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第15章:最強の男ー1

 カエサル王城、最深部に位置する戦略会議用の円卓室。


 分厚い黒鉄と防音の魔術障壁に囲まれたその部屋の空気は、ただ重いという言葉で表現するには、あまりにも生ぬるかった。息を吸い込むだけで、肺に鉛を流し込まれているような錯覚に陥る。


 巨大な黒曜石の円卓を囲むように、イーリス大陸を二分する二大国家の最高戦力たちがずらりと顔を並べている。


 上座には、巨岩のような威圧感を放つカエサル王。その右隣に、腕を組んで目を閉じる竜王ウォールと、周囲の気温を物理的に下げている氷の竜騎士ミスト。その後方には、表情を完全に殺した精鋭ホワイトナイトたちと、ギラついた殺気を放つ七つ星冒険者の代表格。


 対するウルシア側は、絶対の光を放つ聖騎士カリナ、相反する二振りの剣を帯びた第四王子ソー、薄ら笑いを浮かべる外交の天才第二王子ギリーエ、そしてパラディンのバルドとメルダ。


 ――そして、そのバケモノたちの品評会の末席に座らされている、場違い感凄まじい俺。


 円卓の中央には、広大なイーリス大陸の全図を記した一枚の粗い羊皮紙の地図が広げられていた。


 ウルシアとカエサルの国境地帯。その間に点々と黒い印が打たれ、そして最後に、ひと際禍々しい赤い×印で囲われた一点が記されている。


 そこが――俺のセイレーンの眼鏡が寸分違わず捉え、導き出した八咫烏の巣の座標だった。


「……位置は、確かなのだな?」


 竜王ウォールが、地鳴りのような低い声で問う。


 短く刈り込まれた髪、丸太のように分厚い首、鋼鉄の鎧すら窮屈そうに軋ませる岩のような肩。ただそこで腕を組んで座っているだけで、部屋の重力が彼を中心に歪んでいるような錯覚すら覚える男だ。


「ああ、確かだ」


 俺は冷や汗を悟られないよう、右耳のセイレーン・パールのピアスを指先で軽く弾きながら答えた。


「一度俺の視界に入り、セイレーンの解析レンズを通した相手は、魔力の特徴から魂の波長の癖ごと、完全に俺の脳内に記憶される。……コラキとクエルボは、今もその赤い×印の地点から一歩も動いていない。少なくとも、数分前までの時点ではな」


『んふふ〜、凄いよねー、その眼鏡の索敵能力! アタシもそういう便利な機能、欲しい!』


 俺の胸元で、ペンダントに宿ったラナの声が、この絶望的な空気などどこ吹く風とばかりに小さく響いた。


(お前、ペンダントでどうやって眼鏡かけたり索敵したりする気だ。黙ってろ、緊張で吐きそうなんだよ)


『ひどい! 喋るペンダントへの差別!』


 相変わらず俺の相棒は今日も元気だ。


 カエサル王が、太い指先で地図の赤い×印をとん、と重く叩いた。


「ここは両国のちょうど中間……かつ、険しい山脈と深い断崖に挟まれ、いずれの軍も大規模な展開が極めて困難な死の峡谷地帯だ。……八咫烏の連中め、我らが最も動きにくい最悪の地形を、よくも腹立たしいほど正確に選んだものだ」


 ギリーエが、柔らかな、だが一切笑っていない声で言葉を継いだ。


 人懐っこい笑みを口元に貼り付けながらも、その細い目だけは常に盤面の十手先を読んで計算している男。


「ええ、その通りです。つまり、我々が奴らを確実にと大軍を動かせば、峡谷の地形で補給線が続かず、持久戦でこちらが詰む。……かといって、少数で突っ込めば、逃げ場のない狭い地形で、アーティファクトの攻撃によって一掃される。……こちらが正攻法で動けば動くほど、相手の敷いた殺戮の罠にハマりやすい地形です」


