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SNOW WHITE INTERLUDE -白雪姫と七つの矮星-  作者: 二ノ宮純
第10章 「彩りの星が奏でる間奏曲」
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第10章 「彩りの星が奏でる間奏曲」 第3話

SNOW WHITEの衣装も、直着と出来上がっていた。


ズラリと並べられた、7人の小人たちの衣装。統一されたデザインの中に、それぞれの個性が滲む。


着る側の世界がようやく形になった。


「凄い、華ちゃん」


「この技術なら、カリスティックでもやってけるんじゃない?」


完成された衣装を見ながら、翼とプラナが呟く。

空の君と、序列の学校の自由が、同じ針目を褒める。


「大変でしたよ……特に、そこのお2人!」


華が、砂月とマナを指さす。衣装担当は、

褒辞より先に採寸の恨みを置いた。


「なんで、私たちですの?」


砂月が言う。地の君の声は優雅なまま、 指の先を見ている。


「砂月さん、おっぱい大きくなりすぎです!サイズ変更って、意外と大変なんですよ?」


確かに、目に見てわかるくらい、砂月の胸は前回の第1部のときより大きくなっていた。


成長期の令嬢が、衣装の型紙を裏切る。

華のメモの数字が、静かに古くなっていた。


「仕方ないんじゃないかな? 成長期だし」


翼がフォローを入れる。


「だとしても、限度がありますよ」


華が腕を組む。


「私は、なんなんだ?」


マナが尋ねる。王の声は低い。指差された理由を、完結した輪郭で測ろうとしていた。


「リナさんです」


「え?」


「マナさんにデザインを合わせるとリナさんが嫌がって、リナさんに合わせるとマナさんが嫌がるじゃないですか」


華が肩を落とす。


何度か試着を頼まれたとき、

何着か可愛いデザインがあった。


フリルの縁、小さなリボン、森に来る前の少女が喜びそうな色。リナなら袖を掴んで回っただろう。


マナは、そういう可愛らしいのは苦手だった。


リナならいい。だが、自分は——。


(リナ、少しくらい我慢して)


(マナだって、ミラクルフォースの時、フリフリ着てたじゃん)


(あれは、そういう舞台だから……!)


マナの脳内で、2人の人格が言い合いをしていた。

同じ胸の内側で衣装の袖を引っ張り合う。


外から見れば、カリスティックの王が黙って衣装を見下ろしているだけだった。


「とにかく、マナさんの方は、デザインが一番難しかったんです」


直着の列の中で、小人の七着は個性で割れた。王の一着だけが、2人分の拒否のあいだで、ようやく中間に着地していた。


「あれ?私の白雪姫衣装は?」


部屋には、SNOW WHITEの様々なキャラの衣装がある。小人の七着、王妃、王子、森の仲間。統一と個性が、ハンガーの上で並んでいる。


しかし、主役の白雪姫だけがない。


「白雪姫の衣装、バージョンアップで少し修正するんですよ。ほら、映画でも1と2で同じものでも、デザインや色が微妙に違うみたいな」


華が当然のように言う。


「その例え……ちょっと分かりづらいかな……」


翼が、苦笑い混じりで答える。


翼は、映画の続編より、自分のハンガーが空なことの方が気になっていた。


「ということで、先輩!」


振り返った華の手には、メジャーが握られていた。


「まさか……」


翼の脳内に、去年の採寸の記憶が蘇る。裸の二乃と砂月、耳まで赤くなった自分、華の淡々とした数字。エーデルの誇りが、巻き尺の前では一度死んだ日。


「脱いでください!!」


「いやー!!」


翼の悲鳴が部屋中に響いて、消えた。



カフェテラスで、翼は顔を突っ伏せていた。


木漏れ日が背中に落ちても、メジャーの金属音が、

冷たいメジャーの肌にあたる感覚が残っている。


「またやられた……」


翼の声が、短く漏れる。


「大丈夫ですか?」


結依が聞いてくる。元・フラウ・ヒンメル(空の君)は、突っ伏した背中の温度を、責めずに撫でた。


「みんなもう慣れてるのに、翼だけ採寸ほんと慣れないんだから」


侑樹が、ため息混じりでいう。


「恥ずかしいでしょ! 体の隅々まで測られるんだよ?」


実際、華に身体中、隅々まで測定された。腕の長さ、肩の落ち、成長期で変わった胸の位置。


去年の赤面が、バージョンアップの名目で正確に更新された。


「そこいる??」「絶対にいらないよね」と言ってしまいそうな部分まで。


翼は顔を上げない。


「結依さんも、嫌ですよね?」


「まぁ、百合々咲じゃよくあることですし……。立風館も、あんまり人のこと言えないんで……」


結依が、少し視線をずらした。竹林の学校にも、

測られる午後はあるが、その話だけは前を向かない。


「立風館も、同じなんですね……」


瑠々が、ちょっと引き気味だった。


「女子校なんて、そんなもんよ」


侑樹がクッキーを食べながら言った。


確かに、百合々咲、立風館、アカデミア、カリスティックは女子校。


制服も寮も、測る巻き尺も、女の輪の内側にある。


でも、これが普通なのだろうか。


瑠々には、理解できなかった。


「お嫁にいけない……」


翼のか細い声が、テーブルの木目に沈む。


空の君の誇りは、メジャーの前で一度死に、

バージョンアップの採寸で二度目の墓標を立てていた。


「一体、どこまで測ったんです?」


結依が聞く。問いは優しい。

優しいまま、答えを急がない。


「言いたくない……」


その言葉で、侑樹は理解した。


(絶対、変なとこまで測ったな……)




これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……



世界を知る物語である。



第3話 完

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