第9章 「交わる星は星座となる」 第10話
「集合!」
侑樹の一言で、演者も裏方も、演出席の前に集まった。
そこに、侑樹も加わる。指揮を取った席から降り、輪の内側へ戻る。
バインダーを胸に抱えたまま、ロゼの正面に立った。
「どうでしょうか……?」
瑠々がチラッと侑樹を見ると、手が震えていた。
その震えは、みんな気づいていた。光葉も、1年も、矮星も。身体だけが、3日分の責任をまだ下ろせていない。
ロゼは腕を解かなかった。
「この3日間、お疲れさん。言いたいことは、山ほどある」
全員の空気が、ピンと張り詰める。
切り捨てられる場所が見えている。転換の5秒、
感情の芯、1年の足。自分たちも知っている穴を、演出家が先に名指しする前の静けさだった。
「この5幕は、これに少し修正を入れる方向で進める。お前ら、よく作り上げたな」
一拍、遅れて意味が落ちる。
否定ではなかった。骨を折る、でもなかった。
少しの修正。そして、よく作り上げた。
舞台創造科を中心に、歓喜の声が溢れた。
瑠々が小さく飛び、光葉が息を吐き、
1年が顔を見合わせる。
砂月が口元を綻ばせ、黎夏が「やった!」と声を上げ、翠月がそれを抑える。
結依が静かに頷き、二乃が侑樹の肩に額を寄せた。
侑樹の手が、まだ震えている。
それでもバインダーを下ろす指は、3日前より強かった。
空席だった席に戻ってきた男が、
今いる人間の5幕を、前へ進めると言った。
「君にしては、甘い採点だね。演技も、あの子たちの足元にも及ばなかったのに」
隣にいたイラムが、言ってきた。
イラムはアンダルシアの目で、五幕を見ていた。
「ここは、アンダルシアじゃねぇ」
その一言に、全てが詰まっていた。
「アンダルシアは、絶対に失敗できない舞台だ。だがここは、失敗してもいい。あのくらいの歳には、嘘でもいいから、成功体験を積ませておくもんなんだよ」
イラムが、メガネの位置を直す。
「……アンダルシアでそれが活かせてたら、今の発言に説得力が増すんだけどね」
静かな返し。責め方は柔らかく、芯は硬い。
ロゼは舌打ちをした。
「うるせぇ。あっちの話はあっちだ」
扉の外で、少女2人がまだガラスに額をつけていた。
これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。
そして……
世界を知る物語である。
第9章 「交わる星は星座となる」完




