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SNOW WHITE INTERLUDE -白雪姫と七つの矮星-  作者: 二ノ宮純
最終章 「星々のINTERLUDE」
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最終章 「星々のINTERLUDE」第3話

大帝都劇場へ向かう道を、翼は歩く。


いつもより、陽の光が温かく感じた。

温かいのは、季節のせいだけじゃない。


昨夜、12人で食べたラーメンの熱が、

まだどこかに残っているからだ。


「つ〜ば〜さ〜」


坂の上に、みんなが待っていた。


黎夏と二乃は、手を振っている。

振っている先で、結依が小さく会釈する。


会釈したあと、朱が「遅いよ」と笑う。

マナは何も言わず、ただ静かに立っていた。


「おはよ!」


翼が声をかける。かけた声に、二乃が「おはよー!」と大きく返す。返したあと、

12人の足が自然と揃い劇場へ向かって歩き出す。


歩きながら、マナはふあーと欠伸をした。


「マナちゃんが欠伸してるー」


二乃が、それを見逃さなかった。

見逃さないまま、彼女は少しだけ顔を寄せる。


「夜更かしでもしたんですか?」


「リナのせいだ……。夜好きな配信者の配信見たいと言って、聞かなかったから」


マナの声は、どこか眠たげだった。

眠たげなまま、彼女はもう一度小さく欠伸をする。


「肝心のリナさんは?」


「はーい!」


赤い瞳が、柔らかくなる。柔らかくなった瞬間、 マナの輪郭が、わずかに崩れた。


リナが「おはよう!」と、明るい声で笑う。 笑った先で、二乃が「あ、リナちゃんおはよ!」と目を丸くする。


「舞台楽しみ!楽しみ!」


リナは、体を跳ねながら歩く。

跳ねるたび、赤の瞳が朝の光に揺れる。


結依や葵たちが小さく笑っていた。。


「黎夏、ちゃんとセリフ覚えてるか?」


八重が静かに聞いてきた。


「もちろん覚えてるよ!多分……」


「ちょ、多分じゃだめだって!!」


翠月が、少し慌てた。すごく大事な舞台で、

先日何時間も確認したのに、「多分」って。


慌てたまま、彼女は黎夏の袖を軽く引っ張る。


「冗談だよ、ちゃんと覚えてるから」


黎夏が、笑いながら答える。


「あなたの冗談は、心臓に悪いから」


翠月の声は、呆れと安堵が混ざっていた。


いつもの登校と、何も変わらない。


側から見たら、普通の女子高生たちの登校風景。

誰も、これから大きな舞台に立つ者たちとは思わないだろう。


劇場へ進む道を12人の影が、

朝の光に長く伸びる。


12人の中に、「緊張」という文字は、もうなかった。


なかった代わりに、ただ「今日も」という感覚だけがある。


今日も、舞台に立つ。

今日も、いつも通りの通し稽古をするかのような感覚だった。


感覚のまま、二乃が「あ、あのパン屋さん、今日は並んでる」と、何でもない声で言う。


言った先で、黎夏が「マジで?寄ってく?」と返す。


何気ない会話が続いていった。


劇場が近づいてきたとき、ふと足が止まった。


劇場前の桜の木。“太正桜”が、全員の目に入ってきた。


誰も何も言わない。


六月の初夏の空に、咲き誇る太正桜。

ただの幻覚なのかもしれないし、

見間違いかもしれない。


それでも、みんなの目に桜が見えていた。


同じ桜の下に、百合々咲、立風館、アカデミア、

カリスティックの制服を着た少女たちが集う。


桜の花びらが風に煽られて空高く舞う。


「みんな……行こっか」


翼の声は、静かだった。


彼女は一歩、踏み出す。踏み出した先に、

劇場の扉があった。


12人の足が、再び揃い舞台へ進み出る。


少女たちの後ろで太正桜の花びらが、

まだ静かに舞っていた。




これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……



世界を知る物語である。


第3話 完

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