第12話 「輝ける星」
リーナスの提案で温泉街アルウェルへと向かう一行は、道中襲撃に遭ってしまった。
「金目のものは出しなァ!!!」
「嬢ちゃん、こっち来な!いいことしてあげんよ」
盗賊はとことん金目のあるものと女にしか興味が湧かないらしい。まあそんなことしかしないからというのが一番妥当な判断だろうが。
「あんたたちのついてくくらいならここで死んだ方が何倍もマシよ」
「お、おお…リー、すっげえ強気に出てんな」
「出てないと舐められちゃうよ???」
「まあそれもそうか」
「とりあえずレロスは下がってて。一応準備だけお願いね」
「はいはーい、できる限りやってみるよ」
そう言ってポーチから立方体を取り出す。
立方体は久々に持ち主の顔を見て「何かいいことでもあったから気分が幾分かマシになったんだな」と言わんばかりに点滅する。そうしてちょっとずつ、ちょっとずつ黒く染まっていった。
「お、おい!そこの兄ちゃん!その石よこせや!売れば高値がつくだろうよ…!」
「んだとォ!?聞き捨てならねえな!あの兄ちゃんを優先するぞ」
「それを私の前で行っちゃうとはね」
「ぐはははははははははは!!!」
電撃魔法をまともにくらい、盗賊を2人削ることに成功したが直後に他の盗賊が一斉にリーナスへ襲いかか─────。
「ブラックホール」
瞬きすると盗賊がいた場所に黒いモヤが現れていた。
リーナスは再びレロスの現状最強魔法、ブラックホールの世界を垣間見ることができた。未完全とはいえ、やはり美しく、儚く、見惚れる世界観だった。
「助かったよレロ〜」
「とりあえず移動を再開しよう…俺もあまり本調子ではないし…道中ぶっ倒れたら…」
「大丈夫だよ、きっとね」
「お客さんら!無事でしたか!」
馬車の運転手がそう言って駆け寄ってくる。
汗だくでかなり心配していたのだろう。急に周りを盗賊に囲まれ、乗客が飛び出して盗賊を蹴り飛ばすものだから、びっくりであろう。何より………。
「王都の英雄がこうして私個人を助けていただいたのは一生の思い出にします…!!!今回の運賃、往復代結構です!受け取りません!!」
「いやあの受け取ってくだ」
「う、け、と、り、ま、せ、ん!!!!」
「あっはい」
────運転手は頑固であった。
一方でレロスの心に灯る星は再び数を増やし、徐々に心は晴れていく実感があった。人助けをしたことからの感謝がモチベーションになっているだろう。そして、同時にプレッシャーも感じた。自分の正体がわかっていれば、絶大な期待をされる、と。王都を救った英雄。彼の民衆からの肩書きはそれであった。
「にしてものどかだな」
「この辺は昔は立派な住宅街だったんですが、アルウェルに吸収されて消えました」
「それで畑ばっかになった、と」
「ええまあ、そんな感じです」
運転手と何気ない会話をするレロスは隣に座っているリーナスのことを大事そうに頭を撫でた。撫でられて心なしかリーナスも笑顔を隠しきれていなかった。
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「それじゃあここで…本当に運賃は…」
「結構です」
「あ、じゃあ帰りもよろしくお願いしますね」
「はーい、お気をつけて」
運転手と別れ、レロスはリーナスと共にアルウェル旅行を開始した。
まずは宿へと足を運ぶことに。老舗旅館で、質の高いサービス提供をすることでおなじみな知らない人はいない旅館だそうだ。
「ようこそお越しくださいました。ごゆっくりお過ごしください」
そう言って女将の案内で案内されたレロスとリーナスは、絶景が見える豪華な部屋に呆気を取られてしまった。
そこから広がるのは、王都と美しい自然の絶景だった。
夜になれば王都の夜景も見えるそうだ。
「一旦荷物は置いて、ちょっと出かけよ?」
「ああ、そうしよう」
そう言って2人は荷物を置いたのち、必要最低限の荷物を持って旅館から飛び出し、最初に向かったのはアルウェルでは忘れてはいけない場所の一角、アルウェル展望台だった。
「ここ綺麗だね〜」
「うん、そうだね」
「ちょっと気分良くなってきた?」
「うん、昨日に比べたら全然マシだよ」
「そ、ならよかった」
リーナスがレロスのことをそう何気なく気遣った後、展望台から美しい夕焼けを一望した。
その夕焼けに2人で包まれていくような気がして。2人して「世界が自分たちの関係を認めている」ような気がして自らの鼓動が早く大きく刻み始めたので、相手にこれが気づかれていないかとてもドキマギした。
しばらくして、夕焼けは消え去って「静かに闇が訪れた」。空には数多くの星々が現れる。
「まるでレロスみたい」
「それはどういう………ああ、そういうことね」
リーナスは空に浮かんでいる星々を見てそう呟く。レロスは一瞬戸惑ったが、それが「自分の思い描く闇」であることに気づいてそれ以上は言及しなかった。
「本当に綺麗………でも…」
「でも………?」
そっとリーナスはレロスに近づいて、肩に頭をこてんと傾ける。
そんなシチュエーションに、レロスはただ1人ドキドキするのだった。
「レロスの星空には、全然敵わないよ」
おそらくリーナスからぽろっと出た一言だったが、それがどれだけレロスの心を照らし、輝かせるか。
レロスは隣でバレないように、こっそり涙を流した。一つは、心が温まって照らされていく温かい何かによる誘発。もう一つは、愛しい存在からの意図せぬ励ましからくるものだった。
彼の心にはすでに、多くの星々が散りばめられていたのだった。
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2人はしばらくその場で留まってから、宿へと足を揃えて向かった。
風呂も済ませ、夜は徐々に深まるが、特段何かあったかと問われれば、何もなかった。
強いて言うなら、レロスがここ最近に比べればかなり様子が変だったこと。
この異変が、悪いものではなくいいものであることをリーナスは1人静かに願っていた。