「しかしだ」


 ミストが静かに、氷のように冷たい言葉を挟む。


 ウォールと同じ竜騎士でありながら、彼女は細身で涼しげな面差しを崩さない。


「八咫烏は、我々がすでにアジトの正確な座標を特定し、全勢力で奇襲をかける準備ができていることを知らない。……そこが、我らの唯一にして最大の勝ち筋になるのは明白だ」


 円卓を囲む強者たちの視線が、じわじわと地図の一点へと集中し、重くなっていく。


 だが、俺の胃は痛かった。


 コラキとクエルボ。あの二人だけでも、アーティファクトを使用し炎魔法と氷魔法の極致に到達した魔導師の化け物だ。それに加え、八咫烏の他のメンバーも、あの狂戦士レイヴンや幻術使いヴラーナと同等かそれ以上のバケモノだと考えるのが妥当。


 ――いくら不意を突けたとしても、真正面から突入すれば、普通に考えて全滅確定の無理ゲーだ。


 そんな犠牲を前提とした特攻の空気が、円卓を囲む全員の顔にうっすらと浮かび始めた、その時だった。


 ――グニャリ。


 突然、会議室の密閉された空気が、不自然に歪んだ。


 視界が、水面越しに見るように一瞬だけぶれる。床に転移の魔法陣が描かれたわけでもなければ、背後の分厚い鉄扉が開いたわけでもない。


 強烈で不思議な匂いと、空間そのものが悲鳴を上げるような圧力。


 それなのに――。


「おーーっ! まだ湿気た顔して話してたか! 間に合って良かった良かったぁ! ガッハッハッハッ!!」


 バカみたいに大音量で、だがどこかホッと安心するような、底抜けに明るい笑い声。


 円卓の、ど真ん中。


 カエサル王城の何重もの対魔力結界を完全に無視して、そこに、いつの間にか一人の男が立っていたのだ。


 大柄な体躯。茶色の髪は雑に後ろへ流され、顎には無精髭。肩幅も胸板も異常なほど分厚く、だがその瞳だけは、子供のように無邪気に笑っている。


 ガッハッハッ! と、部屋の絶望的な重さを一瞬で粉砕するような、腹の底からの豪快な笑い声。


 コイツが誰なのか、名乗られずとも俺の生存本能が即座に察知した。


「ローディオ殿……ッ!!」


 カリナが思わず席を立ち上がり、驚愕と極度の緊張、そして心の底からの安堵が入り混じった声を上げた。


 竜王ウォールの黄金の瞳が、剣呑に細められる。


「……空間転移か。相変わらず、我が国の結界を紙切れのように通り抜けてきおるわ」


 最初は驚愕に身を固くしたウォールだったが、すぐに『この男ならやりかねん』とばかりに、舌打ちをして落ち着きを取り戻した。


「おー、ウォール! 久しぶりだなぁ! 息災かあ!!」


 ウルシアの最終兵器――聖騎士ローディオは、首をゴキゴキと鳴らしながら、まるで地元の行きつけの酒場にでも顔を出した常連のオジサンのような気楽さで、円卓の端へ歩み寄った。


 だが、その場にいる全員――カエサルのホワイトナイトも、七つ星冒険者も、竜騎士ミストでさえも――。


 例外なく、冷や汗を流して背筋を硬直させていた。


 理由は極めて単純だ。


 ローディオの放つ圧が、文字通りえげつないからだ。


 レイヴンを思い出す。あの、肉体強化を極限まで高めた、八咫烏の闘争の化け物。彼が放っていた牙を剥いた猛獣みたいな殺気すらも、さらに上から巨大な足で笑いながら踏み潰しているような、次元の違う存在感。


 魔力の質も量も、闘力の密度も、俺が見てきたどの人間とも桁違いだった。


 ただ彼がその場で息をしているだけで、空気がビリビリと物理的に震えているのだ。


(……おいおい。マジで、冗談みたいな化け物だな)


