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SNOW WHITE INTERLUDE -白雪姫と七つの矮星-  作者: 二ノ宮純
第3章 「空白の席は誰が為に」
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第3章 「空白の席は誰が為に」 第8話

翼たちエーデルは、1年生の子たちにどうやって士気を上げればいいのか、ずっと悩んでいた。


「確かに入学したてでだし、先輩に何も言えないよな」


八重が悩みながら言う。


「練習しなさいというのは簡単ですけどね」


腕を組んだり、頭を抱えたりしながら歩いていた。


「八重ちゃんやナタちゃんは劇団の経験あるんだよね?なんかそう言う人いなかった?」


「いたことにはいたけど」


「いても1人や2人だ。そう多くいない」


「もう何が正解か分からないよー!!」


翼が両手を挙げて小さく叫んだ。



翼が小さく叫んだその時——


「おっしゃ!みんなランニング行くぞ!!」


掛け声と共に校舎から朱と、それに続いて1年生の子達が一緒になって出てきた。


「え、え???」


何が何だかよく分からなかった。


朱を先頭にした集団は校舎の周りをぐるりと回るように走り込みを始めた。


「今のって……」


「立風館の朱ちゃんと……うちの1年だよね?」


あっけに取られるエーデルたち。


「まったく、いきなり走り込みとか脳筋過ぎ」


「あはは、そういうところが朱さんっぽいところですし」


校舎から結依と葵が出てきた。


「結依さん、あれって?」


翼が尋ねた。


「1年の子が朱に体力つけるのはどうしたらいいか相談してきたんです。そしたら……」


「体力つけるなら走り込みだろ!って言い出して」


1年が自主的に動いていた。


自分たちが何が出来るのかを探して、

自分に足りないものを得るために。



結依と葵の言葉に、

エーデルたちは思わず顔を見合わせた。


朱の赤髪のポニーテールが先頭で揺れ、

その後ろを1年生たちが必死に追いかけている。


息が上がり、足取りが乱れながらも、

誰もが諦めずに走り続けていた。


「立風館では、基礎体力がないと話にならないってよく言われますから。朱はそれを一番体現してる子です」


葵がため息混じりに笑う。


「朝から晩まで走り込み、素振り、筋トレ……

子供の頃からずっとやってるから、今じゃ立風館で一番体力あるんじゃないかって」


翼は走り去っていく集団を目で追いながら、

胸の奥が熱くなるのを感じた。


1年生たちは、

矮星の圧倒的な技術に打ちのめされながらも、

自分たちにできることから始めようとしている。

それが、ただ走ることだったとしても。


朱の力強い掛け声が響き、

それに1年生たちが必死に答える。


息が上がり、足がもつれそうになりながらも、

誰もが笑顔で、前へ、前へと進んでいた。


砂月が優雅に微笑んだ。


「本当に、百合々咲の生徒は逞しいですわね」


八重が静かに頷く。


「私たちがエーデルになった時も、きっと先輩たちは同じように見守ってくれていたんだろうな」



二乃が翼の肩を軽く叩いた。


「翼も、1年の頃はあんな感じだったよね?

必死に食らいついて、今ここに立ってる」


翼は小さく笑った。


「うん……私も、みんなに支えられてここまで来れた」


1年生たちの姿は、ただの努力ではなく、

未来への希望そのものに見えた。


「もしかしたら、あの中から次のエーデルが生まれるのかもしれないんだよね」


あそこで輝く1年生たちを見て、

自分たちがいなくなった後、

空白になった席は誰が座ってもおかしくないと翼は思った。


エーデルたちは、互いに視線を交わし、

静かに、しかし確かに頷き合った。


自分たちが背負うべきもの。

そして、後輩たちに託すべきもの。


百合々咲の未来は、

今、確かに動き始めていた。




これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……




世界を知る物語である。


第3章 「空白の席は誰が為に」 完


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