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第7話 元主婦、立ち上がる
「まったく、困ったお方だよ」
昼食の片付けを終えた厨房から、太い声が聞こえてきた。
鍋の湯気と焼きたてのパンの香りが漂っている。
思わず、足を止めた。
「また人参だけ、きれいに残してらあ。勿体ないったらありゃしない」
「昨日はじゃがいもも残されていました。根野菜がお嫌いなのでしょう」
「小さく刻んでも、スープに混ぜても駄目だ。誰も注意できねえしなあ……」
——リリア様は、人参とじゃがいもが嫌いなのね。
その瞬間、遠い記憶がよみがえる。
咲香も、人参をそっと皿の端によけていたっけ。
でも——。
食べない子には、食べない理由がある。
私は気づけば、一歩前に出ていた。
「……あの」
料理人たちの視線が集まる。
胸がどきどきする。
それでも、口は止まらなかった。
「わたくしに、お任せいただけないでしょうか?」