『うん……。これはね、相棒。神獣モンスターが全力で逃げ出すレベルのヤバさだね』


 俺の胸元で、ラナも珍しくふざけるのをやめ、真面目にドン引きしたような声を出した。


 カエサル王が、警戒と興味の入り混じった瞳でローディオを見据える。


「……ウルシアの聖騎士ローディオか。わざわざ我が国の王都まで空間を飛んできおるとは。……貴殿は、ウルシア本国において魔族復活よりも大事な案件をいくつも抱えており、身動きが取れぬと聞いておったが?」


 カエサル王は、情報の矛盾を突くように、探りを入れる言葉を選んだ。


「ガッハッハッ! お堅いこと言うなよカエサル王! 今、そっちはちょっとだけ落ち着いてるからな!」


 ローディオの登場で、ウルシア側の面々は例外なく安堵の表情を浮かべていた。


「確かに、俺の机の上にも面倒な案件は山積みだがな。……八咫烏の狂人どもが、アーティファクトなんて物騒な玩具を握って表舞台で暴れ始めたって耳にしちまったら、俺の血が黙ってられねぇのさ!」


 ギリーエが、ニコリと完璧な笑みを浮かべる。


「つまり……数ある世界の危機の中でも、八咫烏とアーティファクトとのドンパチが一番面白そうだからわざわざ仕事を放り投げてやって来た、ということですね?」


「そういうことだ! ん? お前、ギリ坊か!? ひっさしぶりだなオイ! でっかくなって、すっかり腹黒そうな良いツラ構えになったじゃねぇか!」


「……ご無沙汰しております、ローディオ殿」


 ギリーエが、これまでに見たことのないような純粋にタジタジになった笑顔を引きつらせて一礼した。


 ローディオは「昔みたいに『おいたん』って呼んでくれよ! ガッハッハッ!」と腹を抱えて笑いながら、円卓の空いている椅子を勝手に引き、ドカッと行儀悪く座り込んだ。


 そして、次の瞬間――彼の目から笑いが消え、恐ろしいほどの真顔になった。


(……このマイペースなとっつぁんが、本当に人類最強なのか?)


『うん、おそらくカリナさんよりも強いよ、遥かに』


(マジかよ)


「なぁ、お前ら。いつまで無駄話してるつもりだだ。……いい加減本題に入ろうぜ?」


(……一番無駄話をして尺を伸ばしてたのはアンタだろうが!)


 と、全員が心の中でツッコミを入れそうになったのを、必死に理性でこらえた。


「いいか――。十中八九、今お前らがちまちま考えてる奇襲作戦は、全部、八咫烏の奴らに読まれてると思っていい」


 部屋の温度が、ローディオの一言で一段、明確に下がった気がした。


 ローディオは、太い指を一本ずつ立てながら説明を始める。


「よく考えろ。奴らは、カエサルの宝物庫からアーティファクトを奪い、そのまま誰にも見つからずに闇に紛れて逃走すればいいものを……わざわざ数万の観客と大国の要人が見ている大闘技場に姿を現し、ご丁寧に名乗りを上げ、奪ったアーティファクトを派手にぶっ放して見せた」


 ローディオは、真っ直ぐにカリナを見た。


「それはなぜだ? カリナ」


「……我々の危機意識を最高潮まで煽り、両国を確実に団結させ、すべての戦力を一箇所に集めやすくするため……。ですが、それでは奴ら自身が不利になるはずです。なぜそんなことを……」


「……あえて、自分たちのアジトまで追跡させるように、仕向けていた……?」


 俺がふと思ったことをつい口に出して挟むと、ローディオは満面の笑みでこちらへ振り向いた。その笑みが、逆に怖すぎる。


「おー! お前が最近噂になってる、武装化転移者小僧か! カリナとお前、二人合わせて8割正解ってとこだな!」


(なんで初対面なのに、俺の能力も素性も知ってんだよ、このオッサン)


 ローディオは話を続ける。


「奴らは、自分たちの名前、圧倒的な能力、そして姿を、あえて大勢の前に見せつけた。炎と氷の魔法波長、極限の闘力と魔力。……優秀な追跡魔法持ちの魔術師や、小僧みたいな特殊な索敵能力持ちがいれば、それらの情報からアジトまで追跡可能になるように、わざと足跡を残していったんだよ」


