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SNOW WHITE INTERLUDE -白雪姫と七つの矮星-  作者: 二ノ宮純
第9章 「交わる星は星座となる」
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第9章 「交わる星は星座となる」 第3話

ドアが、ガチャッと音を立てて開く。


侑樹は振り返らなかった。

舞台創造科の誰かだと思っていたから。


この時間にこの創造科棟の部屋へ来るのは、

荷物を取りに来る後輩か、資料を返す2年だ。


「おつかれー」


事務的な挨拶。


「フー」


いきなり耳元に息を吹きかけられたので、

体がびくっと跳ねた。


椅子が小さく鳴り、ペンが転がる。

演出しなければならない五幕より先に、心臓が舞台から落ちた。


振り返ると、瑠々が立って笑っていた。


「びっくりした」


「ごめんなさい、先輩」


普段お調子者の瑠々だが、こんな悪戯はしない。

耳に息を吹きかけて反応を楽しむとしたら——


「光葉、いるんでしょ?」


「なんでバレるかな」


光葉だけじゃなく、華も一緒に出てきた。


扉の陰に3人分の気配。

最初から、1人の来訪ではなかった。


「みんなして、何しにきたの?」


「先輩を手伝おうと思って」


机の上の30ページが、1人の視線を浴びる。

ロゼが置いていった一幕が、急に「現場」の形を持ち始める。


「でも、1人で作らなきゃ……」


「ロゼさんは、一人でやれって言ってた?」


「……言ってない。でも、みんなの作業は?」


「2年たちが見てくれてるから、侑樹は心配しない」


光葉の声は、いつものように落ち着いている。

華が小さく頷き、瑠々が台本の端を指で押さえた。


演出は1人の名前で残る。

けれど幕は、1人では立ち上がらない。



過ぎ去りし流星たちの時の演出は、

今となってはどうやっていたか分からない。


残っているのは評と、未完の第3部の空白だけだ。


図面の端をなぞっても、

当時の呼吸までは戻ってこない。


あの人たちのようにはできないかもしれない。

でも、無理に真似する必要もない。


あの時いなかった矮星たちが、今この舞台にいる。


立風館の双剣。アカデミアの明るさ。

カリスティックの王。


翼たちが伝説を超えるなら、

それに相応しい舞台を作らなければならない。


「この動線、なんてどうです?」


瑠々が床に広げた紙の上を指でなぞる。

下手2から森の家へ。


「そこだと、1ページ前の白雪姫と被っちゃわない?」


光葉がすぐ返す。

補佐の癖で、衝突より先に「被り」を見る。


「飛彩先輩、避けてくれるんじゃないですか?」


華が、衣装の裾の軌道まで含めて言う。

役者の善意を、転換の計算に入れたがる1年の声。


「いや、翼は確実にぶつかるね」


侑樹が短く言った。


笑いではない。現場を知っている人間の予測だった。


白雪姫の翼は役に入ると、

人の肩より物語の方へ足が出る。


流星の真似ではない。

今いる人間の歩幅で、5幕を組み立てていく。


創造科棟に、「自分たちの演出」の音が落ちた。




これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……



世界を知る物語である。


第3話 

完

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