしリーナスには“見える”。暗い闇と明るい闇がぶつかり合ってせめぎ合いをしていることに。しかしその両者の「闇というものの意義」のぶつかり合いを良しとしない者もいた。
「このままでは埒があかない。俺は行かせてもらう」
「えっちょ待ってよ」
ウヌクは聞く耳を持たずに飛び出していった。
それはまさに闇のもとに光が飛んでいくような形で。皮肉にもその光には明るい闇でさえも敵わないだろう。
何せその光はどこまで行っても「傲慢」でしかなくて。
「なんでこう、あいつは自分勝手………ああ、そっか。『傲慢』なんだもんね…」
そうしてリーナスは1人で疑問を抱き疑問を解決した。
リーナスは内心様々なことを考え詰めながら目の前で苦戦する仲間の元へと飛び出していったのだった。
「やあ、魔王軍『過激派』の諸君!私は────。」
レロスへの親愛を超えた愛を以って彼女は名乗り出たのだった。
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レロスとエフェルのぶつかり合いとせめぎ合い、乱闘が果てしなく、限りなく続く。闇がぶつかり合い、暗さは一層深まっていく。
「なるほど。あんたの闇も相当深いな」
「あなたもね。愛と希望、それ以外にもたくさんの要素で構成された『明るい闇』」
レロスはエフェルの暗い闇に、エフェルはレロスの明るい闇に、それぞれ理解を示した。どこか思いが通じ合っているように。まさにそんなところだった。
「お邪魔するぞ、お二人とも」
「…またあんたってわけ?」
「ウヌク、なんのつもりだ」
「レロス、このままだと埒があかない。私は魔王軍7大幹部が1人、ウヌク。お前たちを照らしてやる者だ」
聖なる光は、闇を照らし出すようにその場に現れた、はずだった。味方であるはずのレロスによって弾き出されたのだ。否、明るい闇に弾き出されたのだ。
「んなっ…レロス!一体どういうつもりだ!!」
「わかるだろ、今俺はこいつと対話してるんだ」
「過激派に取り入るつもりかっ…!!」
ウヌクは内心焦り始めた。レロスは穏健派の内情をよく知る人物。それに作戦に関しても全て把握しているであろう。そんな内部情報を知り尽くした人間が寝返れば、穏健派にとっても、王都にとっても、世界にとっても痛手となる。
「お前は何もわかってないんだ」
「なに?」
「どちらにせよ魔王軍だ、穏健派も過激派も。終着点は一緒だろう?」
「………」
ウヌクは度肝を突かれてしまった。まさかそこまでお見通しとは。レロスは魔王軍という組織の内情にも好奇心が働き、とにかく調べ尽くした。
その組織はいつから存在したか。その組織の内情は?内部は?勢力は?実績は?
その全てをレロスは知っている。今は口に出さないが。
「さ、お兄さん!攻撃の手段を緩めちゃあダメだよ」
「いやすまねえが俺はここで退出させてもらうぜ。相手は『傲慢』はしてくれるだろうよ」
「はあ??あいつロクな相手にならないんですけど」
「その時はロクな相手じゃなかっただろうよ。今のあいつは………強い」
レロスはそう言って何処かへと消え去る。直後に光が闇を突き破って入り込む。そうして光と闇は再び衝突したのだった。
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「過激派って聞いたから強いと思ったのにこの程度なの?」
「ぐうっ…!」
リーナスは過激派を圧倒し、山のように積み上げてその頂上にゆっくりと腰掛けた。幹部が圧倒的なだけで、大して強く無かったことに驚きを隠せなかった。
ある程度片付けれた、そう考えたところでレロスがやってきた。
「リーナス…って、何があったんだ、これ…」
「あ、レロス!よかった、無事だったんだね」
「ん?ああ、まあなんとか」
「過激派、下っ端はやっぱりそこまでだった」
「幹部と戦ってみろ!死ぬぞ、油断したら」
「そりゃそうでしょ……まあでも、無事でよかったよ」
「それで………!!!リーナス、後ろッ」
「わかってるよ!“アース”!!」
詠唱すると土の壁が生まれ、攻撃を見事に防いだ。
攻撃が飛んできた方向を見ると、人影が空を浮かんでいた。その人影が剣を一振りすると、再び攻撃が襲い掛かろうとする。
「防いでる雰囲気を見ると、これを至近距離で食らったら即死だろうね…」
「だね、これは避けられないだろうね…」
そう言って2人は遠くを見る。
その「剣振り」は遠くからレロス達のことを標的にして狙い撃ちをしているようだった。
レロスとリーナスは二手に分かれ、それぞれが剣振りの元へと向かう。レロスがまず、接近を試みるが、近づこうとしたタイミングで気づかれてしまった。リーナスも後ろから気づかれないように出来る限り接近するが、また同じように見つかってしまう。
「なんでこうも気づかれるんだ…!?」
「察知系の能力を使ってるかも」
「察知系だって………!?」
「ほら、彼ずっと遠距離で打ってるじゃん?多分至近距離はとても弱いよ」
「いやでも多分強いよ、この感じは幹部に匹敵…『外幹部』かな」
「聞いていれば魔王軍扱いなんてひどいな」
剣振りはついに口を開けた。それも、どこか被害者面で。レロスとリーナスはそれに驚きを隠せず、目を大きく見開く。立方体も飛び出て臨戦態勢を整えた。
「じゃあ名乗ればいいじゃねえか」
「ああそうだな。俺は王国軍空中騎士隊第一部隊長、“レルアス”。国王陛下の勅命により、貴様ら魔王軍を討伐しにきた」
そう言って剣振り─────否、レロアスは名乗り出たのだった。
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「そろそろ疲れてきてるんじゃないのっ!?」
「いや、全くだな」
「……権能か!」
「察しがいいな、その通りだ。あとは状況を察することができれば100点だが」
ウヌクとエフェルはそう言って取っ組み合いをしながら煽り立て合う。レロスとリーナスは過激派を相手したのち、「味方であるはずの王国軍」と。そして、さらなる勢力がこの戦闘に加わろうとしているなど、考えもしないだろう…。