 どこかで全てを見ていたかのような口ぶりに薄気味悪さを覚えたが、周囲は「ローディオならそのくらい知っていて当然」といった様子でスルーしていた。


 ウォールが、眉を深くひそめる。


「……つまり、わざと我々の危機意識を煽り、両国を団結させ、アジトまで追跡させて……我々が全軍を挙げてそこへ向かうと、奴らは完全に読んでいる。ということか?」


「そういうことだ。お前らは今、両国の全戦力でここで決着をつけるしかないと思い込まされている。……だからこそ――八咫烏側は、その瞬間の本国の手薄さを狙ってくる」


 ローディオの重い声が、さらに一段低く、冷酷な響きを帯びた。


「仮にお前たちが、八咫烏のアジトだと思わしき峡谷に全軍を挙げて突っ込み、叩きに行けば……その隙を突いて、待ち伏せしていたコラキとクエルボ以外の八咫烏が、ウルシアとカエサルのどちらか……最悪の場合、両国同時に急襲をかけてくる」


 ギリーエが、ハッとしたように青ざめて呟く。


「主力が削がれ、まさにもぬけの殻となったウルシアとカエサルは瞬く間に制圧され、それぞれの国王や無防備な民を人質に取られたうえで……結果的に、全ての聖剣、魔剣、アーティファクトを無血で奪い取られる……ッ!」


 ソーが苦悶の顔で、テーブルを力強く叩いた。


「……そうなれば、アジトで勝とうが負けようが、どう転んでも僕たちの完全敗北だ。文字通り、国が終わる。……両国とも、二度と立ち直れなくなりますね」


「――だから、俺が来たんだよ」


 ローディオは、獣のようにニヤリと笑った。


「奴らが本国が手薄になるだろうと読んでいるなら。……逆に――本国の防衛を、今まで以上に絶望的なほど分厚くしてやればいいのさ」


「本国の防衛を分厚くするだと? ……どのようにだ」


 腕を組み直した竜王ウォールが、重低音の声で問う。


 ローディオは豪快な笑みを崩さぬまま、己の太い親指で、己の分厚い胸板をドンと叩いて見せた。


「ここ、軍事国家カエサルは――俺が一人で見る」


 さらりと放たれた、正気を疑うような言葉。


 会議室にいたカエサルの重臣たちや、常に冷静な竜騎士ミストでさえ、目を丸くして息を呑んだ。


「……正気ですか、ローディオ殿? たったお一人で、一国の防衛の任に当たると?」


「ガッハッハッ! 何驚いてんだミストちゃん! 一箇所に八咫烏が全軍で突っ込んでくる可能性は極めて低い。奴らは少数精鋭の暗殺部隊だ。なら、こっちだって最高峰の『少数超精鋭』で迎え撃てば済む話だろうが!」


 ローディオは、空を殴るように巨大な拳を軽く一振りしてみせた。それだけで、風圧が会議室の重い空気を鋭く裂く。


「俺の魔法は『空間領域の完全把握と転移』だ。一度足を踏み入れた場所なら、城壁の上だろうが王都の外れの便所だろうが、強烈な不穏な魔力を感知した瞬間にコンマ一秒で飛んでいける。……要するにだ! 俺の国で悪さするやつは、背後に気をつけろってこった!」


『うわぁ……何その超広範囲の自動迎撃システムみたいなオッサン……』


 胸元のペンダントから、ラナのドン引きしたような声が頭の中に直接響く。


(超絶便利だけど、敵からしたら悪夢以外の何物でもないな……)


 ウォールが、冷徹な眼光でローディオを睨みつける。


「……では、手薄になるお前たちの国、ウルシアの防衛は誰が担う?」


「ウルシアは――ウォール! お前に丸ごと託したい!」


「……なぜだ? 配置を逆にしても構わんのではないか?」


「甘ぇな、ウォール。奴らの裏をかくには敵の予測のさらに上を行かなきゃ意味がねぇんだよ」


 ローディオの目が、捕食者のように鋭い光を帯びる。


「八咫烏にも、頭が切れる奴がいる。

 俺たちが空き巣対策で本国を固めたと気づいた時、当然、カエサルにはカエサルの、ウルシアにはウルシアの防衛体制を想定し、それぞれに対策を立てた上で暗殺部隊を送り込んでくるはずだ。

