第11話 「暗い闇と明るい闇」
レロスは自身の闇属性と本来の闇属性がどういう風に違うのか、興味を持ってリーナスに聞いてみた。
しかしリーナスは聞かれたことより、『本調子のように見えた』レロスの異常さにびっくりした。
「レロス…無理して普段通りにしなくても…」
「リー、これは聞いときたいことなの」
「…あーもう、わかった!これ答えたら今日はもうゆっくりしてて!」
そう言って彼女は隣に座り込む。
少し考え詰めた様子だったが、深呼吸をして話し始めた。
「レロの闇属性は、綺麗だよ。とても。心を奪われるくらい明るい」
「明るい…?」
「そう、明るいの。でも普通は暗いんだよ。何も見えなくて不安になる。大事な人でさえも………見失いそうになるかもしれないくらいには」
彼女は少し声を震わせてそう言う。一回は見たレロスの闇属性は、説明通り明るい。満天の星空が広く、広く広がり、綺麗な星々が我々を照らすかの如く輝いていたのだから。
ある意味闇ならではの光景に見惚れることに特化したと言えるだろう。
「どんな風に明るいんだ?」
「えっとねえ…イメージで言ったら『夜の野原で空一面に広がってる星空』みたいな感じ?」
「それは明るいのか?」
「心は洗われるね、絶対に。あんなの見たら誰でも見惚れちゃうよ」
「まあそこは人それぞれだけど…普通はもう何も見えないんだよね?」
「うん。なんにも」
リーナスが説明するように彼の闇属性はどちらかと言えば宇宙に限りなく近いだろう。数多くの星々が闇の中で煌めき、その一生を費やして輝き続ける星々が数多くある宇宙。そんな「闇」を世界はレロスに与えたのだ。
「私としては今の方が心配にならずに済むんだけど、いつもの頼り甲斐のあるレロスの方が好き。意識もしてる」
「え…?」
「恥ずかしいことなんだから2度も言わせないでよ?それでね………えーっと、何を言ってたっけ。すーぐ忘れちゃう。ええっと、えーと、うーん…」
「俺が頼り甲斐があって意識しているよとかなんとか」
「ああ、そうそう。今の弱々しいレロスを介抱してあげるのも悪くはないけどいつもみたいにはしゃいでクエストに行ったりして、その時に私を頼って、私が頼ってる貴方が返ってきてくれるのが待ち遠しい。だからね」
リーナスは今思っているレロスへの気持ちをできる限り文字化した。そして口に出した。若干告白混じりだったのは承知の上で、深呼吸をして話し続ける。
「私は、貴方が輝いてくれて、私やその他の人たちを闇から救って照らしてくれるって信じてる。だから、まずは自分を大事にしてあげて?私は……そんな貴方の方がもっと好き」
リーナスはレロスにしっかりと目を向ける。頬を赤らめながら、少し早口気味で。
レロスは急な告白に驚きを隠しながらも赤面した。
「サラッとそういうことを言えるの本当にずるいと思う」
「え〜、そうかな?」
「そうだよ。絶対。俺から言おうと思ってたのにさ」
「え?」
「まあ戦いが終わったら、ちゃんと返事はしてあげる。でもまず言わなきゃいけないことがある」
「え?何かやらかした?下着とっていったとか?それだったらさっきのは撤回!今すぐここから飛び降りて!!」
「違う違う!そうじゃなくて!……また、照らしてくれてありがとう。希望を持てたよ。少し頑張ってみる」
まだ闇は晴れないけれど。気難しいところではあるけれど。彼女の本音を聞けた。何より自分をとても大事に思ってくれている。それは疑うことが許されない、紛れもない事実でしかなかった。
レロスの心に一つの星が灯る。無駄はなく、一生懸命に輝く星が、レロスの心を照らし始めたのだった。
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『闇属性。それは明るいはもってのほか、暗闇に、暗黒に、果てしなく黒いもの。大半は闇に閉じ込め、光、物体、生き物など、あらゆるものを闇に閉じ込める。対となる性質は、「聖属性」。』
「…暗黒…」
レロスはそう溢す。これは失敗ではない。あいつの魔法によるものだとこの文でわかった。
図書館から借りてきた文献を総当たりで読み漁っていたレロスはこの一文に目がついた。心が闇に閉ざされてしまっている。これは紛れもなく事実だったが、誤解があった。この闇が自分の失敗によるものではなく、他者が手を加えたものだったということだ。
つまり「ペテルギウス」は失敗ではなかった。
「ペテルギウス」の不発に乗じてエフェルが闇属性で小細工を行ったのだ。
到底許されることではなかった。
攻撃予告の日付まで、残り数週間。残り3ヶ月だった頃、自分たちは意気揚々と対策を講じていた。それは全て無駄だった。彼らをあっと言わせる、とんでもない戦法をレロスは考え続けていた。
「レロ、ちょっといい?」
「ん?」
「あのね、ちょっと旅行しない?」
「え?いいけど別に」
「いいの?」
「リーとならどこへでも。闇の中光の中海の中山の中」
「どこまでもついてきてくれるの!?」
「まあ、うん」
「ええと、それでね、この温泉街…観光地なんだよね。行かない?」
そう言ってリーナスはパンフレットを渡す。
温泉街「アルウェル」。疲れやストレスを発散できる温泉と旅館、夜には王都の夜景を一望できる高台など、幅広い観光スポットを兼ね備えたこの王国有数の観光地だった。
アクセスは王都から馬車で30分とかなり近く、アクセスもしやすい。
「いいね、ここ。行ってみよ」
「やった!」
リーナスは提案を承諾してくれたことに喜び、レロスはリーナスと旅行に行けることへ喜びと、新たな星々が心を照らしてくれるという謎めいた直感を抱きながら、旅行の支度を開始するのだった。




