第三十三話 晒された恥辱とクラウディアの贖罪
ゲオルグは、屋敷を出ると足早に揚陸艇に戻ってきた。
クラウディアたちを屋敷に置いてきてしまったが、ゲオルグはそれどころではなかった。
自分の荷物を置いている乗組員用の部屋の一つに入ると、部屋の明かりは就けずに常夜灯が灯る薄暗い中で下着姿になってベッドに横になり、毛布を身体に掛けると大浴場での出来事を振り返って思い出す。
まさかクラウディアが自分のタオルの裾を掴んでいるとは思わなかった。
立ち上がった自分は、温泉に浸かっていたゾフィーの目の前に股間を突き出している姿であった。
突然の出来事にギョッとして目を見開き、股間を見つめて固まるゾフィーの顔。
軽く悲鳴を上げて両手で顔を隠すエミリアたち。
彼女たちの裸を見て自分が欲情していたことを知られたことが堪らなく恥ずかしい。
タオルの裾を掴んでいたクラウディアが悪いのではない。
慌てて立ち上がった自分が間抜けだったのだ。
ゲオルグは、明日以降、彼女たちから白い目で見られるのではないかと思い、憂鬱な気分になる。
「はぁ……」
ゲオルグは、深いため息を吐くと頭から毛布を被る。
クラウディアたちは、入浴を済ませて揚陸艇へ戻ってきた。
帝国軍の揚陸艇は、格納庫に蒸気戦車四両を搭載できる広々とした空間があるほか、上陸戦を援護するための大砲や、作戦行動期間中、乗組員が生活できる設備を備えていた。
ゾフィーやエミリアたちは格納庫で談笑を始めるが、クラウディアは足早に格納庫を抜けて奥へ進み、ゲオルグのいる部屋を探す。
(ゲオルグに謝らなきゃ!)
クラウディアは、焦燥に駆り立てられていた。
クラウディアは背中を流してあげようと、ゲオルグが股間を隠しているタイルの裾を掴んだ瞬間、彼が浴槽から立ち上がってしまい、彼は女の子たちの目前に股間を晒すことになってしまった。
不本意な事故とはいえ、自分がゲオルグに恥をかかせてしまい、彼は怒って帰ってしまった。
不安から悪い考えが次々とクラウディアの頭の中をよぎる。
帝国は軍事国家であり、一夫多妻制の男尊女卑社会である。
どの女を正妃にするのか選ぶのは男の側であった。
ゲオルグが恥をかかせた自分ではなく、別の女を正妃に選ぶのではないか。
自分より生家が格上で博識のゾフィーを正妃にするのではないか。
自分より女の子らしく可愛らしいエミリアやカタリナ、エリーゼを正妃にするのではないか。
自分はゲオルグから捨てられるのではないか。
(どうしよう……)
不安から足早に歩いてゲオルグを探すクラウディアの目に涙が浮かんでくる。
クラウディアは、揚陸艇の乗組員用の部屋の一つで、ゲオルグが備え付けのベッドで横になっているのを見つける。
(いた! ゲオルグ!)
クラウディアは、目に浮かんだ涙をふくと平静を装い、ドアを開けたまま部屋の入口から覗き込んで、ベッドで横になっているゲオルグに話しかける。
「ゲオルグ。ここにいたの?」
「ああ」
ゲオルグは、ベッドに横になって毛布を被ったまま、気力の無い返事をする。
クラウディアは意を決すると、ゲオルグに謝罪して尋ねる。
「ゲオルグ。ごめんなさい。恥ずかしい思いをさせて。……怒ってる?」
「……別に」
クラウディアは、ゲオルグが怒っていないことに軽く安堵すると、部屋の中に入ってドアを閉め、先日と同じように服を脱いでパンツだけの姿になり、ゲオルグが横たわるベッドの縁に腰掛ける。
クラウディアは、確かめるようにゲオルグに話しかける。
「ゲオルグ、大丈夫?」
「ああ……」
クラウディアは、ゲオルグが怒っているのではなく、落ち込んでいるのだと察する。
「そんなに気にしなくても……」
「……」
「ゲオルグ、今までも私に見せてるじゃない? ゾフィーもエミリアたちも『大きくて立派だ』って言ってたし……」
クラウディアは、ゲオルグを励ますつもりで言ったのだが、それはゲオルグにとって『彼女たちにしっかりと見られていた』ということでもあった。
クラウディアの言葉は、ゲオルグの神経を逆なでする。
ゲオルグは、苛立ってムッとした顔で起き上がると、クラウディアの両肩をつかんで自分が寝ていた場所にクラウディアを押し倒す。
ゲオルグは、驚いた顔のクラウディアに告げる。
「あのなぁ! 簡単に言うけど『見られる』ってのは、恥ずかしいんだぞ!?」
そう告げると、ゲオルグは押し倒したクラウディアのパンツに両手を掛けると、少しだけ彼女のパンツを降ろす。
ゲオルグとしては、クラウディアに自分が負った心の傷を再び抉るような言動をやめさせるため、『パンツを降ろすぞ』と彼女を軽く脅かしたつもりであった
クラウディアは、ゲオルグの態度が豹変して自分をベッドに押し倒し、下着に手を掛けたことに驚くが、頬を赤らめて顔を彼から背けると、意を決したように静かに答える。
「……良いよ」
ゲオルグは、想定外のクラウディアの反応に驚く。
(えっ……!?)
クラウディアは続ける。
「ゲオルグが見たいなら……」
(それで許してくれるなら……)
ゲオルグは、彼女がそれを受け入れることは想定外であった。
しかし、口に出してしまった以上、あとには退けないゲオルグは、生唾を飲み込むと、ゆっくりとクラウディアを脱がしていく。