 ……だが! いざウルシアの王都に攻め込んだら、そこにいるはずのないカエサル最強の竜王ウォールが腕を組んで待っていたらどうだ? そしてカエサルに潜入したら、絶対に来ないはずのウルシアの聖騎士ローディオが笑顔で上から降ってきたらどうだ?」


「そこで、敵の思考は完全にフリーズする」


 ギリーエが、ハッとしたように扇子を打ち鳴らし、美しい顔に悪魔のような笑みを浮かべた。


「……なるほど! 敵の立てたカエサル対策とウルシア対策を、両国の最高戦力の配置を変えることによって根底から不発に終わらせる……!

 あのローディオ殿が想定外の場所にいるというただ一点が、敵の盤面を根底から破壊するわけですね!」


「そうそう! さすがギリ坊だ、話が早くて助かるぜ! 相手が驚いてアホ面晒した瞬間を、上から力任せにブチ叩く! これが戦の基本だな! ガッハッハッ!」


 ローディオはパンと手を叩き、最後に円卓の末席に座る俺を指差した。


「その上で――本拠地の八咫烏のアジトへ乗り込む突入部隊だ! 小僧のセイレーンの能力で、コラキとクエルボが長く留まっている座標を完全に固定する。

 ……突入するのは、怪我から復帰する竜騎士レイズ、竜騎士ミスト、ソー、カリナ、バルドとメルダ、それにカエサルのホワイトナイトと七つ星冒険者から選りすぐりの猛者を数名! この少数精鋭のバケモノ集団だけで、アジトを電撃的に突き崩す!」


「……大軍ではなく、少数精鋭で、ですか」


 カリナが静かに問い返す。


「デザート&イーグルやコルトのような兵器を前に、下手な兵の数はただの的に過ぎん。……混戦になればなるほど、殺られる。

 敵の能力を理解し、コンビネーションの取れる最高の猛者だけで挑むのが、一番確実だ」


 ソーが悪意の笑みを覗かせながら、首を鳴らした。


「……クソ燃える作戦だな。文句ねぇよ」


 ウォールはしばし黙考した後、重々しく頷いた。


「……分かった。竜騎士の代表としても、カエサルの全軍を統べる者としても、その作戦に乗ろう」


 カエサル王も、満足げに微笑を浮かべる。


「ウルシアの聖騎士ローディオと、竜王ウォール。この人類最強の二人がそれぞれの国の守りを請け負ってくれるのであれば、我が民も安心して避難できよう」


 ギリーエが、円卓を見渡しながらまとめに入った。


「では、作戦はこうですね。


 ・両国民の大規模な地下避難の開始。


 ・カエサル本国は、ローディオ殿が単独防衛。


 ・ウルシア本国は、竜王ウォール殿および選抜された両国の騎士・冒険者で防衛。


 ・そして、八咫烏の本拠地へは、最強の少数精鋭による電撃奇襲。


 ……これで、よろしいでしょうか?」


 誰も異議を唱える者はいなかった。


 圧倒的な熱量と覚悟が、円卓を満たしている。


 ローディオが最後に告げた。


「細けぇことはこれから詰めりゃいい。まずは――民を動かすことだ。数日後、このイーリス大陸の空気は一変するぞ」


(……いよいよ、マジの戦争の直前って感じだね)


 胸元のラナの声は、いつになく静かで、微かに震えていた。


(怖いか?)俺が心の中で問う。


(んー、正直怖いよ。……相棒が死んだらアタシはどうなるのよ)


(え、俺、死ぬ前提の心配されてる……?)


(違う違う! 絶対に死んでほしくないって思ってるってこと!)


 ――かくして、世界は、本格的な最終戦争モードへとその歯車を高速で回し始めた。

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